ITSSは誰のためにある?

http://jibun.atmarkit.co.jp/lskill01/special/itsst/itsst01.html
自称コンサルと三流経営者御用達.

顧客企業からすれば、ITベンダの提案内容や見積もりが適切なのかが判断しにくい。担当のITエンジニアが適任かどうか評価するすべがない。

うむ.見事な論理のすり替えだ.

本来の問題は「ITSSはなんのためにあるのか?」「それが何の役に立つのか」のはずだったのに,「見積もりが難しい」というソフトウエア開発の本質的な特性を示して,まるでITSSがその解決策であるかのように誤解させている.

だが、最も切実な問題を抱えているのはITエンジニア自身ではないだろうか。現在の実力を客観的に判断する指標がないと、自分のスキルがどれほどなのか分からない。

NO.

現場の技術者はそれなりに分かっている.分からなくて困るのは技術を知らない管理職や経営者だけ.彼らには理解する能力がないので理解できない.そしてITSSはその誤解をさらに悪化させている.

転職しないにしても、社内での評価や地位が適切なのか判断するすべがない。

評価できないのは事実だが,たとえ評価できても給料は上がんないよ.何かと理由をつけて値切るのが管理職の仕事.この発想が変わらない限り,待遇が改善されることは永久にない.

レベル4には、「○○の経験がある」のように要求される経験や実績の定義がある。

こんな曖昧な指標を『定義』と呼ぶ時点で,ITSSが無用の長物であることは明らかだ.*1

同じ「経験がある」でもピンキリであるのは,現場の人間には明らかだ.同じ「レベル4」でも能力に一桁の差があるのが当たり前で,それがはたして標準的な物差しとして機能するだろうか?

大切なのは企業ごとに目標にふさわしい人材モデルをきちんと描くことだろう。

たとえば「上の命令にはひたすら従順で,一日48時間1年400日労働でも文句の一つも言わず,最低賃金で酷使できる使い捨ての道具」とかかな?そんなモデルを示されたってねえ.

理解度の低い企業の担当者がITSSをそのままの形で人材評価に使おうとしたり、

最も可能性の高い「理解度の低い経営者が,ITSSを給料カットの口実として利用する」というシナリオが示されていないのは意図的なものかな?

*1:技術を評価するのが難しい理由の一つはこの辺りにもある.関連するパラメータの数が非常に多く,しかもそれらが相互に関連している.それらからスキルレベルを導く公式を作るのは不可能に近い.