なぜ一意なIDを付けなかったのか?
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMIT0z000005062007
http://slashdot.jp/articles/07/06/09/0517234.shtml
年金記録漏れ問題について.
マスコミの報道などを見てみると、1997年に基礎年金番号を導入した際に、それまでいくつかの年金番号を持つ人の記録が、住所、氏名、生年月日等の不一致で一本化されず、国民年金と厚生年金とで合計5095万件が残ったものであるという。
なんとなく基礎年金番号導入が、宙に浮いたきっかけであるかのような誤解を生む表現が多いように感じる。
マスコミとしては,理屈も分からずに「国民総背番号制」を批判してきた手前、「国民総背番号制にしなかったことが原因だ」なんて口が裂けても言えないのでは。
しかし、宙に浮いてしまう条件はそもそも30年近く前から内包されてきた。社会保険庁が紙の記録を電子化し始めたのは1979年。当時、漢字入力は技術的に初期段階であったため、名前や住所はカタカナ入力を採用した。以来、氏名の読み方や住所の確認を厳密にせず、大量のデータをコンピューター化したことが不一致を生んだ原因だ。いったん誤表記された氏名や住所は、その後漢字化しても、すべてが正確には表記されない。
残念だけど名前は一意ではなく,漢字表記でも同姓同名の別人はいる。漢字が異なっているけど読み方は同じ人ならもっと多いだろう.逆に漢字が同じだけど読み方の異なる別人だっているかもしれない.しかも結婚や離婚などで名字が変わるのは珍しくないときている.もちろん誤入力もありえるし,さらに厄介なことにパリティビットさえないので誤入力を検出するのはまず不可能だ。
こんなあてにならないものをコンピューター処理のためのIDに使うというのは、正気の沙汰ではない.もちろん頻繁に変更されうる電話番号や住所も論外です.
法律にはあんまり詳しくないのだが,米国にはSocial Security number*1 *2 というものがあり,これが事実上の国民ID*3として機能しているという.Wikipediaを見ると,最初に発行されたのは1936年.なぜ日本では1979年の段階でIDを導入しなかったのか,まったく理解に苦しむ.*4
追記:
http://slashdot.jp/articles/07/06/10/1221254.shtml
http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/405950
- 今回の年金行方不明事件では、申請主義の年金制度がそもそも国民皆保険の理念にそぐわないシステムであることを露呈したと思う。転職したり、住所が変わるたびに、市役所や電力会社だけではなく、社会保険庁に報告してやらないと年金がつかない、というシステムが問題だと思う。
- 社会的に立場の弱い人ほど、未納期間や行方不明になりやすい納入記録をつくりやすくなり、本来、高齢になったときの経済弱者を発生させないシステムである公的年金が、社会的強者に手厚く、社会的弱者に手薄なシステムになっている。
http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2007/06/62_7bad.html
*1:http://en.wikipedia.org/wiki/Social_security_number
*2:http://www.kenkyuu.net/guide-3-02.html
*3:de facto national identification number
*4:ここまで無茶苦茶だと,自分の方がなにか根本的な間違いをしでかしているんじゃないかと,逆に不安になる.