1ボタン・マウス:その歴史と未来*1

ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針

ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針

P244
より良いマウスとは,上面に「選択」(select)と「活性化」(Activate)と記された二つのボタンがあり,側面のボタンは親指で握ることによって動作するものになるでしょう.この最後のボタンには「グラブ」(Grab)と記されているのです.現在マウスによっては,主にスクロール用途として使用されるホイールが上面に装備されたものがあります*1.その位置に小さなトラックボールを装備すると,更に良いでしょう.マウスを用いて操作する場合やカーソルとともにフロート表示されるメニューから選択を行う場合などに用いることができるでしょう.

ようやくご登場か.*2
http://www.apple.com/jp/mightymouse/
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0805/apple.htm


良いインターフェースには様々な性質が求められる.その中でも最も重要なものの一つが,「ユーザーが慣れている」ということだ*3.アップルユーザーは長年の間1ボタンマウスの使い方に習熟してきた.新しいマウスが「若干使い易くなっている」くらいでは乗り換えるよりは従来のマウスを使い続ける道を選ぶだろう.よって新しいマウスは「若干」使い易いのではダメで,画期的に使い易くならなければならない.また一度変更したからには滅多なことでは次の変更は許されないし*4,たとえ失敗作だったとしても十年はサポートする必要がある.インターフェース変更に慎重過ぎるということはない.

追記:ジェフラスキン氏は既にお亡くなりになってたんですね.
http://d.hatena.ne.jp/code/20050228#1109555364

*1:出版された当初だから、現在と言っても2001年時点の話。

*2:流石に当時はMighty Mouseという名前だけはなかったが.

*3:一部の企業では,この「ユーザーが慣れている」ということを表すのに「直感的で分かり易い」という表現を使っている.おかげで「このインターフェースは直感的でないから使いにくい.」というような批判をする人まで出る始末.本当は「自分が今まで使ってきたのと違うから使いにくい」だけなのに,それをまるで「誰が使っても同じように使いにくい欠陥品」であるかのように思わせているのだから厄介だ.

*4:よいインターフェースの持つべき性質の一つに,操作感が統一されているというものがある.2ボタンマウスと1ボタンマウスとMighty Mouseと,その他もろもろのインターフェースが混在し,それぞれに操作性が異なることはユーザーにとって,あまり好ましいことではない.もちろん,それに見合うメリットがあれば幾らでも増やせばいいが,実際には操作性が混乱するデメリットに見合うだけのメリットが出せることは滅多にない.