これはヒドイ「「自動運転車の実用化は間近」の大いなる錯覚」

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO13271200T20C17A2000000/
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/122700311/021700006/
うーん,これはヒドイ.

今回からは、これまで説明した機械学習ディープラーニングの仕組みに関する知識を基に、コスト課題や効果課題の視点で、AIというキーワードで取り組まれている技術やサービスの実現性について見ていきたい。

ふむふむ

現在、AI技術として最も進んでいるのは自動運転技術である。

は?

自動運転がAI(というかディープラーニング)で実現されてるわけではないだろ.一部にそういう動きもあるようだが,あくまで補助的なものと思う.*1

不注意や酒酔いなどのヒューマンエラーによる事故の減少だけでなく、高齢化や過疎化が進んでいる日本では、(以下略)

「不注意による見落とし」はなくても誤認識は普通にある.

自動運転にはヒューマンエラーがないみたいに言ってるけど,プログラムにはバグがないとでも?プログラマは完全無欠なのでいかなるヒューマンエラーを起こさないとでも?

いやあ照れるなあ.

パーフェクトソフトウエア

パーフェクトソフトウエア

人間の思考に完璧はない。だからソフトウエアにも、テストにも完璧はない。ソフトウエア開発をこよなく愛する巨匠ワインバーグが書かずにいられなかった一冊。

第2回で説明した通り、機械学習はあくまで過去のデータ、すなわち既に起きたことから学習する機能である。今までに無いケースには対応できないため、様々な切迫した事態における交通法規などに基づく対処をAIに学習させる必要が生じる。

だからこそ,その辺りの「異常系」の機能をディープラーニングだけで実装するとは考えにくい.

しかし従来通りの実装を行ってもレアケースの開発が,やはり難しいのは変わらん.

人間の点数化が困難であることの例を挙げてみよう。あなたは家族と自動運転車に乗っている。ある街に差し掛かった際に、道路の右側に学校帰りの子供たちが列をなしており、左側にはお年寄りが花見をしている。その時、目の前の大きなトラックが急ブレーキを踏んだ(図2)。もはや今から急ブレーキをかけても衝突は避けられないし、衝突したら家族に生命の危険が及ぶ。とはいえ、衝突を避けるためにはハンドルを切らねばならず、子供たちとお年寄りのどちらかに生命の危険が及ぶだろう。そんな切迫した事態に、自動運転車はどのような対応を取るのか。

そんなもん(進路はほぼそのままで)「急ブレーキをかける」で決まりじゃん.*2 結果として衝突したとしても,被害は最小限に抑えられる.*3

しかも図で見ると後方の自動運転車の方は乗用車だから,トラックよりブレーキ性能が劣るということはまずあるまい.普通にブレーキをかければ接触することもなく安全に停止できる.*4 仮にぶつかったところで正面からの衝突で速度差も僅かだから,シートベルトとエアバッグあれば,搭乗者はほとんど無傷だ.

仮に左右に避けるにしろ,今のIT技術では大人と子供を見分けることはおろか,人間と障害物,郵便ポストとサンタクロースを見分けることも簡単ではない.*5 こっちは殺しても良いからこっちに突っ込めなどという判断をする以前の問題だ.

当然ではあるが、国ごとに文化や道徳、倫理概念が異なる。そのため、大枠としてはほぼ同様な交通法規であっても、先ほど例示したような切迫した事態における判断の妥当性は、国ごとに異なってしまう。米国では薬局で購入できる薬が、日本では使用が禁止されている。それと同様の事が起こるわけだ。

さすがに「トラックと追突事故を起こすくらいなら,通行人を轢き殺せ」という法律を持つ国は珍しいだろう.なので,これが問題になることはないと思われる.


そういうローカライズ問題でいえば,右側通行と左側通行や道路標識,気象条件*6,さらには看板なんかの方が問題では.たとえば「この先通行止め」みたいな標識を各国語で読んで判断する必用も出るだろう.日本だとラウンドアバウトもなかったが,国によってはかなり普及しているらしい.*7

スノーモービル 道路通行可」.そんなの知らんがな.
「EinbahnStraβe」読めません.

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei.com/article/DGXMZO13271200T20C17A2000000/

  • id:houyhnhm そんな状況だったら、まずトラックにぶつかるだけだと思うが。そもそも車間距離が問題だし。

「群衆写真中の小さな顔の位置を特定する新技術」

http://jp.techcrunch.com/2017/03/31/20170330new-tech-can-spot-small-faces-in-the-crowd/

ついでにメモ.

顔が鮮明でカメラに近ければ、風景の中でそれらの位置を特定することは容易だ。しかし、個々の顔が小さな、グループ写真の場合はどうだろう?これが、私が思うに、ロボットにはより難しいのだ。

システムを使うと「エラーが半分に減り」、発見された顔の81%が本当の顔だった(「従来の手法では29から64%の発見率だった」)。例えばこの手法を使うと、携帯電話があなたと猫の顔を取り違えることはない。このシステムはまた、群衆の中の小さな顔を見つけ、よりよい人数の数え上げを行うことができる。

*1:AlphaGoにしても,ディープラーニング「だけ」で作ってるわけじゃない.基本的にはモンテカルロ囲碁で,それを作ってるのは人間だ.

*2:ロッコ問題と自動運転を絡めた問題のほとんどの正解がコレだよなあ.人間が正面にいれば人間を感知した時点で余裕を持って減速する.ブレーキをかけても止まれない距離まで近づいても気づかないとすれば,それは制御アルゴリズムやセンサーの欠陥. http://www.gizmodo.jp/2017/01/mit-moral-machine-self-driving-car.html http://wired.jp/2017/03/20/robocars-will-sometimes-kill/

*3:2車線の道路で前を走ってるバイクが転倒し、今走ってる右車線をライダーが,左車線をバイクが塞いだ場合は進路変更してバイクを撥ねるという選択肢はあるかもしれない.あまりにレアケース過ぎて,実装は経済的に難しいけど.

*4:後ろから衝突される可能性は除く.

*5:この部分こそが,ディープラーニングの活用で改善が期待される部分だ.

*6:砂漠じゃ雨は滅多に降らず,毎日が快晴.熱帯ではスコールはあっても,雪はつもらない.極寒の地では常に雪があっても,綺麗なパウダースノーでコントロールは楽.日本の日本海側みたいに0度付近になる豪雪地帯が一番厄介だ.

*7:自動運転車的には,信号のある十字路よりラウンドアバウトの方が遙かに難易度が高そうに見える.地上から見た画像だけで,「円の周囲を回り込んでくる」というのを認識しなければならないから.特に交通量の多い時に,タイミングを計って間に割り込むというのが難しいだろう.アイコンタクトも出来ないしな.