バイセンテニアル=マン

聖者の行進 (創元SF文庫)

聖者の行進 (創元SF文庫)

に収録の「バイセンテニアルマン」がオリジナル.

アンドリューNDR114 (創元SF文庫)

アンドリューNDR114 (創元SF文庫)

が再構成した長編版の「バイセンテニアルマン」.

それを原作にした映画がこれ.

....のはずなんだけどねえ....
どうしてSF小説を原作にすると,こうも似ても似つかない駄作になるのだろう?ロボット三原則さえも満足に出てこないとは,とてもアシモフのロボット物を原作にしているとは思えない.「ぼくは君が嫌いだ.」「ただのガラクタだ.」などというセリフは,ロボット三原則に基づくロボットでは絶対にありえない*1.これを作った人はアシモフのロボット物を一つでも読んだとは思えんな.リトル=ミスと娘とを間違えるのも変だ.たしかに人間的な感情などは必ずしも理解できないが*2,知識に関してはかなり豊富でそういうことを間違えたりはしない*3.「話し相手が欲しい」などというのもおかしい*4.ツッコミを入れはじめたらキリがない.
「感動的なヒューマンドラマ」なのかもしれないけど,少なくともアシモフのロボット物じゃない.バイセンテニアル=マンでは,アンドリューはあくまでロボット三原則に従う陽電子脳ロボットであり,それは最初から最後まで変わらない.

*1:ロボット三原則に基づくロボットは,いわば本能的に人間に奉仕する博愛主義者である.ロボットの視点からは,全ての人間は「ご主人様」であり「愛すべき存在」になる.また人間に対する「悪口」や人間の作品に対する「批判」は人間に対して間接的に危害を加える行為であるため,ロボット三原則の第一条に反する.たとえ子供の落書きのような汚い絵であっても「こんな下手くそな絵は見たこと無い」などと傷つけるようなことは言わず,「とても個性的で,あなたの人柄が現れている.私はとても好きです.」などと婉曲的な表現で誉めるなどする.これはたとえ凶悪な殺人鬼を相手にする場合でさえも変わらない.

*2:例えば苦痛や快感,美味しい/不味いなどの味覚,自己中心的な行いや妬みや嫉妬などの人間的感情は,知識としては知っていても理解するのは困難だろう.ましてや破壊衝動や殺意となると,理解した時点で第一条違反となりメンタル=フリーズ=アウトしかねない.

*3:そんな初歩的な知識さえ持っていないロボットだと,ロボット三原則があっても意図せずに人間を傷つける恐れが出てきてしまう.そのような危険なロボットだと家庭用には使えず.使用は工場や研究所の様な場所に限定することになるだろう.

*4:ロボットは人間の命令に服従しなければならないし,ある意味では服従したいという本能をもっている.基本的に人間に対して要求したり,命令したりはしない.特に相手がそれを望んでいない場合に,話し相手になってくれと要求する行為は第一条に違反しかねない.