「米地域航空が深刻なパイロット不足―初任給ファストフード並みで 」

http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304204104579379930682471094.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140213-00000759-wsj-bus_all
メモ.
なんか身につまされるよーな...

米国の最大手パイロット労組によれば、米国の地域航空14社のパイロットの平均初任給は年収で2万2400ドル(約228万円)で、それより小規模の航空会社では最低1万5000ドルのところもある。小規模航空会社のパイロットの年収は、連邦最低賃金である時給7.25ドルのフルタイム労働者とほぼ同じになる。

地域航空は、米国の航空業界の中で重要な役割を担っている。パイロットの給与がはるかに高い大手航空は、節約のため国内便の半分程度を、提携している地域航空にアウトソースしている。大手航空が運行計画や運賃を設定し、切符を販売して燃料を購入する。そのため、提携先の地域航空には賃上げの余地がほとんどない。

 こうした長年にわたり業界を支配してきた構造問題に加え、政府が昨年8月に、大半の民間航空機パイロットの最低飛行時間の要件を250時間から1500時間に引き上げたことも大きな影響を与えている。この新規則により、パイロットになるのに必要な時間と費用が急増し、現在の初任給の低さはますます魅力的でなくなり、すでに不足しているパイロット志望者はさらに減少している。

アーカンソー州アーカデルフィアのヘンダーソン州立大学の4年生、アンドリュー・フィン氏(23)は、4年間のパイロット養成コースを修業し、380時間の飛行を経験したが、そのために10万ドルの借金をしたと語る。連邦政府の新たな訓練要件により、民間航空機のパイロットになるには、あと2-3年間教官として飛行する必要が出てきた。彼は、追加費用を支払えるだけの余裕はあると思うとする一方で、「数人の友人は、費用が高過ぎて、回収できる見通しがつかないとして、パイロットになるのをあきらめた」と語る。

航空業界関係者の中には、パイロットの給与の二重構造は持続可能ではないとみる向きもある。多くの地域航空は、パイロット不足の前に経営難に陥っており、近年破産法を申請する会社がいくつも出てきている。一方で大手航空は地域航空に対し、燃費のいい大型ジェット機を購入するよう圧力を掛けている。

 パイロット不足は、すでに大手航空会社に影響を与え始めている。ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスは2月に入って、ハブ空港クリーブランド空港に発着する便を今春60%削減する計画を発表した。その理由の1つとして地域航空が運航計画を満たせないことを挙げた。

 パイロット不足は、需要の増大によって悪化している。大手航空は、65歳の定年に達する上級パイロット数千人の補充のため、提携先の地域航空からパイロットを引き抜こうとしている。リパブリックエアウェイズのブライアン・ベッドフォード最高経営責任者(CEO)はインタビューで、今年は同社のパイロット2200人のうち16%が大手航空に引き抜かれると予想している。

 中小の航空会社の中には、給与を上げている企業もある。35機を保有するシルバー・エアウェイズ(フロリダ州)は先週、副操縦士の給与を10%、機長の給与を5%引き上げるほか、1年以上勤務するパイロットに6000ドルの賞与を支払うことを明らかにした。同社はこれに先立ち、2014年第1四半期の飛行便数を13%削減している。同社のパイロット200人は労働協約の変更に関し、今年3月までに投票を行う予定だ。 

 L.E.K.コ ンサルティング社の航空担当責任者、ジョン・トーマス氏は、パイロットの志願者を増やすために初任給を大幅に引き上げると、中小の航空会社は顧客である大手航空会社にとって魅力的でなくなる恐れがあると話す。同氏は「給与を上げると、地域航空業界が廃業に追い込まれる可能性がある」と述べる。

 別の戦略に頼る航空会社もある。グレート・レイクス・アビエーション(ワイオミング州)はパイロット数を1年前の300人から100人に減らしたという。また、保有する19席の航空機の座席数を10席減らして9席にした。パイロットの飛行経験を250時間とする連邦航空局(FAA)の別の規制の下で運航するためだ。グレート・レイクスのダグ・ボス会長は1500時間の飛行経験を持つパイロットを「集められる力は当社にはない」と述べる。同社のパイロットの初任給は年収で約1万6500ドルだ。

 状況は近い将来に変わりそうにない。業界関係者は、訓練に関する規制が撤回ないし修正される公算は小さいとみている。連邦議会が関わってくることが主因だ。また、1カ月前に施行された、旅客機を運航する企業にパイロットの休息時間を増やし、パイロットを約5%増員するよう求める規則の撤回を予想する人もいない。この2つの規制は2009年にリージョナルジェット機が墜落して50人が死亡した事故を受けてつくられた。

 米国最大のパイロットの労組、米航空パイロッツ協会(ALPA)の代表を務めるリー・モーク機長は、大手航空会社が「この問題に取り組まなければならない」と述べ、大手航空会社は地域航空会社のパイロット不足から影響を受け始めていることを分かっており、状況は恐らく夏までに深刻化するだろうと話す。モーク氏はこれまで大手航空会社と安値で契約してきた地域航空会社のCEOは、もはやその契約を履行できないことを認める必要があると述べる。

 新任のパイロットの数は、訓練規則が施行される以前でさえ、減り始めていた。FAAは12年に5万4370人に対して操縦練習免許書を発行したと推測しているが、この数は20年前より31%少ない。民間のパイロットになるための訓練には10万ドル以上かかる場合もある。必要とされる時間飛行するため、パイロットは教官として働くことができるが、その給与は微々たるものだ。

 イーグル・ジェット・インターナショナル(フロリダ州)は貨物機の副操縦士になるために、訓練生に1時間57ドルの料金を課している。貨物機は民間旅客機とは違った規制の下で運航されている。イーグル・ジェットのリチャード・ガボー社長によると、同社の訓練プログラムは盛況で、一度に80人の訓練生を受け付けている。訓練費の大半は親が負担しているという。新訓練規則は同社にとっては良いが、業界にとっては悪いと同社長は話す。

 新米パイロットは将来の昇給に期待している。ALPAによると、5年たっても地域航空の副操縦士の年収は3万5100ドルにすぎない。だが機長になればかなり増える。また大手航空会社で身分保障のあるパイロットになることができれば年俸は10万〜22万ドルに膨らむ。