ATARI社の失敗

  • ナムコ成果主義を導入したのは2003年4月1日から。「活力を生む人事制度=頑張った人が報われる制度」という観点から、新人事制度が導入されたわけだ。成果によって評価が変わる、ということはゲームに関して言うと、ソフトの出荷数によるのと同義だ。これによって何が生まれたかというと…。(中略)
  • その時に既に人気が確立していて、次回作も売れることが明白な「テイルズオブ」シリーズや「太鼓の達人」シリーズなどに行きたいと思う人が出てくるわけだ。このため、ナムコから目新しいゲームが出てこなくなった。唯一出てきたのは「塊魂」「アイドルマスター」くらいじゃないか?これらも、もしかしたら人事制度刷新前から作っていた可能性もあり、そうなると一切目新しいタイトルが出ていないということになる。
  • 売れなさそうなタイトルに回された人材は、給料が少なくなることがわかっているのだから、当然頑張って作ろうとは思わないよな。そうなれば、売れないタイトルが、クオリティが低くなり、さらに売れないタイトルになる。その悪循環もあって、シリーズものであっても、どんどん出荷数が落ちていくことになった。
http://www.makonako.com/mt/archives/2008/05/post_689.html


情報技術産業失敗物語―失敗に学ぶ成功の秘訣

情報技術産業失敗物語―失敗に学ぶ成功の秘訣

  • ゲームデザイナーとしての楽しみは,オリジナルのおもしろいゲームを作ること以外に何があるだろうか。
  • カサールはデザイナーにオリジナルのゲームを自由に作らせるどころか,カサールは『レイダース・失われた聖櫃』や『E・T』などの映画のライセンスを取得したり,パックマンなどのゲームセンター用のゲームを変換する方が儲かるとマーケティング的に判断した.映画を元にしたゲームは,売上は莫大だったにもかかわらずおもしろくない,画像の酷い物だった.また家庭用のパックマンはゲームセンター版の質の悪いコピーだった.
  • しかしボーナスは仕事の品質やオリジナリティを評価するのではなく売上に対して支給されたため,この制度は問題を解決するどころか問題を増やしてしまった.「人気のコイン式ゲームや映画のタイトルの仕事を誰が担当するか」ということが大きな問題となったパックマンの移植作業を担当したトッドフライは100万から120万ドルの報酬を得たが,他のデザイナー達は自分たちでもその仕事ができると思っていた.このため彼らは秘密主義となり,ロイヤリティを分け合いたくないと考えてデザイナー同士やマーケティング担当者と話をしなくなった.
  • 「驚いたことだがお金が社員の生産意欲を高めると言うことはなかった」と科プランは言う.プログラマーはもっとお金を儲けるにはどうすればいいのかだけを考えていた.

(情報技術産業失敗物語 「ATARIでは何が上手く行かなかったのか」 P159)

まあ,典型的な失敗事例の一つですね.
成果主義で「正しくない指標*1を使う」というのは,代表的な失敗パターンです.

つまりゲームが売れる、売れないというのは、現在のゲーム業界において、その単体の出来だけではもう比較できないのですよね。たとえば良作と呼ばれるゲームでも、駄作、地雷と呼ばれるゲームより売り上げが低い場合があります。そういう場合前者はだいたいオリジナルの1作目、そして後者はシリーズもので名前が知れ渡っているもの、もしくは大作だったりする場合がよくあります。つまり、ゲームはネームバリューで売れてしまうところがあるので、売り上げでは出来を比較することは出来ないと。それを他の業界と同じように売り上げを成果として比較するから(まあ他に明確な指標がないのもあるのですが)、ちぐはぐな成果主義となり、結果、悪い方向に行ってしまうと。

http://gamemusic.blog50.fc2.com/blog-entry-638.html

売り上げだけでなく、「買った人間がどれだけ満足したか」という満足度や、「どれだけ長い期間市場で売れ続けたか」という市場評価も考えなくてはならない。
ちなみに後者の期間が短い商品は、前評判で爆発的に売れても、内容が良くなかったため伸びなかった、という可能性が高くなります。

売上を成果主義に使うとすれば,せいぜいマネージャーレベルまで.そのレベル以上の人達は年功序列であるにも関わらず現場については売上主義というチグハグな制度では,無理が多すぎるのですよ.

*1:たとえば売上,出荷本数,残業時間,コードの行数,予算規模,部下の人数.