「汎用的な技術力」という幻想

炎上マーケティングに,あえて吊られてみる.

技能にはその会社で通用しない会社固有のものと、世間一般で通用する汎用性の高いものとがあります。エンジニアのスキルはそのほとんどが特定の会社でしか通用しない固有のスキルではなく、他の会社に行っても通用する汎用性のあるスキルとなります。

それを言って良いのは,あなたの会社で採用している技術が,常にメインストリームのもののみである時だけだと思う.COBOLVBのように古い技術や,逆に最先端の技術を使っている場合はこの限りではない.*1


基本は需要と供給のバランスなので,汎用技術でも陳腐化すれば価値はないし,最先端技術でも求人がなければ金にならん.


たとえば古いバージョンの言語やライブラリ,フレームワークを使っている場合,それも「汎用性のあるスキル」と言えるだろうか?単純にマイナー技術だったら?*2

もし金を出さんというのなら,レガシーシステムの保守なんて,誰もやらなくなっちゃうよ.


最近だと、三菱電機で自殺した人がやらされていたのが,COBOLFortran,そしてCUDAだった.これらの個々の技術については汎用だけど,このセットとなると極めて特殊な用途限定だろう.
CUDA C プロフェッショナル プログラミング (impress top gear) Fortran90/95プログラミング

これって純粋に会社のためだよね.

会社に必用だからやらされていたのだろうけど,これも他社でも通用する汎用技術と言えるだろうか.


他にも日本企業の好きなフルスタック幻想.フロントエンドからバックエンドまで全部やってくれる便利な人っていうけれど,その言語とDBとライブラリとフレームワークで,しかもそのバージョンでの組み合わせで利用している会社は,実は日本でもその一社しかないかもしれない.*3 それも「汎用技術」と切って捨てて良いのだろうか.

FortranとCUDAはそれぞれが汎用技術だとしても,この組み合わせとなるとさらに少なくはならないか.ではFortranの学習コストは誰が負担すべきだろう?

「何でもできるITエンジニア」は、目指すだけ損かも

複数の分野をカバーするために、複数の専門家を同時に雇うだけのお金をかけたくないというモチベーションとして、「何でもできるITエンジニア」を雇いたいという安易な発想も昔よりも増えている印象で、「安く働いてくれるけど能力が凄く高い人」を求めているだけだったりもするのです。 「ひとりで何でもできる」というのは「お金を出したくないのでひとりでやってくれると都合が良い」と考えているだけだろうと、突っ込みたくなるわけです。

色々できればできたとしても、さほど感謝されないという悲しい状況が発生することもありがちです。ITを全く知らない人にとっては、ITの中で枝分かれする専門分野を知らないので、そもそもIT関連のことは全て知っていて欲しいと思うわけで、「ひとりで何でもできる」という発想を持たずに、「ITエンジニアだったら全部できるよね」ぐらいの無茶を言うこともあります。

http://www.geekpage.jp/blog/?id=2017-7-13-2

http://b.hatena.ne.jp/entry/s/axia.co.jp/2017-09-29

  • id:periodict 教育費用を報酬から捻出するという発想が、例え話だとしてもダメ過ぎ。教育完了後はむしろ昇給して、正当に評価するとともに囲い込むべき。それでペイできないなら、それは本当に必要な教育ではなかったということ
  • id:fumisan 辞められたくなかったら給与を2倍払えばいいし、中途で採用したければ2倍払えばいい。 無能だな
  • id:ledsun わかる。弊社、新卒を採用して4年間ぐらい教育して、育ったら転職市場に放流するのを十年ぐらい続けているので、大変よくわかる。(年収500万の中途採るには、短期的に150万位必要なので、それはそれで難しいの)
  • id:ya--mada 1.教育は奨励だけして本人に任せる。2.人材は奪えるが当たり外れがある。3.転職市場にリリースされる人材の評価はvery difficult。
  • id:koheikimura 企業が教育コストを払わず他所から奪い合うようになると、エンジニアの待遇がよくなるので個人的には歓迎する。そうなるとブートキャンプ市場が大きくなって、教育コストは本人が払うことになると思う。

「奪い合うから上がる」のではなく,「奪われたくなくて引き留める」から上がるのでは?見た目では引き抜きの時に上がるみたいに見えるだけで.

それにそういう会社は

給料上げるくらいなら奪われた方がまし → 優秀になったら奪われるから能力はほどほどの方が良い → 生かさず殺さず飼い殺しウマー

という思想へと繋がりやすいので危険.

  • id:stealthinu 経済合理性を考えるとこうなるのではという話。ただ引き抜きに応じてくれる会社になる必要があると。でもこれ特別な考えって言うより今のWeb系会社がやってる方針から逆算して考えたことじゃないのかな?

でも実際は学歴不問・未経験者歓迎で,年齢30歳 or 35歳以下という現実.純粋にスキルが評価されているのなら,年齢制限も新卒偏重も意味がなくなるはずだが?

  • id:TakamoriTarou 素朴な経済感だなぁ。とりあえず人材に関しては人権があるんで、純粋競争は絶対に作れないと思う。相当限定的なケースでしか成立しなさそう
  • id:m4fg ITスキルはすぐに陳腐化するので常に教育していないとお荷物になるのでは。使い捨てですかそうですか。

学習は自分でやればいいんだけど,えてして陳腐化して主流から外れた技術だろうと古いバージョンだろうと,使っている限りサポートを続ける必用があったりするんだがね.IE6専用のアプリとかVB6なんて典型的な例.Javaでも,とっくに開発終了したようなライブラリとか未だに使ってたり,古い書き方をしてたりすると,保守がすげー面倒だったりする.

  • id:kenchan3 教育コストは自腹でやると言うのが書かれないと炎上ネタやな。何十万円もするトレーニングを自腹で受けるITエンジニアもUSでは多いみたいだし。 って言うかIT系エンジニアを只のエンジニアと略さないでほしい

そら給料が文字通り桁違いやもん.薄給激務の代名詞で7K職種の日本IT業界をなめたらあかん.

*1:GooglePagerankみたいに,そこでしか使ってない技術というのも往々にしてある.AlphaGoが出るまではDQNDeep Learningもマイナー技術だ.
Google PageRankの数理 ―最強検索エンジンのランキング手法を求めて― Google's PageRank and Beyond: The Science of Search Engine Rankings (English Edition)

*2:PerlPythonRubyかはたまたPHPか,将来性があるのはどれ?」という質問に,いったい誰が明確な答を返せるだろう.ほんの3年前ならDeep learningも,全く需要のない技術の一つだった.古い技術雑誌とか読めば,今では消え去った技術とか出てきそう.OS/2とかBeOSとか.FreeBSDなんかまだマシな方か?

*3:特にJavaScript界隈は,こういうジョークがあるくらいだから. http://kikuchi1201.hateblo.jp/entry/2016/10/26/172404