「エンジニアが起業に向いてない」?嘘をつけ

本日の糞記事.*1

よく経営者やマネージャーにとってのエンジニアの評価として「やらない理由、ダメな理由をすぐに言い出す」というのがあると思います。

それは「無能な経営者は,なぜ過去の失敗から学習せずに同じ失敗を繰り返すのか」と言いかえた方が良いと思う.


無知な経営者は実現可能性を判断できずに思いつきで発言する.思いつきなので,それは99%失敗するアイデアで,その半分以上は過去に失敗したアイデアだ.失敗するのが確実なアイデアについて(優秀な)技術者に意見を求めれば,そりゃあ失敗する理由を教えてくれるだろう.同じ失敗を繰り返すのは愚か者だけだ.技術者であろうとなかろうと,よほどの阿呆でもない限りは同じ失敗を繰り返したりはしない.


これがたとえば「コスト意識のないエンジニアに素晴らしい新製品開発ができる理由」「コスト意識のある経営者が新製品開発にむかない理由」と書いたら,大抵の経営者は「それは違う」「嘘つけ」って言わないかな.

よく技術者にとっての経営者やマネージャーの評価として「人が足りない、どれだけ利益が出るか分からないもの(≒画期的な新製品)に無駄な予算は回せないと、ダメな理由をすぐに言い出す」というのがあると思います。

こんな感じで,納期とか予算を根拠に「やらない理由」を探すのは経営者の十八番.

コスト意識があるけど,ビジネスチャンスを先読みして巨額の投資ができる経営者/技術者と,そもそもコスト意識がなかったりビジネスチャンスが理解できなかったりして,赤字を垂れ流す経営者/技術者とは全く異なる.*2

「客の要望をかなえることが、仕事をする社会人としての使命じゃないですか」
「はあ」使命とは大げさすぎるが、言っていることは間違ってはいない。「そうですね」


「それなのに、あの人からは『できない』という言葉しか聞いていない気がするんですよ」
 ――それはあなたが『できない』設計ばかりよこすからだよ。
 心の中でそう突っ込んだものの、口に出して言えるわけもなく、

「うーん、技術に関してはこだわりがある人なんですよ」と、誤魔化した。


「そうですかね? どうも、面倒くさいことから逃げてるだけに見えてしまうんですけどねえ。そう思いませんか?」
 ――この人にあてるパッチか何か出てないのかね。

http://el.jibun.atmarkit.co.jp/pressenter/2011/06/5-23c7.html

「できるエンジニア」の必須要素にある「異常系の設計や異常系一歩手前の処理を、オモテナシも含めて考えることができる」を考えると、行動原理として「ダメな理由」を思いつくのが誰よりも早いのがエンジニアの役割であり、

というか,良い技術者なら知識と経験が豊富で論理的思考力が鍛えられてるから,良いものと悪い物を見分ける能力が鍛えられているんだよ.良い技術者ならば,駄目な理由についても良い理由についても見抜く能力は優れてる.

ただアホな管理職や経営者が持ち込んでくるアイデアに,一目でダメと分かる物が多いというだけの話で.

技術であればできることできないことがはっきりしていますが、起業において答えは「やってみる」しかないですからね。

んなわけない.それは技術のことを全く知らない素人の偏見.新規技術開発は常に前人未踏の未知の世界だ.

起業についても「神風アタックで玉砕する」以外の道を選択してもらいたい物だ.巻き添え食って人生狂わされる人達が可哀相じゃないか.


反論しようと思ったけど,トラックバック無しか.やれやれ.

http://b.hatena.ne.jp/entry/f-shin.net/fsgarage/579

  • id:yumu19 うーん、「リスクに気づく能力」と「リスクを背負って一歩踏み出せる能力」は別物だと思うのだけど。リスクに気づけない非エンジニアの方が起業向いてないのでは。
  • id:nihoncha なんか違う。リスク検知能力と行動力は一見トレードオフのようでも、実はそんなことない。リスク検知能力が高い方が成功体験を得やすいメリットもある。
  • id:Tesh 問題に気づくこととそれにどう対処するかは独立。エンジニアだってアクセルを踏むべきときには踏みます。へっちょこエンジンと壊れたブレーキしか持っていない起業家もどきより余程「向いている」と思いますけどね。
  • id:gurutakezawa いや、技術だってやってみなけりゃわからないことは何ぼでもありますけど?つかむしろ新技術の開発なんてやってみないとわからないことだらけ。

そして新規開発の際に,正確な工数を見積もれとか,確実な売り上げを予測しろとか,これだけの利益を保証しろとかいって,駄目な理由を考えて開発の芽を摘むのが管理職の場合が多いんだけどね.どちらかというと,技術者より管理職や経営者の方が,「やらない理由」を考えるのが専門のイメージ.

「ただ,もう設計書は作成してしまったんでね.松永さんと金山課長の承認印ももらっています.これを今から変更するとなると,ちょっと大変ですわな」
「そういう問題じゃないでしょう」荒木が少し声を大きくした.「効率を考えてみれば,後々,どちらが楽なのは明白です.」
「そういうことは仕様を決める前に言うべきだったな.」西村は冷たく答えた.「既にコーディングしてしまってる画面もあるのに,それを一度,引き上げて再設計しろというのか?」
「はい,そうすべきだと思います.」
「どうですか,松永さん」西村は困り果てた,とでも言いたげに肩をすくめた.「関係する画面のコーディングを止めて,設計書を書き直して,また御社の承認にかけて,スケジュールの線を引き直して,…」
「いやいやいや」松永はぞっとして手を振り回した.「それはもうできませんよ.無理です」
「でも,これは御社のためなんですよ!ここで多少の手戻りが発生しても,最終的には工数削減になるんです!」
荒木が声に力を込めたが,松永は同調できなかった.
「すみません.私には細かいことはわからないので.分かっているのは,スケジュールを遅らせることはできない,ということだけです.」
(中略)
とにかくスケジュールの遅延につながるような問題が排除できて良かった.松永は満足感とともに一礼すると,システム課に戻ることにした.

現実はこっちのが多い.やるべきことを見抜けるエンジニアと,なにをしているかも理解できないマネージャの対立.


  • id:kangyasu 確かに体育会系の上司ほどエンジニアとの対話を嫌う傾向。ただそういった人って大体自己管理ができてない情熱だけの人。起業するのも取り敢えずやってみることも大事だけど、一番手間をかけた作業が必要になるのはエ
  • id:katsuren うーん、微妙。エンジニアの定義がまず狭い気がする。つまらないエンジニアの典型を例に出してこいつは起業に向いてない、と言われても、「はぁ、そうですか」としか。

*1:こっちが前回の.結局公開したのは同じ日だけど. http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20131013/p2

*2:「金なら何兆円でも必要なだけ出す。必要な助手も何百人でも必要なだけ雇う。機材も好きなだけ君の一存で買って構わない。だから好きな物を作ってくれ」って頼まれたら,そりゃあなんでもやりますけどね.今じゃGoogle Labsでさえそんなことやんねーよ.