「日本人の有給消化割合が少ないのは、『低スキル労働者』が解雇を怖れる合理的行動の結果」ではない.

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20131219-00030779/

日本人の有給消化割合が少ないのは、低スキル労働者が解雇を怖れる合理的行動の結果

山本一郎 | 個人投資家

本日の釣り堀.もうほんとにアホかバカかと.

  • 生産性が低い理由の分析がない.理由もなく「生産性が低い = 現場の低スキル労働力が原因」と断定しているのはなぜ?というか論点をすり替えてない?*1
  • むしろ現場の技術力は高いが,マネジメント層が無能って昔から指摘されてきたよね.*2
  • 長時間労働は低生産性に対する解決策ではなく,生産性低下の原因では?*3
  • 日本企業においては performance evaluation や job description の概念がない.*4だから解雇判断はスキルや成果とは無関係な所で行われる.*5 *6
  • 評価者が常に有能で,公平で間違いのない経営判断を下してくれてるなら,こんなに現場は苦労してないってば.
  • 現実には,むしろ高スキル人材の方が休めない.
  • 昭和の正社員中心の時代だと滅多に解雇されなかったわけだけど,やはり長時間労働で有給消化率は低かった.上記の論理だと,バブル崩壊後に非正規雇用が増えると共に労働時間が増え始めたことになるが,そんな事実があったか?
  • 経歴に傷が付くことを最も恐れるのは,経歴に一点の曇りも無い人.底辺層は元より評価が低いのでそれ以上評価が悪くなっても大差ない.

だからその後の分析も全部的外れ.

なんかまるで日本人が休んでないかのように言われるわけですけれども、

そもそも日本はフランスよりも国民の休日が5日多い

です。もともと日本人は休んでるんですよ。もちろん

その代わりにフランス人は「バカンス」で2〜3週間休んでるというオチじゃないの?*7
http://www.excite.co.jp/News/laurier/column/E1376285156641.html

家族構成,職業,所得,居住地域あるいは個人の趣味により,バカンスの長さあるいは過ごし方に違いはみられるが,ほぼすべてのフランス人家庭(他の EU 諸国も同様)にとって,長いバカンスをどこで,いかに過ごすかは毎年の最大の関心事である。こ数年,経済危機が続き,失業率は慢性的に高いにもかかわらず,ほぼ 6 割のフランス人は夏休みをとっている。観光産業や休暇の社会的インフラが発達しているフランスでは,各地に安価な費用で過ごせる民宿,貸し別荘,キャンプ場などが存在している。また,子供をひと夏預かる林間学校(coloniedevacances)なども避暑地や海辺の村で開かれる。所得が低く,社会的な扶助を受けている階層には,バカンス用に交通費あるいは滞在費の補助制度まで存在する。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/08/pdf/045-054.pdf

フランスの法律では、休暇は連続5週間まで取得可能となっている。そのため、[2]夏季に連続1ヶ月ほどの休暇を取得する。日本で一般的な短期周遊型がと異なり、数週間にわたる長期滞在型休暇を過ごす。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%B9

どうやら,「フランス人よりも日本人の方が休んでる」というのは大嘘のようだ.

そのような国際競争下で日本型組織がどのように戦い抜いているのかという点で言うならば、低い生産性でも長時間働いて競争力を維持しようというマインドに他なりません。

長時間労働させられるから,生産性が落ちるという側面もある.短時間で終わらせるとより多く余計な仕事をふられるだけなので,生産性を下げるインセンティブが働いている.

同じ仕事を高品質且つ短時間で片付けると,評価を下げる無能上司の弊害.

要するに、

安い人件費で有給も取れない働き方を強いられる日本人は、移民労働者レベルの扱い

であって、単純に低スキル労働者で置き換えの効く程度の存在だという話です。そうなると、必然的に雇用側も低い生産性をカバーするために長時間働いてもらうことがやはりインセンティブになります。結局は「日本人は有給を他国に比べて取らない」のも、「取れないのだ。なぜならば低スキルで生産性が低いので長時間職場にいてナンボで、

むしろ高スキル人材を低コストで使い潰しているのが問題なのでは?


そんな簡単に置き換えられる低スキルの仕事ばかりなら,高卒や中卒を喜んで雇う企業がもっと沢山あるはずだよね.

http://b.hatena.ne.jp/entry/bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20131219-00030779/

  • id:yukimicu またこいつは過激なタイトルと息を吐くようなデマでアクセス集めてるのか

激しく同意.

よく見たらひょっとして「やまもといちろう」って,あの時のクズか.

ポジショントークとはいえ,すぐにバレるようなあからさまなウソをつくのはいかがなものか.職業は個人投資家ではなく詐欺師の間違いでは無いのか.

  • id:y-mat2006 経営者目線(この場合はまさにポジショントーク)。スキルのある人も休めてないんじゃないかな?
  • id:TakamoriTarou じゃあ高スキル・高生産性の人間は有休がんがんとれる環境にあるかと言うと実際見てると逆だし、給料の低い職業の方が有休消化率が高く、高い賃金が払われている職場の方が消化率低いようだし、ちょっと机上すぎでは
  • id:harisenbon_fukurahagi スキル関係ない。学生がこぞって入りたがる高収入企業に勤めている人気企業ほど有給取得率が低い。あるいは時期を強制的に指定されて自由にはとれていない。そもそも有給をとりにくい土壌があると思うよん
  • id:euda 高いスキルの人はきちっと休んでるって傾向はある?昔は今より効率悪くても成長してたのに今は効率上げても成長しないんだから、効率至上じゃなくて全く別視点で改善するとかスキルのある経営者は考えれば?
  • id:yorunosuke スキルのある人に仕事が集まり、有給取ってもネット越しで普通に仕事してるという風景も

むしろ,スキルのある人の方が休めませんねえ.

  • id:kalmalogy 同調圧力とバッファをとらない人員アサインに尽きる気はする
  • id:TM2501 いや、これは違うだろうが!もっともっと「空気」とか「人間関係」の問題で空気が読めないヤツかスペックが頭一つ抜けているか訳ありの女性ぐらいしか有給が取れない現状がおかしいんだろうが!休むとツケが回るし!
  • id:masudamaster 子どもが熱出したから帰ったお母さん社員に対して、同僚が「俺らに対する謝罪はないの?」なんて陰口を叩く社会で有給休暇が増えるわけねーだろ。仕組みではなく文化(精神)の問題。これでは渡邉正裕と同類。
  • id:kenjou 日本では他の人が休まないから自分も休めないという同調圧力が強いから休めないだけ。スキルの有無なんて関係ない。
  • id:mkusunok 労働生産性の議論はあるが囚人のジレンマ的な面もあるので別の均衡に移行できればみんな休むよ
  • id:sakura_123 1日2日休んだだけで仕事が回らなくなったり周りに迷惑がかかるって職場の形が欠陥だよなとは思います。
  • id:oka_mailer 有給はスキルの高低と無関係に消化されてしかるべきなので。その"合理的行動"とやらは原因ではなく結果でしょうし、その結果の一因には経営者の責任もあると思いますがー。
  • id:Gl17 低スキルつっても相対的に全員高いとか有り得ないわけで、スキル次第で休めなきゃそれ自体が、有給制度や経営の欠陥では。社員スキルの高度化や社員間競争の厳しいユニクロワタミ等は消化率高いのかしら??
  • id:mr_yamada やるべき仕事をサクッと終わらせると、「余裕ありそうだね」とか言われて、さらに仕事が振られるんだが…… 自分の周りで有給ガンガン取ってるのは、上が仕事振りたがらない困ったちゃん系だな
  • id:Red-Comet 早く課題を終えても追加でやらされるのは学校と同じだからなあ。効率がいいことにインセンティブがないことが日本のシステムの悪いところだと思う。
  • id:ryoi2010 解雇を怖れるってのは違うな。自分と周囲に対する労働強化を恐れてるだけだと思う。仕事が溜まるってだけじゃなく、暇だと思われるリスクもある。
  • id:el-condor 経営者という立場の人間がこういうことを言うこと自体負け。経営者は会社で起こることの全責任を負うんだよ。雇用問題も含んで、ね。でなきゃ上でふんぞり返って社員を搾取してるだけの存在になるだろ。
  • id:prole18 さすが搾取を先導する経営者。日本の有給消化が少ないのは移民労働やスキル云々などではなく政治的に有利な立場である経営者という立場を一方的かつ合理的に利用した結果。この人が経営者の資格があるか甚だ疑問だ。
  • id:arrack これが正しいとすると「日本は解雇規制が強い」っていう言説が通らないんですが、その辺どうなんですかね?
  • id:babi1234567890 日本経済がイケイケだった時代も有給取得率は低かったんでないの?
  • id:You-me デフレ期のそれはこの説明でもそれなりにいいけどバブル期のアレはこれじゃ説明しにくいよね
  • id:lcwin 本当に休めないのはともかく、病気のために有給残しときたくて余るというのはありそうな話。日本ではボーナス査定も絡んでいざというときのための休みになってるから/あと祝日が多いのは日本人が休まないから説
  • id:raitu 各国の労働生産性の計算方法が国毎に異なる、ってのをちゃんと整理しないと、骨子である「移民労働者使い潰しが一番生産性高い」あたりがボヤボヤするような。
  • id:shotawatanabe 低スキル労働者ではないはずの人たちが風物詩のように転職の時に有給消化と称して2週間ほどの有給を取っているからなあ。と思う。
  • id:wacok 半年でサラリーマン辞めた人間がサラリーマンの何がわかるんだっつってね。
  • id:htnmiki 有休取って評価悪くなったことないからどんどん取ればいいんじゃないかな。「有休取ったらマイナス評価に・・・」って思い込みじゃないの?

上司から直接やんわりと脅迫されましたがそれが何か.

あれでも立派な上場企業だってんだから笑えるよな.中小零細やITブラックなら推して知るべし.

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

数字が引っかかっている人に対し「残業30時間なのにAはないでしょう」などと,評価替えをするのである.つまり,目標が達成されていたかどうかなどはほとんどノーチェックであり,シートにある評価のAやBと,残業時間,年次有給休暇の消化日数,勤怠状況を付け合わせるだけだった.

「これでは目標管理なんて有名無実ではないか」

と思ったが,そんなことを口に出せるような時間的余裕も,精神的余裕も私にはなかった.

人事の独裁による締め付けは,ブラックリスト記載者だけではなかった.ブラックリスト記載者だけでは大勢に影響がないとわかると,今度は育児や介護で短時間勤務を選択している人間,時間外勤務の少ない人間,有給休暇取得率の高い人間などを狙い撃ちにするようになった.

その理由は簡単で,単純に「ほかの従業員より労働時間が少ないから成果も少ない」という事務屋的理屈だった.これは「成果主義」とは正反対の理屈だ.

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20111014/p1

日航にはパイロット(機長と副操縦士)が約2500人いる。日航が募集している「希望退職者」はパイロットについては年齢などを問わないとしているが、同社関係者によると、退職を求められている約370人は50代後半の機長や50歳以上の副操縦士病気で欠勤した日数が多い人(今年度の病欠日数が41日以上など)らに限られている。

http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY201010070564.html

副操縦士の場合、今年に入ってけがで数カ月休んだ。これが日航の整理解雇の人選基準案にある「(今年度)病気欠勤合計41日以上の者」にひっかかった。けがは完治し、9月から通常業務をこなしていた。けがの時以外に長期の休みを取ったことはない。それなのに、今月上旬の面談で、会社から「あなたは今後の会社業務に貢献できない」と言われた。

パイロットは体調が少しでもすぐれないと、事故を防ぐためにフライトを取りやめ、「病気欠勤」とするのが通例だ。風邪薬を飲んだだけでも休む。このルールは、自己申告で保たれている。別の副操縦士(39)は、解雇の人選基準案にある「過去2年5カ月で合計81日以上の病気欠勤」にあたるとして対象になった。風邪や、長時間の飛行で腰を痛めて長く休んだことがあった。「こんなやり方では、今後は風邪をひいても誰も休まなくなり、安全に問題が出るだろう」と話す。
(中略)
個々の能力で甲乙がつけがたければ、年齢や病欠日数など、客観的な基準で線引きせざるを得ない

http://www.asahi.com/national/update/1008/TKY201010070571.html
http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20101012/p1

もちろん,これは氷山の一角.

  • id:dorasan_htn ずれたコメントしている人がいるが、周りの目を気にして有休申請できない層の話ではなく、本当に忙しくて休めない底辺サービス産業の人が有休消化率を下げてるという話だろ。

うん,それ的外れ.

もしそれが正しければ,バブル崩壊以前は有給取得率は今よりずっと高かったはずだから.だが現実は違う.


さらに底辺になると週何日仕事があるかが生死を分けることも.*8

平成大不況編 今日、ホームレスになった

平成大不況編 今日、ホームレスになった

夏場はなんとか踏ん張れたんですが,問題は年末年始です.仕事がないんですよ.派遣会社に問い合わせたら,年明け5日にならないと予定が確定しないということでね.丸一週間は仕事も稼ぎも無いということです.

雑誌拾いを使用にも週刊誌もマンガも年末年始は合併号だから物が無い.これじゃ小銭稼ぎも出来ないよ.普通の勤め人だったら遊びにいこうか,旅行しようか,田舎に帰ろうかと楽しいのだろう.でも俺には正月なんてない方が助かるんだよな.

「派遣が途切れだしたのはやっぱり一昨年の暮れ頃でしたか?」
「そうですね,バタッと止まったよ.それまでは月に15,16日働けたのに週2日とかになってしまったね.日銭が稼げないと宿代が出ないでしょ.アオカンするしかなかった.」
収入が途絶えがちになったため,頼みの綱がだった携帯電話の料金が引き落とせなくなり通話停止に.これで一層苦しくなってしまったそうだ.今は派遣会社への連絡は公衆電話で行っているが仕事を回して貰えるのは月に数日だけ.収入は4万円にならないという.

*1:「企業の生産性が低い」と「個々の労働者のスキルが低い」とは全然別個の概念だよね.監督がアホやと,どんだけ優秀な選手を集めても試合にゃ勝てないのよ.

*2:たとえば雁首揃えてダラダラ長時間続くだけで,何も決まらない無駄な会議とか.

*3:

ピープルウエア 第2版 ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

ピープルウエア 第2版 ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

ピープルウエア 第3版

ピープルウエア 第3版

*4:概念がないから,適切な訳語も存在しない.

*5:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20111014/p1

*6:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20131201/p3

*7:「バカンス」も,適切な日本語訳のない単語だな.そもそも日本にはバカンスの習慣がないから.

*8:「有給」じゃなくて,単なる解雇や雇い止め,派遣切りの類になるから.リーマンショック後なんて,有給取得率が一時的に上がったかもな.