『頭がよい人』論

http://d.hatena.ne.jp/lastline/20060727
なぜか知らないが,奇妙な方向に話が展開しているようだ.

お利口(clever)と賢い(wise)*1

頭の良い人といると疲れる。に関してkanoseさんが、「頭が良い人」のイメージにて分析してるんですが、この場合、確かに「頭の良い人」=「自分にとって都合良い人」だよね。そして、結局は「コミュニケーション能力の高い人」=「頭の良い人」へと帰着してる。つまりは、口先だけの世渡り名人が頭の良い人って事になるのだで、なんか釈然としない。

概ね同意.
この「(馬鹿にでも分かるように)分かりやすく説明できる人のこと」という定義を出している人達は,言うまでもなくおそらく頭が悪い.

  1. 頭がいい人が話している内容は,俺達には理解できない.
  2. 理解できないのは(自分たちの頭が悪いせいではなく),なんか知らないけど「頭が良い人」のせいだ.
  3. 俺達にも分かるように説明しろ.
  4. 俺達に理解できるように説明できたら,おまえらのことを賢いと認めてやる.さもなくば認めない.

的な論理が見え隠れしている.

しかしながら,世の中には凡人にはその片鱗を理解することさえも困難な問題というのが存在する.そのような難問を「理解し解決する能力を持つ人」は,まぎれもなく『頭の良い人』だろう.

そしてその『頭の良い人』が,その難問を馬鹿に説明できないというだけで「(不当に)低く評価されるべきだ」という主張には賛同しかねる.そもそもそのような本当の難問を馬鹿にも分かるように説明するなど,この世の誰にもできないのだから.

本当の意味で頭の良い人は、頭の悪い人の思考をトレースできるはず。

それはそうかもしれないが,その労力を『頭の良い人』が負担すべきだとは思わない.そんなのは時間の無駄だから.


もちろん「頭の良いフリをしている人」は別問題ですよ*2.そして「頭の良い人」と「頭の良いフリをしている人」との区別ができないのも,「頭の悪い人」の特徴だろうな.

私にとって「頭がいい」人というのは、「誰も質問していなかった質問をする人」だ。「誰も答えてなかった質問に答える」も悪くないが、前者には劣る。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50576619.html

私の意見は逆だな.

誰も考えなかった質問を出すだけなら,馬鹿にもできる.誰も取り合わないような無価値な質問を次々に出していけばいいだけだ.逆に,誰にも答えられなかった問題*3に答えるのは,そう容易ではない.


まれにだが,誰も考えなかった質問を出すことが意義のある場合もある.誰もがそれを当然と思い疑問を差し挟まなかった常識に対し,その常識に対して疑念を抱くことが答に繋がった場合がそうだ.

たとえば,その昔は誰もが時間は一定で流れており,時間の流れは「定数」であることに疑問を持たなかった.しかし「もし,時間の流れが一定でなければどうなるか?」という疑問を持つことができ,それを使って「相対性理論」という「光速度は定数である」という観測結果に対する答を示せれば,この疑問には価値がある.しかし答を示せない疑問には,ほとんど何の意味もない.

「GaN系半導体青色LEDは作れるか?」という疑問を持っただけなら価値はない*4.「GaN系半導体青色LEDを作った」ことに意義がある.疑問を持っただけでそれ以上行動せずに答を見いだせなかった人が,自分の信念を貫いて答を得た人より偉いわけがあるまい.

*1:clever:quick to understand, learn, and devise or apply ideas; intelligent:
wise:having or showing experience, knowledge, and good judgement
(NODE)

*2:しかして厄介なことに,「頭の良いフリをしている人」の話している内容は「難しいことを簡単に説明している」ように見えて,実は「簡単なことを簡単に説明している」や「間違ったことを,さも難しいことのように見せかけている」だけだったりする.だから「頭の良いフリをしている人」は「頭の悪い人」からの受けが意外にいい.だからこそ,そういう人は何時までたっても頭が悪いままなのかもしれないな.

*3:「誰も答えなかった問題」ではない.

*4:「GaN系半導体で,半重力を発生させることができるか?」は「誰も考えつかなかった問題」かもしれない.しかしこれは同時に無価値な,「誰も答える気にならない」問題でもある.