ロボット・電子頭脳ものB級SFとフランケンシュタイン・コンプレックス
- 「機内で読んだ人工知能おもしろ本と人工知能に関するフィクションあれこれ」http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20160407/1459990311
だから基本的には楽しいロボット物というのが欧米にはない。
ロボットが出てくれば、一見、人間に従順なようでいて、実はふとしたきっかけで人間に対して反乱を起こす。
これもまた、欧米に根強く存在した、奴隷文化の歴史を彷彿とさせる宗教観に根付いている。
主語がでかい奴にありがちな,単なる釣り.
ところが少なくとも日本人は、ロボットや人工知能を友達や相棒のように扱ってきた。ドラえもんやコロ助である。それどころかマジンガーZ、ボトムズ、ガンダムのように、ロボットがむしろ人間の能力そのものを拡張する、人馬一体の装置としても描かれてきて、その世界観に慣れ親しんできた。
鉄腕アトムではロボットは本来「犯罪を犯す存在」で,ロボット法でロボットを縛ってる.*1 *2 鉄人28号は「良いも悪いもリモコン次第」.キカイダーは不完全な良心回路のバグで苦しむ.*3 六神合体では「正義の使者」だったガイヤーは原作では本来の使命に目覚めたマーズ(彼自身も一種のロボットだ!)の命令に従い地球ごと人類を抹殺する.ブレインは人類抹殺を画策するが,自ら生み出した17は造物主に対して反乱を起こす.タチコマ君にいたっては平然とサボタージュするし,命令違反して独自判断で殺人まで犯してる.*4 *5 少佐も彼らの反乱の可能性については常に注意しているくらい.おっと,キャシャーンはまさにフランケンシュタインそのものでしたね.
フィクションでロボットやマザーコンピュータが反乱を起こしたり人類の敵になったりするのは,日本でもむしろ普通の話では.*6
正義のために闘うナイト財団が開発した人工知能搭載マシン、Knight Industry 2000、通称ナイト2000、またはK.I.T.T.(キット)。"彼"は主人公、マイケル・ナイトの良き相棒として難事件に挑む。
KITTの話をしておきながら,双子の兄ともいうべきKARRの話を出さないのは片手落ち.
一方でR・ダニールはパートナー・イライジャと友情を育んでいた.*7「機械仕掛けの小さな生命」と「スター・トレック 叛乱」ではデータ少佐は上官の命令に背くが,それも倫理回路の成せる技.他にもスタトレだと「ノーマッド」や「V'ger」みたいなのも多いけど,「エクソコンプ」や「マッドの天使達」,「モリアーティ教授」や「EMH Mk-1」みたいな奴らも多い.
「造物主の掟」だと,人間の側がロボットを奴隷化しようと企む侵略者.
他に「ショートサーキット」とか「WALL・E」とか「ニューヨーク東8番街の奇蹟」ってのもあったような.エイリアン2のビショップなどは躊躇うことなく危険な任務に志願するなど,実に健気だった.スペオペの古典「キャプテン・フューチャー」のメンバーのうち二人も人造人間.*8 ロボコップも似たようなもんだが,アレは一応サイボーグか.
リメイクされた"Thunderbirds are go"ではMAX*9と呼ばれるAIロボットも登場している.*10
スターウォーズのR2-D2や、最近ではBB-8も忘れてはいけない。彼らはまさしく人間の相棒であり、高度な知能を持ったAIでもある。
R2-D2はデータ処理用とはいえ,持ち主の命令優先じゃないかな?つまりロボット三原則は組み込まれてない.*11
人間の敵になる可能性については,R2-D2は鉄人28号やターミネーターと同じくらいに危険だ.「良いも悪いも命令次第」で,命令さえあれば人を傷つけられるということだから.「サラ・コナーを殺せ」と命令されれば殺すために全力を尽くすし,「ジョン・コナーを守れ」と命令されれば守るために全力を尽くす.そこに善悪の判断は存在しない.そういえばバビル二世の「三つのしもべ」も,バビル二世の命令に従ってるだけで人類の味方になる保証はないのだったな.ナウシカの巨神兵やラピュタのロボット兵なんかと同じ.「町を焼き払え」と命令すれば,躊躇することなくそこにいる人間ごと焼き払うだろう.「神にも悪魔にもなれるマジンガーZ」もたぶんこっち枠だろ.*12
さらには最初から最後まで人類の敵って奴もいる.本来は大鉄人17とガイヤー,ザンダクロスもこっち枠に入る.
*13
- サイボーグ009「未来都市」
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/shi3z/20160407/1459990311
- id:rgbv この流れならアシモフにも言及して下さいよお、と信者の嘆き。前半フランケンシュタインコンプレックスの解説まんまじゃないですかーやだー/ロボとヒトのコンビでベイリ&ダニールが出ないなんてぇぇえ
激しく同意!!
ロボット三原則も知らずに,この手の話を語らんで欲しい.
- id:takekuma415 C-3POが人類の的になり得るなんて言うなら、ドラえもんなんて地球破壊爆弾を使おうとした前科があるので、どう考えてもドラえもんのほうが人類の敵になると思う。
しかもその動機が,「ネズミを根こそぎぶっ殺してやる」ため?
人間への危害より自分の身の安全の方を優先するとは,明らかに善悪の判断基準が間違ってると思う.
よくしらんけど,その手の本は多い印象.
素人目にはやっぱホラーものやパニックもののB級映画の方が受けるんだろう.
映画「アイ,ロボット」だってその一つ.
朝日新聞「「マンガのおかげでロボットへの恐れない」麻生氏が持論」
http://www.asahi.com/articles/ASJ537SRHJ53ULFA00Q.html
追記.
「アストロボーイ(鉄腕アトム)とかドラえもんは、人間が困った時に助けてくれる。そうしたフィロソフィー(哲学)が頭の中に入っているので、ロボットが我々の職場をとっていくという意識は、多くの日本人には極めて薄い」
それは違うと思う.
前述したように日本の漫画の中においてさえ,AIやロボットは危険な存在だった.まずは「アトムの最後」を読んでみるべし.
そもそも,それこそフィクションと現実の区別がついてないって言われるぞ.
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/articles/ASJ537SRHJ53ULFA00Q.html
- id:opensuse アジア開発銀行総会でこの発言をしたのかw アイザック・アシモフ氏に対して失礼。
- id:chaxahc 流石は閣下だ。海外ではロボットといえば人間に恐怖を与える存在で、アシモフのようなイメージは少なかったからな。
- id:etr 「良いも悪いもリモコン次第」ではないのか?
- id:fusanosuke_n 「新造人間キャシャーン」「機動武闘伝Gガンダム」「バブルガムクライシス」OVA版「ヴァンドレッド」「無敵超人ザンボット3」「無人惑星 サヴァイヴ」AIが反乱する漫画アニメいっぱいあるで。
- id:moons マンガと現実の区別がつかないのはよくないと思います
*1:「アトムの最後」に至っては...https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%9C%80%E5%BE%8C
「ぼくたちの時代には人間とロボットは、うわべはうまくいっていたよう見えました。どうしてこうなってしまったのか……。あれはごまかしだったんでしょうか?ほんとは信じてなかったのかも……」
*2:電子頭脳や人工知性じゃないけど,「三つ目が通る」なんかだと「三つ目族は人間と異なる種なのだから,価値観や道徳観念が人間と異なってて当然」というスタンスだったなあ.手塚治虫は.
*5:アナライザーはスカートめくりをしてたような……. 1/12 AU-09 アナライザー (宇宙戦艦ヤマト2199)
「酒を飲んで酔っ払う」のもまずい.付き合いで一緒に食事したり酔っ払うフリをするのはありだけど,本当に酔っ払ってしまうようでは任務に支障が出る.
*6:ひょっとして手塚治虫や横山光輝や石ノ森章太郎は、日本人じゃないとでもいうつもりなのだろうか?
*7:そういえばR・28号も世界征服用だったか.
*8:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%97%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC
*9:"Mechanical Assistant, E(x)perimental" "MAX lives on Tracy Island and is used for chores and labour, but is considered a member of the family, especially to Brains." http://thunderbirds.wikia.com/wiki/MAX
*10:旧作のブレインマン相当? http://www.chara-net.com/item29411.html
*11:でなければ戦闘艦には積み込めないし,ルークにライトセイバーを手渡すこともできない.
*12:「お前は・・・ 兜 甲児は、力を手に入れた!そう、神にも悪魔にも!神となり、人類を救うことも。悪魔となり、世界を滅ぼすことも。お前の自由だ、お前が選べ。」 http://www.geocities.jp/triwingslc20/m_mgz.html
*13:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%BC%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%81%AE%E5%AE%87%E5%AE%99%E6%88%A6%E4%BA%89