日本のマスコミ関係者の英語力
「ニューヨーク市のヘルプデスク職員、自作のAIプログラムに仕事をさせて停職処分」
ニューヨーク市がヘルプデスクの電話対応の作業を自作のAIプログラムに代行させていたとして、このヘルプデスクの職員に対して停職20日間の処分を下していたことが判った。
この職員は、Ronald Dillonという人物で、彼は自分の声とそっくりの自動音声応答システムを自作してヘルプデスクにかかってくる様々な質問をそのAIシステムを使って答えさせていた。
http://www.businessnewsline.com/news/201510020954110000.html
http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/46463611.html
という記事が出た時点で「おかしい」「ウソだろ」と思った.
それ,AIというより音声認識と自然言語理解*1の世界だよね.しかもサポートセンターとかヘルプデスクにかかってくる電話なんて話題の幅が広くて要領を得ない物も多いから,内容を把握するAIなんてそんな簡単に作れっこない.*2
可能だとしても,せいぜいイライザレベルの人工無能でしょ.受信も音声電話ではなくチャットオンリーで.
と思っていたら,
いやそんなバカな。そんな自動応答システムは、仮に作れたとしても、一人の天才の手によって作れるわけがない。「すでに、多くのマスコミで報じられる状況」で、ニューヨークの出来事であるので、さぞかし英語圏の報道も多いであろうと検索してみたところ、以下のような記事が引っかかった。
City Worker Gets 20-Day Suspension for Using Robot Voice to Answer Phone - Civic Center - DNAinfo.com New York
http://www.dnainfo.com/new-york/20141031/civic-center/city-worker-gets-20-day-suspension-for-using-robot-voice-answer-phone日付は2014年10月31日、去年のニュースである。これによると、
ニューヨーク市の保健局の職員は、カスタマーサービスの電話にロボット声で対応したことにより、20日間の停職処分を受けた。処分を受けた職員のRonald Dillonは同僚と一般市民に対するコンピューター関係の問題を解決する職についているが、上司の注意にもかかわらず、電話の応答に、意図的にロボット風の声を出して応答したという。
http://cpplover.blogspot.jp/2015/10/ai.html
ふたをあけてみれば「やっぱり」というか,予想以上にアホくさい話であった.
http://togetter.com/li/881914
ひょっとして,音声ってこれ?
せめて,こんなのを期待したのだが.
なお,似たようなネタは,PRESS ENTERでも出たことがあった.
男性会員とチャットで普通に会話ができて、結婚まで決意させるプログラムがあるなら、それはすなわち、チューリングテストにパスした人工知能だということだ。そんな人工知能を<シルバースプーン>が保有しているなら、利益の出ない結婚相談所の経営などやらなくても、金を稼ぐ方法はいくらでもあるだろう。
『そうですか?あり得ると思いますけどね。一応、そういう可能性を調べてみてもらえませんか?』
SFの読み過ぎなんじゃないのか、とバカバカしく思ったものの、藁にもすがりたい気持ちなのは理解できた。
http://el.jibun.atmarkit.co.jp/pressenter/2013/04/4-7b96.html
SF読者はそんなことを思わないけどね.スパルタクスでさえ,人間との対話には苦労するんだから.
「アメリカで電子書籍の売上が大失速!やっぱり本は紙で読む?【最新レポート】電子出版革命のゆくえ」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45562
- id:nakashi 元記事 http://nyti.ms/1V9iOqe タイトルの印象は若干異なる/Amazonの価格を含めた戦略一つで結論がひっくり返りそうな気も。
ふむふむ.
The Plot Twist: E-Book Sales Slip, and Print Is Far From Dead
「(電子書籍)構想は歪んだ*3: 電子書籍の売れ行きは躓き,紙の書籍は死亡からはほど遠い」
くらいで,「大失速!」とも「やっぱり本で読む」とも主張してないな.
大失速とか急降下と言いたければ,plummet (まっすぐに落ちる,急落)や plunge (飛び込む,落ち込む)などを使うのでは.
本文の趣旨は「予測だと2015年までには電子書籍は紙の本を越えると思われたが,予想よりは(成長は?)鈍化していて,電子書籍の利用者でも紙の本に戻ったり,紙の本と電子書籍を併用する人も出だしている.」くらいで,「電子書籍が大失速」とは言ってないと思う.
日本語記事本文はそんなに酷くないが,タイトルはほとんど捏造と言って良いレベルだ.さすがは現代ビジネス.
(翻訳/オフィス松村)
念のため記録しておく.