田原総一朗×夏野 剛 「ガラパゴス化は通信方式が原因?ぜんぜん違いますよ!」
- http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1332
- http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1387
- http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1446
興味深い.けっきょく全部読んでしまった.
経営やIT業界の人にとっては常識だけど,マスコミが報道したがらない日本の経営者の耳に痛い部分を突っ込んでる感じ.
個人的には「よくぞ言ってくれた」という感じ.技術者的には,経営の失敗を技術的問題にすり替えるデマ*1についてはずっと苦々しく思ってきました.
以下,長いけど個人メモ.
夏野:えーと、でも去年1兆5000億円稼ぎましたよ。
田原:だけど、1兆なんてたいしたことないですよ。もっというと、iモードというのはね、あの当時の世界最高の水準。今もそうですよ。夏野:そうですね。
田原:当然、だから世界の最高水準なら、世界の標準になるべきだった。ホントは、ドコモのiモードが世界中で売れなきゃならなかった。なんで売れなかったんですか。
Googleが世界市場を制覇せず米国内部にとどまり続け,何年かしたら後発の検索エンジン(たとえばBingやバイドゥのような)に世界市場をとられて,気がついたら世界第10位のあたりをウロウロして収益も年々減り続けているような感じだろうか.そりゃ「失敗」と言われるよね.
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- http://togetter.com/li/45512
- http://ameblo.jp/bobovieri/entry-10632807439.html
- http://blogs.itmedia.co.jp/fukuyuki/2010/08/post-605b.html
夏野:ドコモがもし世界展開するんであれば、iモードの技術を世界展開しても意味がないんです。それだけじゃ、お金がもうからない。そうすると、免許を買いに行くか、会社を買いに行くということが必要だったんです。けれど、やんなかった。
田原:なんで?夏野:まああの、僕が言うのもなんですけど、度胸がなかったんだと思います。
田原:さっきおっしゃったサムソンだってヨーロッパ標準で売ってるんでしょう。夏野:そこで、今度はメーカーの話になります。通信事業者が世界展開するのは、ものすごいお金がかかる。例えばイギリスの通信会社買うのに5兆円くらいかかるんですね。だから兆の規模の買収を仕掛けていくならば、世界展開できる。
田原:まあ、それぐらい、ドコモなら平気で・・・。夏野:やれます。でも、やれる人材がいないんですね。
夏野: もうひとつ言いますとね、実際にわかるか、わかんないかよりも、例えば海外の企業を買収するなんてのは、携帯の事業わかってても、国際的なビジネスの経験とか、あるいは金融で資金調達した経験とかないと、なかなかできないですよね。ボーダーフォンのCEOというのは元金融業界の人なんです。
田原:僕はね、日本の大企業には経営者がいないと思うんです。
夏野:本当の意味での経営者がね。田原:いない。だって例えばね、パナソニックの社長を、どっかの企業が引き抜きに来るかといえば、来ない。こんなの経営者と言わない。いや、パナソニックだけじゃないですよ、トヨタの豊田章夫さんを、どっかが引き抜きに来るかといえば、来ない。もっといえば日本の経営者の多くは新入社員で入って、30数年間社員として働いて、運がいいと経営者になる。問題は、よく言うんですが、日本の場合、経営者になる条件って私は4つあると思う。一つは30数年間失敗しないこと。
追記:「Google創業者は最初ジョブズに経営を任せたかった」 http://techwave.jp/archives/51517727.html
社長になる条件
- 30数年間失敗しないこと
- 人当たりがいい。だから、悪口を言われないこと
- 運がいい
- 力がある
「失敗しない」と言うことは,チャレンジしない,決断しない,リーダーシップを取らない,事なかれ主義ということ.「悪口を言われない」ということは,えてして没個性で,事なかれ主義で,保守派ということ.「旧社長や創立者のやり方を否定する改革派」なんてのはもっての他.*3
夏野:みんなが怖いんですよ。久多良木さんが社長になるっていう噂はずっとあった。でも結局は社長になれなかった。ソニーの中で反対がたくさんあったと新聞に書いてあったんです。その反対の理由は何かと言うと、ソニーのためじゃなく、自分のためなんです。
田原:怖いんだ。
夏野:政治家は国のこと考える、社員は会社のことを考えなきゃいけない。自分のことを考えて人を選んだら、人事は失敗ですよ。田原:日本の経営者ってそこが弱点です。次の社長を選ぶとき、怖くないのを選ぶんだよね。
夏野:そうそう、無難なのを選ぶんです。自分よりできる男を雇い、それを後釜に据えることが本当の経営者のやることだと思うんですよ。
田原:下手にそういう社長にしたらね、自分が会長になれないかもしれない。
日本の方式が世界と違おうが、そんなのメーカーだったら相手にあわせて作ればいいんですよ。作れるんですよ。ただし、思いきって勝負かけなきゃいけないんです。ちょろちょろっと勝負かけちゃだめなんです。サムソンは、「サムソン」というブランディングにいくらかけたか。何千億というお金を投入して、サムソンというブランドをまず作っていったんです。
それとね、僕はいつも、「ニッポン」って言葉を社名につけてる会社は世界企業になれないって言ってるんですよ。「ニッポン」だもの。NTTは「Nippon telephone Teregraph」でしょう。Teregraph=電信なんてついてちゃだめですよ。いつの時代なんですか。社名は"名は体を表す"ですけど、やっぱりブランディングってすごく重要だと思うんですね。
そういえば,"Apple Computer"は手作りパソコン"Apple I"を売っていた零細ベンチャー企業だった.
それが今ではiPod,iTunes, iPhone, iPadの会社になった.だから社名もAppleになった.それから考えると,未だにNTTのままって,やっぱり古くさいと言わざるを得ないかな.*4
ついで
- http://d.hatena.ne.jp/masayang/20100920/1285004807
- http://d.hatena.ne.jp/masayang/20100427/1272392230
追記
- 「日本のケータイが「ガラパゴス化」した本当の理由」http://satoshi.blogs.com/life/2010/12/garapagos.html
- 「iモードが世界制覇できなかった本当の理由」http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51569092.html
この辺りの記事が,なんでこの「ガラパゴス化は通信方式が原因?ぜんぜん違いますよ!」の記事を引用してないのかわからん.おかげで,双方ともに的外れになってる気がする.
戦略には様々なものが考えられるわけです.
- 最初は独自仕様でも,世界展開してデファクトスタンダードを取る
- 最初は独自仕様だけど,時流に合わせて標準技術に切り替える
- 最初から標準的な技術を使って展開していく
などなど.
技術者に無理させてちょっとくらい先行しても,世界標準をとられて資金力で差をつけられたら勝ち目がない.Intel CPUがRISC各社を駆逐したのがその好例.互換CPUメーカーさえも全滅した.Windows PCがNECのPC-9801シリーズを駆逐した例もある.
日本のケータイメーカーなんて兼業ばかりだから,世界的に見れば中小企業ばかりだし,DoCoMoはしょせんは電電公社だから海外ビジネスなんてできるはずもない.そのまま行けばじり貧なのは,みんな最初から分かっていたことなのよ.
http://b.hatena.ne.jp/entry/satoshi.blogs.com/life/2010/12/garapagos.html
- id:sunset01 特に目新しい主張はない。日本は技術力、腕力もあったのにもったいない。戦略なき戦術とはこのこと。半年に1回モデルチェンジをするという開発計画は想像を絶するということを知っている人は少ないのかもしれない。
- id:hidematu 個人的には単に「鎖国」したからだと思う。
独自規格が悪いのではない.悪いのは独自規格でありながら世界市場に出て行かず,出て行こうとせず,小さな島国の中に閉じこもって自滅の道を選んだこと.それこそがガラパゴス.*5
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*1:「ブログやIT系のネットニュースでは、国内ケータイやサービスが海外に進出するのに失敗した、いわゆる「ガラパゴス化」の原因として、「主に男性技術者によって、独自に発達した技術が原因である」と語られていることがあります。 」 http://slashdot.jp/askslashdot/article.pl?sid=10/10/05/0814205
*2:このネタが理解できる人は少ないだろうな.同じくアシモフのファウンデーションシリーズでも,今の日本と重なる場面は多い.
*3:こういう経営患部が,新卒に対して「我が社を引っ張っていけるような優秀な人材を求めてます(キリッ)」と言ってるんだから滑稽だ.
*4:まあ"International Business Machines"なんて会社もあるけど,こっちは最初からInternationalなのでずっとマシ.