IT企業の東京進出とブラック化
http://d.hatena.ne.jp/tomoya/20120612/1339486204
7月から東京へ引っ越します。
さて、実は我々ラングリッチ一同は、事業拡大のためこの7月から東京へ移転することになりました。一部の方には既に簡単にお伝えしておりましたが、ここで正式に発表致します。
東京方面にお住まいの方々、今後より一層仲良くして下さい!
メンバー募集!!!
なんとなく,これを見て暗い気分になった.
これまで、我々はフィリピンと日本の神戸という名の明石との、2拠点で活動を行なってきたのですが、お陰様で無事に事業拡大することができ、徐々に人手が足らなくなってきました。
ただ、神戸やフィリピンでは残念ながら、良い人に声をかけたくても地理的な問題極大で、現実問題ひじょーに難しく、このままでは主に僕が死に至る可能性が出て参りました。
そこで、この問題を抜本的に解決すべく、全てが集まる東京へと進出することになりました。
人がいないから東京に出ます.たしかに人を確保するという意味では,それが有効な選択の一つだけど,もっとも安易な選択でもある.東京に出れば応募者を増やすことはできるけど,同時に自社の人が他の企業に引き抜かれることも増えるということなんだよ.必ずしも悪いってわけじゃないんだけど,なんだかなあ.
そこの所の人材獲得戦略をろくに考えないままに東京進出するのは,よほど技術力やコアビジネスに強みがない限り,単純な価格競争に巻き込まれたりするだけじゃないかなあ.
いや,それとも開発者を使い捨てにしたいからこそ,東京へ進出しようとしているのか...
追記
http://d.hatena.ne.jp/tomoya/20120615/1339728314
開発者を使い捨てるというのは、どういった現象なのでしょうか。何かこれまでに嫌な思いをしてきたのでしょうか?
そりゃこの業界にいればねえ.PRESS ENTERみたいな話がリアルである.
http://el.jibun.atmarkit.co.jp/pressenter/all_entrylist.html
そのことを知らないのか,知らないフリをしているのかまでは知りませんけどね.*1
僕が一緒に仕事をしたいには、そういう人達であり、一騎当千である彼らを使い捨てるなんて、頭悪いとしか言いようがありません。
たとえば,あなたの会社の売り上げが3割さがったらどうしますか.リーマンショックのような事件で仕事が7割,単価が3割減ったらどうしますか.それでもあなたは彼らを雇用し続けることができますか.そのための原資はどこから捻出しますか.できますか.(もしいれば)出資者を説得できますか.
逆にある時に倍の仕事が転がり込んできたらどうしますか.同じ人数を酷使しますか.それともその時だけ臨時で助っ人を雇いますか.その仕事が終わったら,助っ人の扱いはどうなりますか.或いは仕事を断りますか.むげに仕事をことわって,次からも仕事がもらえますか.*2
同じ仕事を3割引で引き受けるという他の会社が出てきて,仕事をとられたらどうしますか.自分の所の方が技術力も品質も明らかに上だとしても,そちらの会社はサービス残業と低賃金と劣悪な労働環境で「コストダウン」してきた場合に,技術のことを分からないし興味もない顧客を納得させられますか.技術の分からない顧客が同等以上の「コストダウン」を要求してきた場合に,どうやってそれを回避できますか.
それとも,自社も対抗してサービス残業と低賃金と劣悪な労働環境で「コストダウン」しますか.
あと、社員が他所に行くのは、別にどこにいても止めようがない事だと思います。それこそ、地方から東京へ行くことを選ぶ方が多いと思うし?去っていかれるのは残念ですが、僕は個人の自由を尊重します。
たとえば地方に住んでいる人はそこに住みたいから住んでいる人もいるわけで,そういう人には選択肢は少なく,職業選択の自由はあってないようなもの.「地元にある会社」というだけで差別化要因になる.また仮に地方に住んでいて東京で仕事が見つかったとしても,転職するために引っ越しが必要となれば,特に妻子や持ち家がある人は二の足を踏むでしょう.*3
この辺りは首都圏では自ずと事情が異なる.辞めるのは自由だけど,自由だからと言って優秀な人材に次々逃げられたのでは事業が立ちゆかなくなる.最低レベルの人材だけで事業を続けるという選択肢もあるが,(そしてそういう企業も多いが,)そうなると他社との差別化ができなくなって価格競争に巻き込まれて待遇面からブラック企業化する.などなど.
また、人材獲得戦略とか言っても、そもそも100人とかの単位で募集するわけではないので、前提が間違っている気がして仕方がない。スタートアップが、ひとつのサービスの開発に10人もつかったら、その時点で負けだと思うし。
どのようなスキルの人を何人,どのように採用するかも戦略ですよ.たとえそれが一人だろうと千人だろうと.*4
その辺りについて,まだ何も考えておられないようなので,ますます不安になりました.
「「GIGAZINE」が人材募集、編集長が(キレ気味に)内情を語る」
http://it.slashdot.jp/story/10/08/02/055238/
たとえばこの辺りも関係するかな.
「一緒に仕事をする」人だとしても,利害が一致するとは限らない.
創業者ってのは自分が好き好んで会社を興したわけだから,「プライベートを捨ててでも会社に賭ける」くらいの情熱を持っていても驚くことでも何でもない.というか,それくらいが普通だと思う.一方,後から入った社員に対して「自分と同レベルの情熱を持っていて欲しい」とか求めるのは(心情的には理解できなくはないが)根本的に間違っているし,その時点で「給料は欲しいが仕事したくない」と言ってるダメ社員と同レベルにしか見えない.
というのも,もし会社が大きくなって大成功しても,それで「夢が叶った」という満足が得られるのは創業者だけ.成功したあかつきに多大な創業者利益が転がり込んでくることが保証されているのも創業者だけ.原則的に,一般社員は会社が成功しようが赤字だろうが(倒産とかクビとかにならない限り)別に自分の人生には関係無い.だから,普通の会社は「努力すれば良いことがある」という保証のために成果に応じて昇給してるわけだ.あるいは原資が無いなら「今は苦しくても,いつか会社が成功すれば君たちも一緒にハッピーになれるんだよ」という保証のためにストックオプションを与えたりするわけで.
今の言い分だと,「創業者としてのメリットは何も受けられないが,創業者と同レベルの情熱を持って会社を盛り立てくれる人材が欲しい.どんなに頑張ろうとも短期的にも長期的にも見返りは無保証だけどね.そういう条件でヤル気のある優秀な人材はいませんか?」みたいなムチャクチャな言い分にしか見えない.
http://it.slashdot.jp/comments.pl?sid=503412&cid=1803792
けど、会社は、金払ってる業務時間のうちしか、従業員の時間を買ってないんだよね。どうして買ってない時間まで働いてもらえると思えるんだろう? レンタカー5日しか借りてないけど1週間貸せって言ってるようなもんでしょ?業務時間中に仕事をしていないと文句を言うのは正論ですが、業務時間外に仕事をしていないと文句言われてもなぁ。
プライベートな時間も仕事に使ってもらおうと思うのなら、
- 能力に応じて待遇がよくなり、プライベートな時間も能力の向上に当てようという気を起こさせる
- 仕事そのものが非常に楽しく、プライベートな時間も仕事のことを考えようという気を起こさせる
ことが重要で、これは個人の資質もそうですが、業務内容や会社の環境などの影響も非常に大きいです。
そしてなにより、原則として従業員は業務時間の間しか働く必要がないのですから、働かせようと思うのなら会社側が変わらないと無駄でしょうね。
http://it.slashdot.jp/comments.pl?sid=503412&cid=1803494
マル経の基本ですが、労働者の労働時間以外の時間は、(風呂入ったりメシ喰ったり寝たりセックルして次世代の労働者を作ったりといった)労働力の再生産に費やされています。要するにすでに整備や洗車で手いっぱいなんです。それ以外のこともヤらせたければ、その時間を金で買ってください。
http://it.slashdot.jp/comments.pl?sid=503412&cid=1803614
ソフトウエア開発は本来莫大な先行投資が必要で,立ち上げ時には売り上げが少ないのに多くの開発者が必要.実際に利益が出る頃になったら,技術者は不要になったり,その前にいなくなってたり,解雇されてたり.さて?
http://www.cyzo.com/2012/05/post_10647.html
『School days』のメインプログラマーで、一緒に創業したメンバーが結婚したのもあり、不規則なゲーム稼業に音を上げて会社を辞めたんです。その頃、もう一人の創業メンバーも、折悪しく先天性の病気が悪化して動けなくなったんです。
スタートアップからのシリコンバレー進出 4:現地での優秀な人材の雇用
http://www.chikawatanabe.com/blog/2011/11/options.html
じゃぁ、たくさん給料を出せばいいのか、というと、一概にそういうものでもないんですよねぇ・・・・。
まず、ストックオプションというアップサイドがないことが前提の給料を本当に出せる会社は少ないと思う。トップの一人には年俸で2−3000万円出す覚悟をしている、という方には時々会うのだが、その下で働く人たちにも高給を出さないといけない覚悟までしてることは少ない。
特に最初の数名は鍵なので、その人たちはかなーり優秀でないと組織が立ち上がらない。全員にキャッシュで高給を払っていくのは結構体力がいります。
・・・だし、ストックオプションは、「将来大きく成功する可能性がある」という可能性を体現したもの、なのだ。「会社の人材/事業には魅力を感じないが、ストックオプションくれるから就職する」という人はいない。(そのストックオプションは紙切れでしかない。)
「将来性」が感じられ、しかも、その夢が実現したときに自分も富をシェアできる、と感じられるのが「ストックオプション」。ストックオプションがある、しかもそれに魅力がある、というのは「その会社に魅力がある」ということと同義でもある。
注:なのでエグジットするつもりもないのにオプションを出すのは意味がないし、説得力がありません。日本の親会社の100%子会社をアメリカに作って、子会社のストックオプションを出すとかも意味なし。
シリコンバレーの給与とストックオプション
http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/05/post_7.html
(注:ベンチャー暦の長い知人たちはよく
「ストックオプションって、結局殆どの場合ただの紙だから、それよりキャッシュの給料が大事」
と言ってます。つまり、「ベンチャーは実はなかなか成功しない」という事実が、過去10年で知れ渡ったということではないか、とも思います。)
10年前は、
「一攫千金を狙うため、ストックオプションをもらえるなら少々給料は下がってもよい」
というくらいストックオプションの価値があったのが、
今では、
「一攫千金を狙うためストックオプションは欲しいが、給料が下がるのはいやだ」
というレベルにストックオプションの価値が落ちた、というのがより正しい言い方でしょうか。