IT業界終了のお知らせ

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090105AT3S2604404012009.html
http://d.hatena.ne.jp/masayang/20090104/1231108055 経由.

http://slashdot.jp/yro/article.pl?sid=09/01/05/0414240

冗談ならいいけれど,そうでないなら新年そうそう,最低最悪なビッグニュースだ.

「特許、ソフトも保護対象 大幅な法改正で明確に」

特許庁特許法の大幅見直しに向けた検討に入る。「モノ」が対象だった特許の保護対象にソフトウエアなどの無形資産を追加。技術革新を促すため、企業や大学が持つ特許を開放する際のルールを整え、相互に活用しやすい環境を整備する。インターネットの普及など経済の構造変化に対応する一方で、日本企業の国際競争力を高める狙い。企業の知的財産戦略にも大きな影響を与えそうだ。

特許庁は正気か?

ソフトウエア特許がどれほど非難囂々だったのか知らないのだろうか.


いったい誰の横槍かは知らないけれど*1,いまさらソフトウエア特許など認められても誰も嬉しくないぞ.国際競争力が高まるどころか,不景気に加えて特許庁のダブルパンチでIT業界が破滅する可能性の方が高いだろう.

ここまで特定業界だけを狙い打ちにした施策を出してくるとは,特許庁はIT業界に一体なんの恨みがあるのだろう.

*2

ソフトウエア特許に反対することと,防衛特許を出すこととは別の問題だ*3.むしろ使うことのない非生産的な防衛特許を出し続けなければならないことが,ソフトウエア特許の持つ問題の一つになっている.

主に問題視されているのは特許の名に値しないものが特許として成立することで,社会全体のリスクが増大することにある.多くの場合はソフトウエア特許は取るだけで使われることはまずないが,例外的に使われることもある.たとえばレメルソン特許?*4やamazonのワンクリック特許などが有名だろう.

現在の法制度の元では,多くの企業はこのリスクを回避するためだけに防衛特許を出さざるを得ない.しかもその企業自身が取得した特許を行使することは滅多になく,行使すれば一般消費者の信頼を失い手痛い打撃を受ける恐れがある.

ソフトウエア特許で利益を得るのは(主に米国の)弁護士*5と故レメルソン氏のような自称個人発明家くらいのものだろう.

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20060401/p1

特許ビジネスはどこへ行くのか―IT社会の落とし穴

特許ビジネスはどこへ行くのか―IT社会の落とし穴

http://slashdot.jp/yro/article.pl?sid=03/08/27/1730222

新規性の話はハードウエアにおいても難しい.

しかしソフトウエアにおいてはそれが持つ「本質的な複雑さ」ゆえに,その問題はさらに複雑になる.

Garbage Collection: Algorithms for Automatic Dynamic Memory Management

Garbage Collection: Algorithms for Automatic Dynamic Memory Management

とりあえず特許庁の審査官は,この本を一冊読んで,どのアルゴリズムがどのアルゴリズムとどのように異なって,どの部分に新規性があってどの部分にないか示してもらいたい.*3

具体的な話はそれからだ.

*1:また天下り先確保が目的なのかね.

*2:よくみると,この時から既に10年以上経っているんですね.問題提起され,既に数多くの問題を抱えていることが知られるようになり,ソフトウエア特許推進派であった米国でさえも方向転換しはじめているというのに,この期に及んで日本の特許庁がこんなことを始めた理由を聞きたいものだ.このままだとIT業界潰しが目的だとしか思えないぞ.

*3:こんなもん,専門家でもできないと思うよ.論文を書く時にどれだけ苦労すると思ってるんだろ.