「授業は無料、支払いは就職後に。プログラマー養成学校「Appアカデミー」」

http://wired.jp/2013/03/20/free-learn-to-code-boot-camp/
http://www.wired.com/business/2013/03/free-learn-to-code-boot-camp/

Appアカデミーを卒業して仕事を見つけた人は、初年度に稼ぐ年収の15%を学費として支払う契約になっており、学費は就職した時点から6か月かけて支払えばいい。生徒がうまく就職できれば、このやり方は学校にとっても悪い話ではない。例えば15人の生徒が年収8万ドルの仕事を得たとすれば、彼らが支払う学費の合計は18万ドルにもなる。

もちろん審査はそれなりに厳しいんだろうけど,これは米国,それもサンフランシスコだから成立する話だと思う.非常に特殊な世界限定での話.

たとえば次のような特徴が挙げられるだろう.

  • ITビジネスに国際競争力があり,将来性もある.
  • ITは高付加価値ビジネス.
  • プログラマーは高付加価値人材で高収入
  • 優秀なプログラマーは常に不足していて引く手数多.
  • プログラマーを志望する優秀な若者がいる.

これだけ見ても全てにおいて日本とは完全に正反対であり,日本で同じタイプのビジネスが成立する可能性は全くないだろう.*1

他に,こういうビジネスに出資してくれるIT企業やベンチャーキャピタルの存在も違う点の一つかもね.


また日本企業の特徴として

  • 過度の新卒偏重.中途入社はワンランク低く見られることが多い.
  • プログラマー30歳/35歳定年説.
  • 技術力より「こみゅにけーしょん」能力重視.
  • 一流プログラマーより三流マネージャーを優遇.
  • 難しい技術,新しい技術を自社では使おうとしない.*2 *3
  • 低付加価値,丸投げビジネス.

等々の奇妙な風習があるため,それらの点からもこのような制度の導入に成功するとはおよそ考えられない.

同校では9週間にわたって毎週90時間のレッスンを提供し、その間にプログラミング初心者を優秀なプログラマーに育て上げる。

約二ヶ月だと,そのくらいは最低でも必要か.本来なら1年以上かかることを2ヶ月でやろうとするなら,週90時間というのもそんなに驚かない.*4それにたぶんズブの素人では無く,基礎はできていると見た.

Though the curriculum is centered on learning web development, with an emphasis on Ruby on Rails and Javascript, Patel says the goal is to train full-fledged software engineers.

WebそれもRuby on RailsJavaScriptに重点を置いていると.

たぶん,プログラミングは既に大学で習得済みで,RailsJavaScriptを使ったWeb開発スキルだけを2ヶ月でたたき込むんじゃ無いかな.いくらスパルタでも2ヶ月でできることは,そのくらいが限度.


突き詰めればこの学校ができることは受給のミスマッチを埋めることだけではないか.シリコンバレーを中心に米国には(Rails)プログラマーの需要があり,一方ではプログラマーの卵がいる.そのミスマッチを埋めさえすればRailsプログラマーが仕事を得るのは容易いと予測されてるのだろう.だからその間を取り持つビジネスが成立する.

一方で日本にはプログラマーの需要がない.ましてRailsプログラマーの仕事など極めて少ない.また待遇もずっと悪い.その状況下で似たような学校を始めた所で,職を得られる卒業生はほとんどいない.*5また授業料についても「初年度に稼ぐ年収の15%」では採算割れすることだろう.

http://b.hatena.ne.jp/entry/wired.jp/2013/03/20/free-learn-to-code-boot-camp/

  • id:backupper 面白いが、日本でやったら人材紹介的なビジネスとしては成功するかもしれないけど、養成された人たちの大半はプログラマとして失敗するだろうなぁ。職安が無料(むしろ金あげて)やってる職業訓練見れば明らか。
  • id:naruoe いきなり年収8万ドル??入学は相当狭き門と見た
  • id:khei-fuji 年収8万ドルって意外ともらってるな。初心者レベルでそんなにいけるものなのか?

米国じゃ並程度らしいよ.シリコンバレーだともっと上だそうな.

  • id:ngsw 希望者から10%へ絞り込むような選別をしてるみたいなので、タイトルから受ける印象ほどよくない。

プログラマーの資質の無い人間をふるい落としたらそんなもんでしょ.そんなに狭き門とは思えん.

無理では.

プログラマの資質のある有望な応募者を選抜し,鍛え上げる必要があるので,その資質が無い人間は対象外.

*1:日本よりはインドあたりの方が,まだしも可能性があるんじゃないか?

*2:「他社で実績が出たら考える」.そして誰もやろうとしない.「二番手症候群」とでも言おうか.

*3:米国(日本以外?)なら「Railsは優れた技術なのでRailsを採用しよう.だからRailsを使える技術者を雇おう」だと思う.日本の経営者なら「技術のことはよく分からん.Rails技術者は数が少なく人月単価が高いから,人月単価の安いPHPを使おう」.これではRailsを採用する企業もRails技術者も増えるわけが無い.

*4:日本のSierなら普通の労働時間な気もするしナー。

*5:加えて新卒偏重だの「こみゅにけーしょん」能力重視だのの問題もあるので,現実はさらに厳しい.