「地震の時は水をためろ」はウソ

http://www.satonao.com/column/variety/jishin.html
これにはかなり迷惑なウソも含まれているので,絶対に真似しないように.

こういう救いようがない馬鹿は実に困る.
こんなものは、裏ワザでも何でもない。単純に迷惑な話だ。

新幹線には、急病人、国会議員などのために空席をもうけてある
鉄道詳しい方には一般的のようですが、新幹線には指定席満席の状態でも4席程度緊急用空席がもうけてあることが多いです。
ちょっとずるいですが、この座席に座ってしまうというのがレシピのポイントです。

鉄道系システムに携わってた俺からハッキリ言わせてもらう。
この「裏ワザ」を喜々として実行するアホのためにシステムが過去に改修された。

http://d.hatena.ne.jp/dbfireball/20100104/1262534488

ここでの「地震対策(笑)」は,「新幹線で座る裏技」と同レベルの発想なんだよね.「自分だけよければいいじゃん」というのを裏技と思ってるけど,それをみんながやったら社会システムが破綻するんだよ.少しは頭を使えっての.

「まず水をためろ!」これがポイント

揺れがおさまったら、まず水。これは覚えておいてください。
特にマンションに住んでいる方、揺れ終わったらすぐに、風呂、バケツ、シンク、桶…なんでもいいですから出来る限り水を貯めましょう。揺れてすぐに水道管が壊れて水が出なくなるけど、マンションだったら屋上の貯水槽にまだ水がある。それを貯めるんですね。
火を消すためではありません。飲用でも料理用でもありません。「トイレ用」です。いやホントこれが死活問題になります。

こういうクソ迷惑なことは絶対にするな.

水タンクの容量がわかってんのかと.断水時にみんなが風呂桶一杯に水をためればすぐに空になる.

「このボロボロなとこでさえ大丈夫だったということは、たいしたことはないんだろう」
と判断、もう一回眠った。
 いつものように七時に起きたMさんは、断水に気づかないまま習慣になっている朝シャワーを浴びた。きれい好きのMさんがゆうゆうと二十分浴びたあと、二人目の途中でタンクにあった水が切れ、そのあと二ヶ月、水がこなかった。

http://blog.zaq.ne.jp/cinecolt/article/22/

本当に断水していれば,その飲料水が生命線だ.トイレが困るのは事実だが,それで死んだ奴はいない.貴重な飲料水をクソを流すのになんか使うな.水は確かに重要だが,そんなことをするなら普段から飲料水をためておけ.一人当たり2Lペットボトル1〜2本置いておくだけでも随分違う.風呂に入った後の風呂桶に水を張っておけば雑用水になら十分使える.*1

阪神淡路大震災の時は冬場なこともあって飲料水の不足はそれほど切実ではなかったが,夏場だと問題は遥かに深刻だ.場合によっては命に関わるほどの.また水は飲料水だけでなく,料理にも必要だ.*2水が無ければ米を炊くこともできない.*3トイレに水を流したせいで米があるのに飢えで苦しみたいとは誰も思うまい?優先順位は「飲料水 > 料理 >> 生活/雑用」だということを頭に叩きこんでおこう.*4

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ちなみに水くみは重労働.水1L≒1kgなので,車輪付きというのは実に理に適っている.それでもエレベーターの止まったマンションの上まで持ち上げるのは,体力のある若者でも辛いだろうな.*5

高層マンションの上の方に住んでいる方はマジやばい。ご老人や身体が不自由な方、体力のない方など、まじ死活問題です。

そういう人は避難所暮らしをしますよ.エレベータも水も止まってるのに,マンションの10階で暮らせやしないって.

でなければ近くの公園とかに出かけていって公共の水道から出来るだけ多く水をもらっておくことです。

最近は防災用の飲料水タンクを備えた公園もある.そんなものをトイレに流すな.

市では、災害時に地域の防災拠点となる公園(地域防災公園)に、備蓄倉庫と飲料水兼用の耐震性貯水槽(100m3)の整備を進めており、既に7か所整備済みです。これらの備蓄倉庫及び避難所となる小・中学校には、食料45000食、毛布15000枚、ビニールシート10000枚などの物資・食料や救助用の資機材を備蓄しています。

http://www.city.akashi.hyogo.jp/soumu/bousai_ka/g2_bousai/bousai.html

google:災害用 マンホール トイレ ,*6

そんなの利己主義だと思う方。地震後の辛さを知らないからそんなこと言えるんです。地震は戦争。まず自分の分を確保してから分けてあげればいいのです。確保してから「水あります」と貼紙した家がありました。正しい態度です。

全然正しくねえよ.

戦争だったら,私がお前を殺しても罪に問われないけど,それでもいいの?死ぬならあんた一人で死ね.私は多少不便でもみんなと生き残る道を選ぶ.それが結局は自分が生き残れる可能性を最大化できるのだ.*7

羅生門・鼻 (新潮文庫)

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電話はすぐに。最低限の人だけに

これも大迷惑だな.輻輳って単語も知らないのか.電話は絶対に使うな.

最低限=0人が鉄則.消防でさえもパンクする.多少の火災は自力で消火する.骨折くらいなら自分で手当てする.そのくらいの心構えが必要.それ以外での電話利用など全く論外.

地震直後は消防や自衛隊の出動要請,被害状況の確保等々のためにのみ使うべきです.
今だと災害通報用の掲示板が便利.ネットだと速度が遅くなっても輻輳の問題は比較的小さい.
http://www.nttdocomo.co.jp/info/disaster/


コメントより追記

災害用伝言ダイヤル 操作方法
http://506506.ntt.com/service/saigai/details.html
議論とは関係ないですが、電話だけで使える災害用ダイヤルがあるので、参考まで。

車で脱出するなら決断は早いほどいいです(ただし道が壊れたりビルが倒れたりしていて脱出できないことも多い)

同様に車も使ってはダメ.自分の近所では大丈夫に見えても途中で大渋滞に巻き込まれたり,通行止めで身動き取れなくなったりする.電話回線の輻輳と同じ理屈.*8 *9 こういう利己的な人間により発生した何十キロにも及ぶ大渋滞が,救助活動の大きな障害になったのは有名な話.自衛隊も警察も消防も,全部同じ道路を移動してるということを忘れてはおるまいか?

本当にこいつは性根の腐ったクソ馬鹿野郎としか言いようがない.


その他.

  1. 「まず火を消せ!」のウソ
  2. 屋内でも靴を履く
  3. 家を離れるときは、必ずブレーカーを落とす
  4. 街を行くときは、電線と地割れに注意

1,「火を消せ」自体が既に俗説だと思う.特に天ぷら油や熱湯は非常に危険.*10ガスの場合は自動的に止まるのでほっといても大丈夫.火を消すなら揺れが収まってから.*11



2は正解.スリッパでも可.靴は玄関にしかないことが多いから,枕元にスリッパ(と非常灯)を常備するのも良い習慣.手袋と,冬場は防寒着も忘れずに

ELPA 懐中電灯付LEDセンサーライト 非常灯 TDH-300

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「15時間充電で連続約6時間点灯」か.技術は進歩したな−.


3は今では常識だが当時はあまり知られて折らず,意外な盲点だった.気がついたらOFFにしておいた方が良いが,これが問題になるのは比較的被害の小さい地域のみ.本当に被害の大きな地域だと,どうせい1日や2日で復旧することはないから必死になるほどのもんでもない.熱帯魚向けのヒーターが意外に危険との噂.*12
改めて調べてみると,改良もされているようだね.

阪神淡路大震災の教訓から「観賞魚用ヒーター」が特定電気用品に追加されました。
当時も、26℃固定のオートヒーターやヒーターと温度センサーが一体型のセミオートヒーターには空焚き防止装置や温度ヒューズが内蔵されていました。火災を引き起こしたのは、サーモユニットとヒーターが別々のセパレート型でした。当時のサーモユニットに接続するセパレートヒーターには温度ヒューズの内蔵が強制されていないがための不幸でした。
***現在発売されている観賞魚用ヒーターにはフルオートからセパレートまで総てに空焚き防止温度フューズが内蔵されています。(注:海外から個人輸入したものなどは対象外です。)
(中略)
現在、電力会社では、地震などの広域停電が発生した場合、再送電は立会いの下、メガリング(絶縁測定:漏電検査)の後で行うように内規を変更しています。このため、新潟などの大地震では再送電による火災の発生は激減しています。

http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3738418.html

いずれにせよ,旧式の熱帯魚用ヒーターを今でも使ってる人は買い換えた方が良いかも.


4はどーでもいい.言われなくたって普通は気にする.ちなみに地割れがあると普通の車では乗り越えられない.無理に乗り越えて腹を打つと,それが原因で壊れる場合もある.民間用の乗用車の下側には装甲板などついていないからね.

その他備品等

停電生活が長期にわたることもあるが乾電池は品薄になりやすい.自分の住んでる地域が停電でも,少し離れた所には電気が通っていたり,住んでる所だけは平気だけど街灯が修理されてないので懐中電灯が必要だったりということもあるので,ニッケル水素などの充電可能な電池が便利な時もある.*13 *14

SANYO NEW eneloop 急速充電器セット(単3形4個セット) N-TGR01AS

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停電時の情報収集も,乾電池で数十時間駆動できるラジオが最強.入手し易い単三電池使用で,安物でもいいからスピーカー付きが良い.不安を紛らわす点でもね.

SONY コンパクトラジオ ICF-50V(W)

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パナソニック ポケットラジオ シルバー RF-P70-S

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ELPA AM/FMコンパクトラジオ ER-C25F

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ただし一家に一台以下でいいし命に関わるものではないので,無いなら無いで構わない.


懐中電灯も必要だが,高級品は必要なく安物で十分.ただし一人一つ以上で,予備電池も必要になる.100均で売ってるようなのでいいので家族の人数分くらいは欲しい.

普通はそれだけの数を備蓄している家庭はないので,個数の方が圧倒的に不足することが多い.電池はなるべく入手し易いものにする.ラジオや,TVリモコン,デジカメなどと共通化しておくと,いざという時に使い回しできるし,古いものから順に消費できるので無駄がない.

ジェントス ジェントスリゲル・トーチ GTR-031T

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ホイッスルは災害用として名前は出てくるが,実際に使用することは多くはないだろう.救助活動を指揮する事でもない限りは滅多に役に立つとは思えないが,嵩張るものではないし値段も手頃なので,気になる人は持っておいてもいいかも.女性や子供の場合は念のため防犯ブザーも.

A&F(エイアンドエフ) エマージェンシーホイッスル 12680001

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家具の固定はやっておいた方がよいことの一つが,大きな地震ではまあ気休め程度だ.本当に大きな被害がでる時は壁に固定しても壁が剥がれるし,冷蔵庫や電子レンジだって文字通り飛んでくる.

阪神大震災でこんなに死者が多かったのは、寝室での家具による圧死がかなり多かったのもあると言われています

http://www.satonao.com/column/variety/jishin2.html

あれそうだっけ?*15

むしろ倒壊した建物の下敷きになった例の方が多いと思うけど.布団もかぶってるし,大人だとタンスの下敷きになったくらいじゃ怪我もしません.家具の下敷きになって死のうと思うと,冷蔵庫やピアノくらいいるんじゃないかな.でも寝室に冷蔵庫を設置している人ってどれだけいます?普通は台所だよねと.*16

ちなみに阪神淡路大震災で圧死の比率が高いのは,あれが起こったのが早朝だったから.これが昼間だと火災での焼死や交通事故,階段やベランダからの転落,熱湯を被って大火傷等の比率が(というか絶対数が)高くなるだろう.

  • id:yasyas 夙川は神戸じゃないだろうとつっこんでおく。
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.satonao.com/archives/2010/01/15.html

これで分かった気がする.

この人は被害の小さい地域に住んでたから大震災については未経験で,何も知らないんだ.被害の小さい地域ではこのくらい自分勝手に行動しても,白い目で見られるだけで放置される.みんな忙しいから,構って上げる余裕はない.*17

本当の災害にこんな奴がいると被害が増えるので,速やかに排除するのが吉.

田辺聖子先生推薦の大震災ノンフィクション

目次http://blog.zaq.ne.jp/cinecolt/article/270/

大震災名言録―次の災害を乗り越えるための知恵

大震災名言録―次の災害を乗り越えるための知恵

そうそう.だいたい,こんな雰囲気.

こっちの方がずっと参考になる.*18

*1:風呂釜で炊くタイプの場合は.給湯器から入れるタイプだとこれは無理だな.

*2:実は治療にも必要.透析患者が定期的な治療が必要なのだが,人工透析には大量の水が必要になる.災害時には用意できるはずもなく,透析患者が命の危険にさらされていたというのがニュースになっていた.

*3:「米さえあれば炊き出しができる」という発現で非難された知事か何かがいたっけか.

*4:災害時に水洗トイレが使えなくなり,非常に不便だったというのはたしかにある.避難所となった学校でもプールの水で流したりしていた.その反省に基づいて,水が無くても使えるトイレが整備されつつはある.もちろん不便は強いられるが,それは我慢するしかあるまい.

*5:20Lで20kg.エコノミークラスの荷物が20kgまでだったか.海外旅行の荷物で満杯になったスーツケースなみの重さがある荷物を持って近所の給水場から延々歩いてさらに階段を登るのが,どれほど大変か言うまでもあるまい.

*6: マンホールトイレは阪神淡路大震災の時に,被災者が手作りで作ったものが始まり.単純で効果的ということがマスコミを通じて紹介され,震災後はこのようなメーカー製のものも作られ,防災用として自治体に配備されるようになった.

*7:というか,戦争時でも水洗便所を使うのを贅沢とは思わないのね.

*8:災害時の乗り物は自転車が最強.それさえもパンクしたら自分で修理できる人でないと心許ない.オフロード用のバイクも可だが,ガソリンが切れたらお荷物.自動車は段差や渋滞があったらだめだし,倒れたコンクリート壁も乗り越えられない.論外もいいとこ.

*9:「いっぽうで、世話役をやったTさんを感激させたのは、「スピードをこよなく愛するバイク好きの集団」 だったという。
静岡から来たという彼らは最初、どう見ても、「ヤジウマに来たついでに何かやってみるかな」という感じがありありだった。彼らは炊き出し、マキ割りを頼んでも絶対にやらなかったが、代わりに、雨でTさんが、「今日はもうやめまひょ」と言っても伝令、物資輸送など、バイク仕事は休まず見つけてでもやっていた。
彼らのおかげで半壊の家でなんとか暮らす身障者にも水や食べ物、情報を届けることができ、相当数の人が助けられた。」http://blog.zaq.ne.jp/cinecolt/article/121/

*10:災害時に注意しておきたいのは,病院もパンクするということ.普段なら適切な治療をうけて助かる程度の『大火傷』でも,病院への搬送が間に合わず,また到着しても設備や職員の不足で十分な治療を受けられずにお亡くなりになるというのはあり得る話.可能な限り自分の身は自分で守るべし.

*11:そういうガスメーターだと自動的には再開しないので,ガスメーターのボタンを押してリセットする必要がある.http://home.tokyo-gas.co.jp/userguide/anzen/meter/reset/index.html

*12:通常のヒーターなら転倒時に自動的にOFFになる安全装置くらいある.

*13:当時はニッカド電池だったかな.メモリー効果の問題があって,使いにくかった.

*14:その後,東日本大震災が起こって首都圏で長期的な輪番停電というeneloopが大活躍できる事態が起こるとは,コレを書いていた時には夢にも思わなかった.

*15:死因は「窒息・圧死 3,979 (72.57)」.ただし,家具によるとは書いてない.普通は建物の倒壊だよね. http://web.pref.hyogo.jp/pa20/pa20_000000016.html

*16:補足しておくと,老人や乳幼児には十分危険.「私の目の前で子供(幼児か赤ん坊か忘れた)が重い家具(本棚か何か)の下敷きになって死んでしまった.あの時,私と寝る場所が逆であればと何度思ったことか.」みたいな投書も読んだことはある.

*17:神戸だから被害が大きいとか神戸じゃないから被害が小さいというものでもないが.

*18:たぶん,昔一度立ち読みして「これは面白い!」と思ったけど,その後タイトルを忘れて見つけられなくなった奴だと思う.何度か再販されてたんだね.