ビミョーすぎる大日本印刷の全集縛り付き電子書籍端末

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20141202_678533.html

うーん,分かってない経営者が企画して,分かってないユーザー向けに売りつけて,買った人間が『失敗した!』ということになりそう.

大日本印刷株式会社(DNP)は、独自開発した電子書籍端末に作家全集などを収録したパッケージ商品「honto pocket(ホントポケット)」の販売を12月11日に開始すると発表した。まずは早川書房から出版されているミステリー全集など5タイトルをラインナップ。

全く魅力の無いハードウエアだ.専用プレーヤー以外では再生不可能な縛り付きDVDで,専用プレーヤーの修理も交換も事実上不可能なDVD-BOX/プレーヤーセットみたいなもんだぞ.DVD-BOXはあっても,プレーヤーが常に別売りである理由を考えてみようよ.


しかも電子書籍の場合は,そこの所の自由度がもっと高いのだ.同じ本を家族で共有したり,同じ端末に複数の全集を入れて持ち運んだり出来る.

たとえばクラシック音楽好きな人がいたとして,ベートーベン全集専用とモーツァルト全集専用で二台のiPodを買うだろうか.普通は一台のiPodに,自分の全(クラシック)CDを入れて,肌身離さず持ち歩くだけだろう.それが『棚』を持ち歩ける電子デバイスの強みの一つなのだから.

作家全集やシリーズなどの大量のコンテンツでも携帯でき、年配の人でもフォントを拡大して読めるといった電子書籍電子書籍端末のメリットはそのままに、あらかじめ端末にコンテンツを収録して販売することで、インターネット接続や会員登録、コンテンツの購入・ダウンロードといった操作不要で、購入してすぐに読書を楽しめるようにした。電源も単3電池×2本となっており、バッテリーの充電も必要ない。

 その一方で、ユーザーが後からhonto pocketにコンテンツを購入して追加したり、入れ替えたりすることは全くできない。そのため、honto pocketのパッケージはハードウェアこそ同一だが、タイトルごとに専用機というかたちになり、それぞれ専用のハードカバー本風の装丁の外箱を用意。複数購入した場合は、パッケージを紙の本と同じように本棚に並べておけるようにした。

初回ラインナップのタイトルと価格(税別)は、「アガサクリスティー全集」(100冊)が7万4800円、「名探偵ポアロ・シリーズ」(43冊)が3万2800円、「エラリイ・クイーン選集(27冊)が1万9800円、「ホームズ&ルパン 名作競演集」(14冊)が9800円、「グイン・サーガ全集 上巻」(80冊)が3万9800円。DNPによると、電子書籍版を買いそろえるよりは若干高い価格設定だが、紙の本で買いそろえるよりも2割程度安価だという。

ディスプレイには、E Ink製5インチ電子ペーパー(800×600ピクセル)を採用。本体内には文庫本で最大100冊分のEPUB電子書籍を収録できる。アルカリ単3電池×2本で3000ページ以上の連続使用が可能(1ページ30秒表示ペースの場合)。

 本体サイズは144.0×105.0×8.5mm(縦×横×厚さ、突起部含まず)、重さは約130g(電池含まず)。操作ボタンは、左・右のページめくり/移動ボタン、決定/メニューボタンの計3つのみで、このほかは電源スイッチがあるだけのシンプルな設計だ。設定機能もフォントの拡大・縮小(7段階)のみと必要最小限にした。

タッチパネルもフロントライトも省略かな.ブコメで気付いたが,全文検索機能もないのか.これは致命的.

故障した際は面倒なことになりそう.メーカーに送って実費(≒ハードウエアの代金)で同等品に交換とか?保証期間は何年くらいなんでしょうね.明記されてない辺りは,特別な配慮はなさげ.


端末の寿命はもって十年.おそらくは平均5年くらいしか見てないのでは.バッテリーの問題もあるし,そもそもフラッシュメモリは読み書きせずに長期間放置できるようなメディアではない.これを絶賛してる人って,この買い取り書籍の寿命が平均5年で,端末が壊れたらそれまでだということを理解しているのだろうか.

http://b.hatena.ne.jp/entry/internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20141202_678533.html

  • id:fashi 「コンテンツを購入して追加したり入れ替えたりすることは全くできない」「電子書籍版を買いそろえるよりは若干高い価格設定だが紙の本で買いそろえるよりも2割程度安価」 よくわかってない層が騙されて買いそう
  • id:Y_Mokko ジジババ向けのボッタクリ商売やん…。なんの為の電子書籍なん…。
  • id:masatomo-m インターネットとかPCを全然使わない層にはわかりやすいんだろうなあ。壊れた時のサポートは大変そうだけど、狙いとしては悪くはない気がする。もちろんまともなITリテラシのある人は買わないだろうし
  • id:n-sekiraku ???って感じの過渡期にだけ存在する感じのサービス感やばば
  • id:qittu 電子書籍のメリットと紙の本のメリットを両方無くしましたみたいな感じで売れるのかどうかよくわかんない
  • id:betelgeuse 机の上の肥やし用途としてはわりと妥当にも思える。検索能力が無いと死ぬほど指定ページへ移動するのは苦痛だろうけど
  • id:hiby まさかのスタンドアロン専用端末が2015年になろうとしてる今爆誕大日本印刷のセンスすげえ。そして充電不要を単三電池駆動に言い換える根性。
  • id:kikinight 面白いアイデアだと思うけど、電子の本なのに本棚が圧迫されるのはどうなのか……。蔵書を減らせるのが魅力のひとつなのだけどなぁ。
  • id:Rouble電子書籍版を買いそろえるよりは若干高い」くらいだと、電子書籍のセール時に比較するとかなり高くなっちゃうんじゃないかな……。
  • id:dekigawarui 壊れて読めなくなった時、同じ値段で買い直さないといけないのなら、怖くて手が出せない。
  • id:fan-tail 性能とかもうどうでも良くて一目見てダサい、終了。なんだこの形。
  • id:ufu235 全集だと使う頻度が低くくなる、しかも“専用のハードカバー本風の装丁の外箱”とか、10年ぐらい読まずに本棚に入れたままデータが揮発する事もありそう(これフラッシュメモリだよね?)
  • id:isaisstillalive ここまでするなら端末も本の形にして欲しかった。惜しい
  • id:zentarou 端末のコストがタダ同然になるような未来でならありだろうけど今はまだ早すぎる
  • id:QJV97FCr 実験的な位置付けなら面白いけど、本気で売れると思ってるならやばい
  • id:seuzo 端末の故障についてはどれくらいの保証期間が設定されているんだろう?
  • id:nibo-c グイン完結してないのに全集と言うのはやめいw あ、この商品はゴミだと思います。
  • id:cloq グイン・サーガは正伝の他に外伝も20巻以上あるんじゃぜ
  • id:furakutaru ハードカバー風のハコは面白い!ただ単3で動くのかよwww グイン・サーガ完結してないのに全集っていいんか?
  • id:takkshoff まだ完結してないのだが

汎用機(と言ってもあの汎用機ではない)なら専用機代わりに使えるが,専用機を汎用機として使うことは出来ない.それもあって専用機の必要性は皆無.

  • id:rosaline なんでホームズがルパンと一緒にされなあかんのですかね?むしろ白衣の騎士団とかの歴史小説ロストワールドに、晩年のスピリチュアル系迷作でドイル大全集にしろよ

細かいところは,よう分からんけど一利ある.

読書家ほど自分の蔵書に拘りがある.なんとか全集を入れるなら,あれとこれも入れたいというニーズが出てくるのは自然な流れ.そしてすでにそれが可能な端末が存在しているのに,なぜに退化したこんなオンボロハードを使わねばならんのか.

  • id:A-WING 読み終わって他のがほしくなったら書店に持っていって別のをインストール、ていうのではだめなんだろうか。TAKERUとかファミコンディスクライターとかみたく。

ここまでやったらそのサービスもアリだったと思う.

ただしおそらくユーザーは激しく少ない.既にKindleのような電子書籍端末が存在しているのに,わざわざ縛りを多くして使いにくくした端末を好む人は少数派.自分でパソコンやケータイが使える人は使わない.自分の身近な知人友人親兄弟にそれができる人は使わない.それでも使うのは一体だれ?

  • id:tahatahon 割とブコメは辛らつだがいいんじゃない?大学の図書館とかにあったら便利そう。研究の為、全集借りて読むの大変なのよ……(文学部あるある)

レンタルは可能ななのかな?これは販売用モデルだからライセンス上,レンタルは許可されないんじゃ.

特別ライセンスで対応するなら,ハードは専用ハードである必要は無い.

  • id:KoshianX 耐用年数がどれだけあるのかな。修理に応じてもらえる間は読める、という感じかね。ハードウェアと結びついてる分、購入者心理的には既存の電書よりマシか

なんでそれでマシになる.むしろハード故障の方が頻繁にあるでしょ.「買った初日に電子ペーパー割った」みたいなブログなんかも見た覚えが.そして壊れなくても経年劣化で十年持たずに読めなくなるのは仕様です.放置してたら2〜3年でバッテリーが過放電で死ぬかも.*1

  • id:honeniq これはAmazonには出来ない発想だし絶対やらないだろうから、結構いいとこ突いたんじゃないかと思った。電子辞書みたいなもん。

んなことはない.電子辞書とはむしろ正反対だ.

電子辞書だとこんな感じ.

  • コンテンツは国語辞典,英和,和英,英英,百科事典,そのほかにも各種入ってるのが普通.「OED全XX巻が収録された辞書」で,それ以外の辞書が全く入って無い電子辞書というのはない.
  • コンテンツの価格は紙で買うのに比べて大幅に値引きされている.
  • 最近のだとカードでフランス語,ドイツ語,中国語,スペイン語などのコンテンツが追加できるようになってる.
  • 電子書籍リーダーにくらべても検索機能は遙かに充実.

専用機なので辞書に必要な機能に特化して,高機能にしたのが電子辞書.専用機なのに汎用機に比べて機能を制限し,縛りも増やして利便性や何かを軒並み低下させたのが今回の商品.

  • id:asakura-t ↓今更騒いでる方々は電子書籍に興味がなくて叩きたいだけなんだろうなぁ/ハード代を考えると最低価格は9,800円と考えるのがいいのかな(なので15冊分くらいが最低限必要な感じ? 端末単価は千円くらい?

違います.誰にとっても嬉しくない糞商品だから糞商品と言ってるのです.

「バンドル型だからビギナーにもやさしい、大日本印刷の「honto pocket」を使ってみた」

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1412/29/news022.html
追記


これとは関係無いけど,この端末の致命的欠点として「シリーズが完結するまでハードが出せない」というのがあると思う.

グインサーガで散々ツッコまれてるが,グインサーガやペリーローダンみたいにまだ完結してないシリーズ物の既刊全てが読める端末や,まだ存命の作者の全著作を読める端末などは,この手のプリインストール型では実現できない.各種出版物を出版された直後に読むという極めて基本的な機能が,プリインストール型では実現不可能なのだ.ほとんどの読書家にとって,これは受け入れがたい欠陥ではないだろうか.

*1:過放電はないな.良くも悪くも乾電池だから.