雇用流動性と解雇規制は無関係

http://mojix.org/2008/06/03/what_if_fluid_employment
http://mojix.org/2008/06/04/fluidity_of_employment_for_you
http://mojix.org/2008/06/13/no_more_regulation
http://mojix.org/2008/06/14/break_employment_hierarchy
http://mojix.org/2009/01/20/kaikokisei_wrong_justice
http://mojix.org/2009/01/21/donokurai_kaiko

一言で言えば机上の空論*1

そもそも「成果主義」の失敗と就職氷河期の顛末を見れば,この理論が荒唐無稽なことくらいはすぐに理解できるだろうに.

経営者も管理職も合理的に動くのではない.利己的に動くのだ.*2 *3

  • 雇用流動性が低いことがIT業界にとって問題なのは事実.
  • 雇用流動性が高くなるべきだというのには賛成.
  • 年功序列と新卒偏重を止めるのは賛成.
  • 現段階で解雇規制を撤廃するのは絶対に反対.まず間違いなく経営者の都合の良いように利用されるだけ.たとえば「10年間泥のように働く」ことを強要され,10年間酷使した直後に解雇してポイッと捨てるとか.
  • 年功序列を廃止しない限り新卒偏重は無くならない.*4
  • パフォーマンスに見合う対価を支払うことが可能ならば,年功序列はとっくの昔に廃止されていたはずだ.でも今もまだ廃止されてないよね.
  • 雇用流動性が上がっているならば,有能な人ならば並の技術者の倍の給料を払ってでもスカウトするはずだよね.でもそんなことをしている会社がどこにある?
  • まず廃止すべきは既に崩壊している年功序列賃金であって,雇用規制の撤廃はお門違いだ.

ブクマより抜粋

http://b.hatena.ne.jp/entry/http%3A//mojix.org/2008/06/03/what_if_fluid_employment
http://b.hatena.ne.jp/entry/http%3A//mojix.org/2008/06/04/fluidity_of_employment_for_you

  • 優秀な人に辞められて困るのは現場だけで経営者は困らない。そもそも優劣の判断ができるなら成果主義で解決してる。
  • 評価関数を書くのが一番難しい
  • 実際にアメリカで働いているものとして、その業界のワークフローがある程度統一されてないと厳しい。40歳以上の中間管理職あたりは9割死亡だろうな。
  • 昔から比べると雇用流動性は増したけど結局給料が減って正社員も減っているが?
  • 会社が評価できないのに市場が評価できるっていう理屈がわからん。市場価値ってそんなに厳密じゃなくてその時の空気で決まったするもんだよ?
  • ワンコールワーカーの給与水準が一般サラリーマンのそれを大きく超えるようになれば、賛同されるでしょう。
  • 実際は政治的なパワーバランスとかもあってそうはならないんじゃないかなー、と思う。
  • ゴッホのひまわりなら誰も価値が解らなければ売らなきゃ良いけど、労働力は売らないと餓死するわけで。

ワタミフードサービスの社員から「労基署に行くような人は企業にとってリスク」と退職を迫られたと主張。これに対してワタミ側は「元店員の解雇理由は個人情報のため明らかにできないが、提訴されれば、訴状を見て対応を検討する」と話している。

http://koerarenaikabe.livedoor.biz/archives/51203859.html
  • 「これは、人件費削減を目的とした事実上の退職勧告ですよ。われわれが地元勤務の確約と引き換えにFC店長へ移籍すれば、『名ばかり残業代』問題も一気に解消。現在係争中の未払い残業代の裁判も終結させることができますから」
  • 「残業代といっても、店舗運営や仕事量は何も変わらない中、会社の締め付けが厳しくなるだけ。残業代がかさめば自身の評価にも直結するのに、まともに残業命令を受けることなどできません。むしろ、労働環境がさらに劣悪になる恐れもある」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0805/27/news009.html
  • 実際に働いたアルバイトの勤務時間を後から削る賃金不払いや、1人シフトで11時間連続の深夜勤務をさせて実質休憩時間なしといった労基法違反が今もまかりとおり、「アルバイトは業務委託契約」などとアクロバチックな主張で逃げている。
  • ところがすき家では、1カ月に175時間以上働いた場合に初めて、その175時間目から残業代が発生するのだという。その175時間をどう働いたかは問題にされない。1日に18時間働いても全く残業割り増し代はつかない。
http://www.mynewsjapan.com/reports/832

すき家の店舗では、労時売上が何よりも重視され、実際の勤務時間よりも労時売上のつじつまを合わせることが優先されています。労時売上とは、労働時間1時間当たりの売上のことです。平均で1時間あたり5千円の売り上げがない場合は、従業員を1人しか使ってはいけない、ということになっています。
そのため、ある時間帯に2人が来て実際に働いたのに、1時間当たりの売り上げが平均5千円に届かなければ、実際に働いた勤務時間を後から削られてしまいます。アルバイトは、勤務が終わった時点でデイリー勤怠報告書に自分で勤務時間を書き込みます。タイムカードは私が入社して1年後に廃止されたので、今は自己申告制のデイリー勤怠報告書のみを基に給与が支払われます。

http://www.mynewsjapan.com/reports/854

これを防ぐためには偽装管理職サービス残業を強要した経営者は即刑務所入りするくらいの強制力が必要.でもそうなってないよね.

もしこの様な強制労働現象が欧米地域のどこかの国で起こったらエンジニアはどうするか。確実に他の国に移住するだろうってことだ。

http://remote.seesaa.net/article/62499486.html

米国だとおそらくこんなことをすれば労働者が辞めるか,時には他の国に移住する.それを防ぐためには株主は経営者をクビにだってするだろう.だから日本とは置かれてる状況が全く異なる.
巨大なパズルの中から,自分の好きな一ピースだけ持ってきたって役には立たないよ.

  • 制度は相互補完的なものだから、一部をいじったらさらに嫌な結果になる可能性もちゃんと考慮すべき。
  • ずいぶんと理想気体チックな話だなと思う。

理想気体とは言い得て妙.「神の見えざる手」というのは理想的な環境での傾向を説明したものではあっても,現実には様々な因子が複雑に絡むために理想的な状況通りには動いてくれない.だからこそ経済学は難しいわけで.そしてこれは,まともな経済学者ならおそらくご存じのことのはず.

日本経団連からいくらもらって書いてるの?

http://b.hatena.ne.jp/entry/http%3A//mojix.org/2008/06/13/no_more_regulation

本当にそういう気がする.「結論ありき」の議論の臭いがプンプンするからね.


http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51060668.html

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/person/interview/070315_yamazaki1/
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/person/interview/070315_yamazaki2/

http://d.hatena.ne.jp/ymScott/20080604/1212572940

  • ここで出品者に余裕があれば黙って持ち帰って持ち帰って価値の解る人が集まるオークションを待てば良いが*1、そうではなくて、今日売らないと食うものすら無いという時は土下座してでも叩き売ることになる。良くて100万とか。バブル期は50億の値が付いたのに。
    労働者が労働力を市場で売るってのは、こういう後者の状況なんじゃないかと思うのだけど。
  • 成果主義の失敗で「評価はできません」ということが証明された経営者や人事をオークション会場に集めて、一体何が変わるのかと。
  • 解雇規制撤廃自体には反対しないがそれは最後の最後にスタートラインを切るようにやることであって、その前にやるべきことがありすぎる。
  • コストカット一辺倒の経営者不信、違法労働放置の労働基準監督署不信の払拭無しにいきなりスタートライン切ろうったってそりゃ賛同できない。

http://d.hatena.ne.jp/maachan1977/20080604/1212731955

大まかな背景を説明すると、このtokyopopという会社は北米で始めて日本の漫画を英訳して出版して、北米の日本漫画ビジネスのパイオニア。でもここ近年はライバル企業との競争が激化・日本の人気漫画のライセンス高騰・新タイトルの供給数が需要を上回る飽和状態に陥っていてた。そこで今後はウェブ・デジタル事業や映画部門に力をいれ、出版部門を5割近く削減という大ナタをふるったわけですよ。それで出版部門にいた従業員の多くが解雇されたわけ。

無能な経営者による横並び主義の酷い日本だと,むしろ以下のようなことが起こるだろうね.

理由は簡単である。ほぼすべての総合エレクトロニクス・メーカーが、歩調を合わせて研究開発部門を縮小し、同時期にやはり歩調を合わせて半導体事業部門の大リストラを敢行したからである。特に悲惨だったのが半導体プロセスを専門とする研究者や技術者だったようだ。
「社ではプロセスで最先端を目指す体制を見直して、設計重視にシフトすると言い始めたわけよ。ウチだけならいいけど、どこも同じ。つまり、日本という国レベルでプロセス技術者が大量にあぶれてしまった。そんな状況だがら、専門の仕事を続けられたのはほんの一握りで、ほとんどの人たちは泣く泣く職場を後にして、違う仕事をやることになった。それでも、若い人はまだいい。けど、自分みたいな中堅以上の専門家は、つぶしがきかないから行くところがないんだよ」(中略)
もちろん、すべての技術者が泣き寝入りしたわけではない。それを不服とし、自らの専門技能を生かすべく会社を辞めていった人たちがいた。多くの技術者の証言によれば、その大きな受け皿になったのが韓国メーカーだった。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080519/302262/?P=4

まず経営者の頭をすげ替えないことには,雇用の流動化は正常に機能しないのだ.


http://d.hatena.ne.jp/T-norf/20080606/JPIT2

でも彼らの言う「雇用流動化」は、派遣社員偽装請負の非正規雇用者が中心であったり、35歳未満の若手だけの流動化であって、中堅以上の正社員の流動化は、あまり起きていないと思う。
この非正規雇用の問題は、計算方法によっては企業の見かけ上の労働生産性(正社員ベース)を上げることはできるかもしれないが、悪く言えば奴隷商人のような商売だ。そして、非正規雇用者や下請けを安く使うだけであれば、全体としての労働生産性は下がる一方であり、なんとか回避しなければいけない状況でもある。

*1:昔読んだのでうろ覚えだが,こういう完全に自由な市場が成立するためには,様々な前提条件が必要だというのは経済学的にも認められているらしい.たとえば全ての情報が平等に入手できる,各個人は常に合理的に判断し,最善の選択をする,財の輸送や判断は瞬時に行われてコストが無視できるほど小さいなど.
人材の場合にはこの前提が成立しないので,自由な市場にはならない.

*2:実は労働者も必ずしも合理的には動かない.たとえば持ち家があったり住宅ローンを抱えていたり,或いは配偶者や子供がいれば,そう簡単には転職できない場合が多い.

*3:株価や小麦だって必ずしも合理的には決まらない.投機的な買い占めや売り惜しみ,談合など,様々な手段で価格は動く.

*4:ペイする労働者/ペイしない労働者なんて曖昧な書き方をしてるけど,これって年功序列においてはペイしない≒中高年/ペイする≒若者なんだよね.だから新卒が一番安上がりで,中高年がお荷物になる.