麻布中学入試ドラえもん問題(4):ドラえもん牧場

麻布中学入試ドラえもん問題(1):ドラえもんは知的生命体ですよ」 http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20130203/p2 http://javablack.hatenablog.com/entry/20130203/p2 関係

逆に、ドラえもんが生物ではないという別解答

http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20130208/1360621749
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また、ドラえもん以外でも、チョコレートやキャンディといった明らかな無生物を育てる秘密道具を使って、お菓子の牧場を作るエピソード「おかし牧場」もある。ただ大きくなるだけではなく、おかしが生物のように動き、つがいとなることで子孫も生んでいた。

おおなるほど.その発想はなかった!


「おかし牧草」は *1

  • これを食べさせることでお菓子が(疑似)生命体になる.*2自分で動いたり牧草を食べたりする.
  • 「ウシ」になったお菓子を「飼う」ことで,繁殖させて増やすことができる.牧草さえ与えておけば,ほっといても勝手に増える.
  • 最低でも一時間おきに牧草を食べさせる必要があり,それを過ぎると二度とウシにならなくなる.
  • 一時間おきに与え続けるのは飼育者の負担が大きい.広場に牧草の種を蒔いて放牧する方がずっと楽.

というもの.
「おかし牧草」は無生物を生物に転換して再生産可能にするという,科学だか黒魔術だか分からないようなひみつ道具だ.そしてその性質から判断して,おかし牧草やそのタネの価格は板チョコ1枚より随分安いはず!!ドラえもんのいる未来の世界においては生物と無生物は排他的な概念ではなくなり,自在且つ安価に相互変換可能な物なのかもしれない.


さて,ここでもう一つ疑問になるのが,「おかし牧草以外にも機械牧草とかロボット牧草とかドラえもん牧草とかあるんじゃない?」ということだ.明らかな無生物を生物に転換できる技術があるのなら,ロボットを生物に転換できても驚くことじゃない.そしてもしそれが可能なら,チョコ一枚にも満たない価格はロボット1体より随分安くなるだろう.しかも一度出荷して1時間以上ドラえもん牧草を食べてないドラえもんたちは,二度とドラえもん牧草で増やすことができなくなるので,いいことずくめ!

未来の世界では「ドラえもん牧草」が生えたドラえもん牧場」で安価に飼われる種ドラえもんたちがいて,そこで繁殖した子ドラえもん達が,ある晴れた昼下がり市場へ続く道,荷馬車でゴトゴト売られていく光景が当たり前になっているのかもしれない.

流体化し、細胞膜の能力を失わせる秘密道具が登場するエピソード「サンタイン」にいたっては、ドラえもんだけでなくのび太も流体化しており、明らかに未来の生物定義は現代と異なっていそうだ。

同意.

そもそも生物の定義とは,その行動や生態によって定義づけられるもので,たとえば上記ウシになったチョコレートを見れば,だれもがそれを生物だと思うだろう.少なくともその可能性を考慮する.

これに対して細胞やDNAがあるとかアミノ酸/タンパク質で構成されるとか自然繁殖/再生産するだとかは,既存の地球上の生命体固有の特徴でしかない.もし生命の「定義」がそういうものだったら「地球外生命体」というものは存在し得なくなって,スーパーマンや可変種やチーラやピギーやバンダースナッチも「生物」ではなくなってしまう.*3 それは随分と寂しい思想ではないか.

ドラえもん 生物でない理由は? 麻布中入試 話題の難問

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013021202000055.html
トレッキー的には小学生でも知ってる問題で,難問とは思わないけどなあ.*4

ドラえもんは、ポケットからさまざまな秘密道具を出して不可能を可能にする。「ビッグライトを使えば大きくなれる」「フエルミラーで自己増殖できる」−。「この手の問題に利用するには万能すぎる」との声も。

 さらに「女王蜂と働き蜂のように、生産担当とそれ以外に分化した種は存在する」など、設問が挙げる生物の特徴に疑義をはさんだり、生殖技術が進んだ未来を仮定して、生物の定義がゆらぐことを検討する書き込みもある。議論を楽しんでいる面もあるようだ。

……どこかで見たような記述だな.

twitter

同意.日本人のSF離れ/理系離れがここまで酷いとは.

これも同意.
「死ぬから生物/ロボットは壊れるだけ」「ロボット/機械だから生物じゃない」「DNA/細胞がないから」「工場で生まれるから」.なんと偏見に凝り固まり,思考停止している人の多いことか.



これはむしろ「炎」なんかを除外するためだと思う.

  • 代謝:炎は食料(燃料)を消費してエネルギーに変える
  • 成長/再生産:食料(燃料)がある限り取り込んで,どんどん成長/再生産する

炎は上記二つの性質は満たしてしまうのだ.*5


「ロボットだから」という答も同様だけど,人間も「炭素基ロボット」に過ぎない.ロボットであることと生物であるか否かは直交する概念.その構成要素が炭素基であるかケイ素基ベースであるか金属ベースであるかは些末な問題.*6 *7


むしろ定義が逆じゃないかな?親から生まれた子は,姿形が異なっても(突然変異を除き)同じ種とみなされる.カエルとオタマジャクシ(或いは卵)とか、女王蜂と働き蜂とか.チョウと青虫のように完全変態する昆虫なんかも親と子の姿形は異なるよね.*8


館内のボードに「自由に自分の考えをかいてください」と書いておいたら、議論百出。

「図を見ただけでは、ドラえもんの中身がどうなっているか全く判断できないので、生物かどうかの判断ができません。

ドラえもんはその特徴に当てはまらない.一般的なロボットも当てはまらないことの方が多い.

ドラえもんは生物の定義から外れるとしても、じゃあドラえもんにゴーストは無いのかとか考えていくと楽しい

ドラえもんは生物でない」ことを証明するには解答用紙が絶対に足りない。

ドラえもんはロボットだからです!」ってドヤ顔で答えてる大人が半分位いるのに絶望した。

「興味ないんだから読んでなくても仕方ない」の部分も含めて,ここは強く同意する.
「ロボットだから生物でない」というのは生物の定義や共通の特徴から導かれた結論ではなくて,論理が飛躍している.そもそも「ロボットは生物になり得る」から結論も間違ってる.

採点が難しいからというのはあるけれど,こういう問題の一つや二つを入れておいて,合否ライン上の人間をふるい落とす基準に使うくらいならいいと思う.
大学ともなるとケアレスミスで10点やそこら低くても,論理的思考力のない人間よりある人間を取るべきだ.



フィギュアライズメカニクス ドラえもん 色分け済みプラモデル

フィギュアライズメカニクス ドラえもん 色分け済みプラモデル

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%B2%E3%81%BF%E3%81%A4%E9%81%93%E5%85%B7_%28%E3%81%8A%E3%81%82-%E3%81%8A%E3%81%93%29#.E3.81.8A.E3.81.8B.E3.81.97.E7.89.A7.E8.8D.89

*2:この現象を「ウシになる」と呼んだりするそうだ.

*3:「機械生命体」やネットワーク上のAIによる「疑似人格」みたいなのはその延長にすぎない.たとえば造物主であるプログラマーより,遙かに優れた芸術的な音楽や文学作品を作れる芸術家AIがあれば,それには著作権を認めて良いのではないかみたいな話もある.

*4:「名門中学を受験する子供は,受験勉強の一環としてスタートレックを見るべきです(キリッ)」

*5:これもどこかで見たか読んだかしたんだけど,どこだったかなあ?やっぱしTNGか?

*6:「ロボットだから」「機械だから」という回答もすごく多いんだけど,それは考えが浅いというか固定観念に取り憑かれてるというか.

*7:そもそも「生体組織」って「生物の組織」のことだよね?まずは生物が定義される → ある存在が生物だと規定される → その組織が「生体組織」に分類される.珪素基生命体やチーラやドラえもんが生物に認められれば,その組織も「生体組織」の範疇に入るだけでは.

*8:親と子で種が変わってるとしたら,それはもはや普通の繁殖/再生産の域を超えてるw