これはヒドイ「天才プログラマーが予測する「AIが導く未来」?

http://toyokeizai.net/articles/-/185678

読んでて,「えー,なんじゃこれ??」ってなる糞記事.さすがは東洋経済クオリティ.技術部門はド素人ぞろいというわけだ.

テクノロジー(テック)賢人へのインタビュー4回目は、AI(人工知能ベンチャー・UEIの清水亮社長。

いきなり不安が.

――AIの発展は、マシンラーニング(機械学習)とディープラーニング(深層学習)という2つの技術によるそうですが、この2つの違いが正直よくわかりません。


マシンラーニングっていうのは、統計的に最適な答えを見つけるのが主な目的です。たとえるなら乗換案内やカーナビ。あれはどの経路が一番短いかという最適化問題です。でもディープラーニングにとって、最適化はあんまり意味がない。

あれ,そうだっけ???

深層学習は、より深いレベルの自動化を行う、特殊な機械学習です。機械学習に伴う大きな課題の 1 つは、特徴抽出です。特徴抽出を行うには、見つけ出す特徴をプログラマーアルゴリズムに指示しなければなりません。これによって、アルゴリズムを使用して決定を下すことが可能になるのであり、アルゴリズムにロー・データを取り込むだけではほとんど成果は出ません。このことから、特徴抽出はプログラマーにかなりの負担をかけます。特に物体認識などの複雑な問題を扱っている場合、その負担は顕著です。このように、アルゴリズムの有効性がプログラマーのスキルによって大きく左右されるという問題に対処するのが、深層学習モデルです。深層学習モデルは、焦点とすべき正しい特徴を自己学習することが可能であり、プログラマーによる手助けをほとんど必要としないことから、人間による分析よりも信頼性の高い分析を行うことができます。

https://www.ibm.com/developerworks/jp/linux/library/l-machine-learning-deep-learning-trs/index.html

その関係を考えるとき、同心円で表すのが一番簡単でしょう。まず、最初に生まれたアイデアが「AI」です。これは、もっとも包括的な概念です。次に、「機械学習」が発展し、最後に「ディープラーニング」が登場しました。今日のAIの急速な成長を促すディープラーニングは、AIと機械学習に含まれています。

https://blogs.nvidia.co.jp/2016/08/09/whats-difference-artificial-intelligence-machine-learning-deep-learning-ai/

でいいんだよな.なんか自分が常識が反転してる異世界にでも迷い込んだのかと思ったわ.*1 *2

ところがディープラーニングを使うと、何が「態度が悪い」ことなのかもコンピュータで判断できるようになるんです。態度が悪い人ってこんな感じだよね、というコンセンサスがデータとして取れる。つまり、「態度が悪い」という指摘が、ある種客観的な指標でもって示せるわけですよ。

うーん.そこは違うと思うなあ.

善悪とか善し悪しの価値観はAIにはないよ.それをインプットするのも人間だ.たとえば

  • サービス残業しない奴は,協調性が無い.
  • 転勤の辞令に従わない奴は,愛社精神がたりない.
  • 残業代を請求する奴は,会社への反逆者だ.

というデータをインプットして学習させれば「そういう基準に基づいた態度の悪いヤツ」を検出するブラック企業人事部にとって都合の良い道具は造れるだろうが,そこに客観的価値観などというものは存在しない.*3


AlphaGoなんかだと最終的な勝ち負けの判定は囲碁のルールに基づいているから客観的で明確だけど,局面の善し悪しについては曖昧なものだ.*4人事評価なんて「勝ち負け」自体が曖昧で恣意的な物をインプットしても,やはり曖昧で恣意的な結論しか出てこないだろう.

――採用する前でも分かっちゃう?

分かっちゃう。そうすると、多分採用がめちゃくちゃ楽になるはずです。

結局、就職してうまくいかないのは、マッチングの不全なんです。マッチングがちゃんとうまくできていれば、企業も転職者・就活生もお互いハッピーなはず。なのに、今はマッチングがうまくいっていなくて、企業と個人がお互いだまし合っている。

この人は技術者じゃなくて夢想家だな.技術を理解してないし,現実が見えてない.

AIを使った人材マッチングサービスの話は既に動いているらしい.*5

しかしあくまでスキルやキャリアプランのマッチングであって,この人事部は嘘つきだとかこの社長はパワハラがヒドイとかこの人はOverqualifiedだとか,そんな情報はインプットされることがないからAIにだって分かりはしない.そういう情報の非対称性は,AIがどれだけ進歩したとしても何ら変わらないだろう.

http://b.hatena.ne.jp/entry/toyokeizai.net/articles/-/185678

  • id:elu_18 しょっぱなからやばないですか 「マシンラーニングっていうのは、統計的に最適な答えを見つけるのが主な目的です。たとえるなら乗換案内やカーナビ。」 https://t.co/7HXW0GwPKP
  • id:todesking 出オチやんけ
  • id:repose “マシンラーニングっていうのは、統計的に最適な答えを見つけるのが主な目的です。たとえるなら乗換案内やカーナビ。あれはどの経路が一番短いかという最適化問題です。”滅茶苦茶な事が書いてあって本当にすごい
  • id:anotokinosobaya 人事関連はデータ化・データ量など障壁があるのでは。

データ量が少ない上に,主観的/恣意的な評価の塊だからね.他企業はもちろんのこと,同じ企業内の別の部署とさえ比較は難しいかと.

Twitter


これからな?


「2人の元Google社員が、AIを用いて求職活動のマッチングを行う」

http://jp.techcrunch.com/2017/08/28/20170826two-ex-googlers-are-using-leap-ai-guaranteed-job-interviews-tech-companies/

「学び、協力し、統率力を発揮する能力は、強いアピールポイントとなりますが、それをインタビューから読み取るのは至難の業です。好奇心や動機なども、インタビュープロセスの中では多くを測ることはできません」と彼は付け加えた。

Leap.aiは18カ月前に設立され現在10人のスタッフを擁している。候補者のより完璧なキャリア志向を様々なデータを駆使して組み上げるが、使われるデータとしては例えば、就労履歴、様々な資格やスキルといった普通のものから、個人的興味、この先のキャリアに対する希望などまでが勘案される。そのプロセスの一部には、「理想」の雇用主と自身の理想とする役割のマッピングも含まれる。

そこからシステムは、DropboxUberなどを含む(Leap.aiの常連客である)雇用者側と、求職者をマッチングする。求職者が働くことを熱望する候補の会社の名前を2つ挙げて貰うことで、Leap.aiは少なくとも1つの企業とのインタビューは保証できると考えている(特に希望対象がスタートアップでGoogleのような巨大企業ではなかった場合)。

なぜなら、企業は自身の文化に合った候補者に本当に価値を置いていて、財務的利益を超えて彼らを採用する意欲があるからだ、とLiuは説明する。

同社の野望は単に雇用を支援するだけではなく、LiuとZhouがGoogleに参加していたときのような、メンターシップを再現することも考えている。すなわち、若い被雇用者たちが、キャリアゴールを設定しその野望を達成するためにステージからステージへの移動を描き出すことを助けるということだ。それは現在の会社の中での新しい役割かもしれないし、どこか外へ出て実現されるものかもしれない。

*1:IT業界では良くある話.

*2:Twitterとか東洋経済のコメント見てると,分かりやすかったとか絶賛するコメントもあるのよね.まるで憂鬱本のようだ.歴史は繰り返すか.

*3:むしろ分かるのは,「この上司が理想とする部下に求める性質」だと思う.部下の態度の善し悪しではなく,上司の心の中にある「色眼鏡」が白日の下にさらされるだけだ.

*4:たしか初期値は「最終的に勝った側だと良い局面と見なす」ってしたんじゃなかったかな.局面そのものを見て判断してるのではなく,人間の棋士が打った結果をそのまま利用している.

*5:現在の転職サイトでも半自動のマッチングサービスはあるけれど,Javaと上流工程スキルにチェックがついてれば紹介するとか,年齢が上限30歳までだけどこの人は31歳だからマッチしないとか,そういう単純なルールで運用されていて,お世辞にも知的ではないようだ.