ミイラがレベルアップしてミイラ取りに

http://d.hatena.ne.jp/minekoa/20110204/1296842563

なれる!SE (3) 失敗しない?提案活動 (電撃文庫)

なれる!SE (3) 失敗しない?提案活動 (電撃文庫)

今回のは「失敗しない?提案活動」というより「ブラック企業の作り方」という気がするんですよね.


今回読んでて「不吉だなー」と思ったのはこの部分

これについて工兵が打った手は一つだけだった.
室見と梢に頭を下げ一言.
『お願いします』
そう頼み込んだ

これが工兵が悪魔に魂を売った瞬間だった.

彼女たちの稼働もスキルセットも休日も何一つ考えることなく厚顔無恥に言い放った.

エンジニアとして最低最悪の行動,工兵自身もっとも忌み嫌っていた社長のアサイン手法.

だが室見達は文句一つ言わず自分のプランに乗ってくれた.工兵のために休日出勤し貫徹で作業を遂行してくれた.

一見単調な台詞の一つ一つに,不吉さと絶望を感じられずにはいられません.中小企業が転げ落ちていく最大の原因は,意外とこんなささいな「勝利」なのかも.

「どうしたの?桜坂。辛気くさい顔して」
「いえ……」
体内の高揚が徐々に引いていく.考えてみれば喜んでいる場合ではないのだ.ただでさえ綱渡りで業務を回している中,自分は超弩級の大型案件をとってしまった.回すのは他でもない自分たちだ.他の仕事が消えてなくなるわけでないからたぶん平行してこなすことになるのだろう.今でも終電帰りが続いているのに?まったくもってぞっとする状況だった.
工兵はため息をついた.
「いや……仕事回るかなあと思って」

これは技術者としてやっちゃいけないことだと思うな.一時の気の迷いで悪魔に魂を売って「お願い」してしまえば,次はさらに大きな「お願い」をすることになる.今回限りの「お願い」は次々に大きくなり,それはいずれ誰かが潰れるまで,あるいは死ぬまで続く.次は,それが蟻の一穴となり,会社が潰れる.それがブラック企業の真実ではないかと思う.かならずしも悪魔がいるわけではなく,悪魔の囁きに耳を貸して魂を売った俗人がいるだけなのだ.
http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20071025/p1

・・・・・・・・ただ、小説にこんなことを言うのも何ですが、世の中魔法のような事はありません。限界を超えることができますが、それには相応の対価が必要です。

「鉄火場」は本当にシャレではなく死人がでるから「鉄火場」になるのです。この小説がなまじリアルなディテールを持つだけに、わたしはこの小説のラストに梢か室井さんが鬱病でリタイヤとか、工兵が次第に現場と乖離していき(ちょうどブラックラグーンのように)その歪みを自覚する展開とか、そういうモノを望んでしまいます。あぁ、わたしってば歪んでる...orz

この調子でいくと,次の展開は

  1. 三巻の案件による真・デスマーチ突入
  2. 梢の鬱病&リタイヤ.その後の消息は誰も知らない.
  3. 室見のドクターストップ&リタイヤ.その後の消息は誰も知らない.
  4. 案件がこなせなくなってスルガシステム倒産.社長は自殺.社員はちりぢりに.その後の消息は誰も知らない.
  5. 不況の中の工兵の転職活動,業務経験2年たらずの既卒には世間の風は冷たかった.
  6. ついに転職も諦めた工兵が故郷に帰り実家を継いで,なぜかカモメさんと結婚.カモメ新社長の元で工兵の実家は急成長というハッピーエンド.(事実上カモメに店の経営権を乗っ取られたとも言う.)ただし室見と梢からすると最凶最悪のバッドエンド.

という,半ばリアリティあふれる,「働いたら負けかな」的展開もありだと思ってます.


しかし、実はもう手遅れで、すでに心も体も壊れていたのでした。

一日3時間も起きてられない。眠っても眠っても眠くてしょうがない生活が数ヶ月つづいたり、働くことがトラウマになってしまい「就職しなきゃ」と考えただけで動悸バクバクになってしまうとか。体の方は一言で言えば、一気に老化したなぁ、といった感じで、あちこちガタガタになってしまい、なんか残業代をお医者様に貢いでいるような状態で。

http://d.hatena.ne.jp/minekoa/20070802/1186069596