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4/26時点でポイント還元は既に終了.

http://kindou.info/11938.html
メモ.*1

Kindleコミックに引き続きライトノベルも、大手各社の1巻が50%ポイント還元祭りがはじまっています。Kindle上陸半年にあわせた感謝祭ですかね?1巻だけで検索しても5,600冊あるので、紹介しきれません。好きな作品を検索してさがすか、次をクリックしてみてください。

本ブログ的におすすめなのは,やはり「なれる!SE」かな.

http://book.akahoshitakuya.com/b/4048686054


ただし地獄の客先常駐の7巻に比べると,1巻の頃はまだまだ平和.業界の人間的には物足りないかもしれません.

  • 就職氷河期に新卒就職活動に失敗する.
  • 半ば騙される形で,藁にもすがる思いで零細SIerスルガシステムに入社.*2 *3 (実際には藁より酷かったかもしれない.)
  • 研修も無しにむろみさんの下に配属.OJTという名の放置プレイ.
  • 初日にコピー取りに失敗して凹む.
  • 初日こそ普通に帰れたものの,入社二日目に終電帰り.三日目も終電帰り.(つか泊まり込んで徹夜しろと言われる.)その後も推して知るべし.*4
  • コンフィグをサンプルからコピペしてボロクソにけなされる.(イイハナシダナー)
  • あまりの無茶ぶりに,入社二日目で退職を検討.あと二週間だけがんばる.
  • 藤崎さんに頼まれ,初の休日出勤.年俸制なので,もちろん休日出勤手当なんて出ません.
  • 昼休みにVPN機器のリプレースさせられ,動作しなくて修羅場.しかも顧客側担当者の独断で,技術者に相談も無しに従来使ってた機器は既に別の場所へ勝手に移動.担当者はアホか.

といった,ささやかな事件があったくらいで,7巻に比べれば実に平和な日々です.

しかしそんな付け焼き刃の対応が上手く行くはずもなく,六月になっても工兵の内定はゼロのままだった.
サラリーマンになれないことがこれほど絶望的な気分だとは思っても見なかった.まるで自分の人間性を否定されたような,自分という存在を丸ごと拒絶された気分だった.
大学の仲間は一足先に内定を獲得し,残り少ない学生生活を楽しんでいた.一体自分と彼らで何が違うのか,冷静さを失った工兵にはサッパリ理解できなかった.分からないまま,彼はほとんど生ける屍のように携帯の着信を確認し続けた.

スルガシステムの求人広告は独特だった.
求める人材像やキャリアパスの説明はほとんど無く,Yさんという新米エンジニアの日常が淡々と書き綴られていた.
(中略)
挫折と再起,挑戦と失敗.
何度となく「もうやっていけないのでは」と思い,その都度先輩社員に励まされ立ち上がっていく.そしてついに大規模プロジェクトをやりとげ,顧客から感謝の言葉を勝ち取るのだ.
「ありがとうYさん.あなたのおかげで当社の新システムは無事稼働しました.」*5

最後まで読み終わった瞬間,工兵は不覚にも涙していた.

「詐欺の手口で良くあるのはですね」
「まずは成功体験を伝えます.このお守りを買ったら商売が上向いたとか,受験に成功したとか,そういうのをですね.実例として話すわけです.で,次に危機感をあおる.今買わないと在庫が無くなる,チャンスがなくなるとか言ってね.」
「あなたは特別だーとも言いますね.あなたのように特別な人だからこの話を教えたんだって.まあよく考えれば胡散臭いわけですが.だってよく売れる商品なら,わざわざ一人一人口説いて回る必要ないでしょ(笑)効率の悪い.」
「まあ詐欺師は騙しやすい人を狙いますからね.気の弱い人とか悩みのある人とか,あと何か切羽詰まってる人とか.つまり冷静な判断力を無くしてる人ですね」

はて‥‥なんだか最近似たような話を聞いた気がするけど,なんだっけ?

プロローグからしてコレである.内容は推して知るべし.

「本当に分かってるの?私がこの構成を組むためにどれだけ苦労したと思ってるの.あのアホ社長,ベンダーの在庫も確かめずに受注して,代替品見つけるのにアキバのジャンク屋まで探し回ったのよ.おまけにデフォルトのファームじゃ要件満たせなくて,全台上位ファームに入れ替え.それがやっと終わって検証に取りかかったのが昨日,ちなみに出荷は明日よ.そういう状況の機会を片付ける?電源を落とす?なんあのあんた.馬鹿なの?死ぬの?」

つまりこういうことか?劣悪な労働環境を嫌い,どんどん辞めていく社員.欠員を補うため採用担当は就職サイトで大々的に募集をかける.だがマトモに募集しても,会社の規模から言ってそうそうエントリーは集まらない.だから人目を引くエピソードを捏造し,なりふり構わずアクセスを集めた.あとは応募してきた人間 ー今となってはどのくらいいたか疑問だがー に形だけの面接をして内定承諾書を書かせる ー
(中略)

ひょ,ひょっとして……だまされた?

「あ,ごめん.あれ書いたのあたし」
「あたし,昔ライターやっててね.そのことを人事に言ったら,就職サイトのひな形? を作るから,何か適当に書いてくれって.でまあそれっぽい話をつらつらっとね.まさか,そのまま使われるとは思わなかったけど.」

実はひどい会社に入ってしまったんだ.就活サイトは捏造で同期もゼロ.社長は社員の消耗も気にせず案件を取ってくるし,OJTの先輩はハートマンばりの鬼軍曹.上司は過労で倒れそうだわ自分も二日目から残業続きだわ.正直いつまでもつかわからない.ていうか,そもそも使えなければ二週間で首って言われてるし,落ち着いたら次の仕事を探そうと思うんだ −−
なんてことを告げれば,母親は間違いなく「帰ってこい」というだろう.ほら,やっぱり聞いたことのない会社なんて駄目なのよ.お父さんに言ってお店の仕事を用意してもらいましょう.
……….

あーあ…….
盛大なため息を漏らす.いくら疲れを癒やしても,今日が終わり明日が過ぎればまた月曜日がやってくる.そして始まる地獄のような一週間.もし自分があの会社にとどまり続けるのならそのサイクルが何十年も続くのだ.
やっぱり,無理だ.
絶望的な気分で独りごちる.

「やりなおし」
……え?


「ま,待って下さい」「ど、どういうことですか.全部間違ってるとでも言うんですか,これ」
「ううん」
「じゃあ,なんで!」
「あんた……それ,どっかから写したでしょ」
……!


「元コンフィグにsysylogサーバなんて指定されてた?SNMPコミュニティなんて設定してた?そんなズラズラと余計なACLかけてた?」
「……」
工兵は口ごもる.どこを消して良いか分からなかったので意味の掴めない部分はサンプルコンフィグを流用していた.つまりはそれが余分な機能だというのだろう.
室見は語気を強めた
「私言ったわよね.一からコンフィグを作れって.誰がサンプルを持ってきてそれを編集しろなんて言ったの?」
「で,でも……」
そんなことできるわけないじゃないか.室見の言ってることはつまりこうだ.新旧の設定規則を理解した上で過不足無く,必要最小限の設定を作り上げろと.どう考えても素人に出来る作業じゃない.
「でもも何もない.ていうか,三時間かけてやったことがサンプルのコピペだけ?あんたやる気あるの?ないならもう帰っていいわよ.目障りだし.」


「不満そうね.」「言いたいことがあるなら言ったら?なんで設定例があるのに,わざわざ一から作らなきゃいけないんだとか.余分な箇所があるなら,そこだけ削除させればいいだろとか.」
「……」


「確かにそれでも納品用の設定はできあがるわよ.でもね,そうやって作ったコンフィグがもし現場で動かなかったらどうするの?」
「?どういうことですか」
「仕様の伝達ミス,接続機器との相性,急な要件変更.想定外のトラブルなんていくらでも起きるわ.その時,現場で急遽コンフィグを変更しなきゃいけなくなったとして,あんたはどうするの?どこを変更したらいいか分かるの?」
「それは……」
「それとも」「サンプルをコピーしただけだから分かりません,とでもお客に言うつもり?」

著者の経験に基づいてるだけあって後書きも秀逸.

「俺はおまえらを過労死させるために講義してきたわけじゃないぞ」
男前の教授は僕らゼミ生に向かって力強く言い放ちました.
ですが時は就職大氷河期時代.
職を選んでいられるような余裕があるわけもなく(そして教授も代わりの仕事を推薦してくれるわけ出なく)紆余曲折の末,僕はSEになってしまいました.

ただ入社当初,僕はまだ希望をもっていました.

いや本当,今から考えると滑稽なくらいに無邪気で単純だったと思います.何せ当時の僕は大まじめにシステムエンジニアを天職だなんて考えてたんですから.
入社して三ヶ月目,部署への配属を持って僕の幻想は潰えました.そこで待っていたのは連日の深夜残業と膨大なコーディング作業,全体像も見えないまま次々と降り注いでくる仕事の山.
何度身体を壊しかけたか分かりません.実際何人もの同期が体や心を病み会社を辞めていきました.
(中略)
結局,入社して数年で僕は会社を辞めました.

ー さて一昨年の暮れ,年の離れた後輩が就職活動を始めました.
「ねぇ先輩,私IT業界って奴を受けてみたいんだけどどうかな?」


絶対やめとけと言いました.

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20101018/p1


残りは定価通り,ポイント還元も特になし.


8巻のKindle化はまだ.たぶん9巻が出たら,8巻のKindle版を出すんだろう.電子書籍を紙の本より一回り遅く出すのは,出版社によるAmazonKindle電子書籍ユーザーへの嫌がらせと見ていいだろう.

なれる!SE (8) 案件防衛?ハンドブック (電撃文庫)

なれる!SE (8) 案件防衛?ハンドブック (電撃文庫)


9巻(紙)は来月.電子書籍は10巻が出る時だから,半年後くらいかな?

http://www.amazon.co.jp/dp/4048916211/bloofjav-22/
http://d.hatena.ne.jp/nunnnunn/20130410/1365604174
http://dengekibunko.dengeki.com/newreleases/978-4-04-891621-9/


他にネタ的に気になるのは幾つかある.が,読んでないので内容についてはコメントできない.

彼女と二人で「C」体験! (MF文庫J)

彼女と二人で「C」体験! (MF文庫J)


こっちはKindle化さえされてない.

不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)

不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)

陰謀と無茶ぶり渦巻く SE の現場が、段々普通の小説のような非現実に陥っていく描写に、なんというか、フィクションに突き抜けてくれてホッとしてしまいました。なぜでしょう、過労で死んだ・・よりも殺人事件で死んでもらった方が平和に感じるといいますか。むー、感覚狂ってるなー。(いや、この本では起きませんけど、殺人事件)

http://d.hatena.ne.jp/minekoa/20101220/1292864545

*1:「1巻だけ50%ポイント還元(or半額)」というのは,電子書籍流の「試し読み」であり宣伝なのでしょうね.一巻を半額にしてとりあえず読んでもらって,気に入ったら2巻以上も今度は定価で買ってもらう.またこの購入データを分析すれば,どのシリーズが注目されているかの貴重なデータになる.今回売れたのやそれと似た傾向の書籍について、優先的に電子化するという判断は十分考えられる物だろう.

*2:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20110123

*3:よく勘違いされるけど,スルガシステムはブラック企業ではなく,零細SIerとしてはかなりマシな方で優良企業.真のITブラック企業は7巻なみ.

*4:「無茶な納期も経験のない業務をふられるのも,この業界じゃ日常茶飯事.そういう物が出た時に,やれ終電だ,やれ教育を受けてないって言い訳する人間を,仕事仲間と認められないって言ってるのよ.一事が万事.今日逃げた人間は明日も逃げると思われる.そんなこともわからないの?」確かに一理あるっちゃーあるんだが...だったら「学歴不問・未経験者歓迎」で素人を採用すんなと.

*5:関係者なら説明するまでもないが,新米技術者に感謝の言葉を贈るような風習は日本にはない.動いて当然,動いてもケチをつけるくらいで普通.
もし顧客から感謝の言葉など投げかけられたら,意表をつかれて涙するかも知れない.