ZMPロボットタクシー 悲喜こもごも


https://robottaxi.com/
なんかいろいろあったらしいのでメモ.

DeNAZMPとの提携解消

解消の理由についてDeNAは「このたび、ロボットタクシーの運営方針の違いから、両社は別々の取組みを行うことが最善であるという考えに至り、業務提携を解消する運びとなりました」とリリースに記している。

「自動運転ベンチャーZMPが上場への障害物を避けきれず緊急停止、ゴール直前に退場」

http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65879785.html

日経ITpro「ZMPとの「ロボットタクシー」提携解消、DeNAが相次ぎベンチャー活用でつまづく理由」

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/040800083/011100089/

ZMPの発言

https://twitter.com/exZeroMoment

怪文書ではあるのだが...

抜けるようなケーブルを使うこと自体がよくないのと,それを検出する機構もないし,フェイルセーフにもなってない設計ミスか.


激しく同意.



話半分でも笑えない.


タイムカードとか社内での発言に関してはともかく,自社の技術力に対する誹謗中傷なら払拭するのは簡単なんだよね.たとえば自動運転車をユーザーに貸し出して,丸一日好きなように走ってもらえば良い.できれば土砂降りの雨の日とか,冬場の豪雪地帯がいいかな.*1


実現できるの?

そもそも「ロボットタクシー」なんて,本気で実現出来ると思っているのか.


手を上げてる乗客を認識できるのか.それともスマホやPCから予約必須?過疎で採算割れしてる地域に導入したとして黒字化できるのか.都会なら採算性はよくなるが,難易度は格段に上がり実用化はもっと先だ.イタズラや誤操作,酔っ払いへの対応は?

にわか雨や積雪,凍結路面,濃霧などの悪天候にも弱いが,「無人運転」ならそれらすべてに完全に対応する必用がある.冬の日本海側や梅雨,台風シーズンなんかはほとんど不可能だろう.

風で飛んできたTシャツとかの洗濯物が転がってるだけで立ち往生しそうだ.*2放置自転車やバイクなら,障害物の認識は出来ても移動させられずに完全にお手上げになることも.事故で臨時の交通規制があった時は?命令無しに自動的に迂回路を探して進路変更したりはできんだろう.*3事故現場で乗客に降りろというのか.

  • インターネットから配車予約を申し込んだ参加者の自宅前につながる狭幅路など、中央けやき通り以外の道では乗員による手動運転で走行する。
  • 本来のスケジュールでは、車両説明とインタビューのあとに実験車両が走行している姿を見学できる予定だったが、午後から急な荒天となってしまい、自動運転の実証実験は見学できなかった。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/746045.html

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20160520/p1


仮に実現可能なら,大企業相手に戦うのは難しい分野だぞ.試作車一台作るだけでもバカみたいに金がかかる.それが複数台必要になる.テストコースはどうする.自動車メーカーなら自社のテストコースくらいあるだろうが,まさかベンチャーがそんなものを所持するのか.毎回サーキットでも借りるのか.雪道でのテストを行うなら,雪国でテストする必用もあるだろう.山道や濃霧の発生しやすい地域でのテストも必用かもしれない.完成したとしてその車を短期間で量産できる?世界中で売りさばくための販売網を持ってる?故障した際のサポート体制は?サポートもできない自動車を,ユーザーは買ってくれるだろうか?量産できなければ,もたもたしてるうちに他の企業が量産して,黒船来航してくるよ.WindowsパソコンやiPhone/Androidスマホのように.

2億の研究費でどこまでやれるのか

[リンク先,研究開発表.自動車メーカー7車合計で約2兆8千億円]

僕は純粋に、2億ぽっちで何が出来るのか?と思ってしまいました。

自動運転は確かに可能性の塊で、その市場規模は大きく、移動手段の広告化など応用も効くでしょう。だからこそ国内メーカーだけでなく海外も、車メーカーだけでなくGoogleなどのIT企業もこぞって参戦している市場であります。レッドオーシャンです。そんな中でZMPの規模はあまりに小さく、また特徴と言えるほどの特徴が見えない状況であまりにもてはやされていないか…と思ってしまうのです。

http://temcee.hatenablog.com/entry/zmp

日経ビジネスZMP社長、上場延期・DeNA提携解消の経緯を独白」

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011300533/
ZMP側の言い分.さて,どうなることやら.

上場を控え、ロードショー(上場前の機関投資家への説明会)が始まる前日に顧客情報の流出に関する報告を受けました。その時は原因究明もできていない状態でしたので、(上場延期に関しては)考えていませんでした。

自動運転ってお金がかかるイメージがありますが、うちの場合そこまでお金はかかっていないんですよ。昔から積み重ねてきたベースもありますし、自前で色々作っているので、現在のフェーズではそんなに驚くほどの投資は必要ありません。

「自前で作るからお金かからん」って,そうか?複雑なハード&ソフトウエアの独自技術開発で,金かからんわけがないと思うんだけど.

ZMPに出資をしている米インテルとの間に、「2016年までに上場しなければ出資を引き上げる」との契約が存在していると言われています。事実ですか。

谷口:そんな事実は一切ありません。もちろん確認もしました。

ロボットタクシーが目指しているのは旅客サービスです。一方の自動車メーカーは、ユーザーがお客さんなので運転支援のレベル1や2です。我々が目指すレベル4(完全自動運転:基本的に人は運転しない)にするメリットは自動車メーカーにはありません。BtoC市場におけるレベル4の実現は10年以上かかってしまうと思います。その一方、ロボットタクシーのようなBtoBは専用企業が運用管理し、用途が決まっているので実現は早いのです。

うーん....一般の通行人や他の車,さらには悪天候が,BtoCの車だけを特別扱いして避けてくれるとは限らんのだが...


雪道への対応とか,吹雪や集中豪雨時での安全性とか,その辺の説明がないのがなあ.日本は無人タクシーにとっては過酷な環境なので,サービス開始するにはそれらへの対応が必須だと思うんだけどね.

Wired「自律走行車の試験走行にはボストンが最適、といういくつかの理由」
ボストンの交通事情は、ひどい渋滞、入り組んだ道路、厳しい冬の寒さ、そして調査で裏付けられた全米最悪のドライヴァーたちで有名だ。そのボストンの南部にて、地元のスタートアップnuTonomy(ニュートノミー)が自律走行車の技術テストを行っている。

ボストンという街はロボットカーにとっては悲惨な環境のように思えるが、だからこそ理想的な場所だ。狭い道路は通行人で混雑し、走行には複雑な判断が必要となる。雪が降れば、クルマのカメラが車線マーカーや道路標識を読み取るのが難しくなる。「これまでに体験したことのない困難に遭遇すると思います」と、nuTonomy創業者のカール・ラネンマは言う。

http://wired.jp/2017/01/13/nutonomy-autonomous-cars/

http://b.hatena.ne.jp/entry/business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011300533/

  • id:lifefucker 2年くらい前に投資を考えていて技術見にいったけど思った以上に技術がしょぼくてがっかりした/今は知らない

うーん.

ジャフコ、ZMP投資のつまずき」

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12161540W7A120C1000000/

ベンチャーキャピタル(VC)大手、ジャフコの利益が急減している。20日に発表した2016年4〜12月期の連結決算は、純利益が92億円と前年同期から4割も落ち込んだ。誤算は自動運転技術を開発する出資先のZMP(東京・文京)の上場延期だ。ジャフコは12月の上場で得るはずだった売却益を計上できなくなった。08年のリーマン・ショック後に投資先を絞り込み、経営への関与を強める「厳選集中投資」路線にカジを切ったが、今回はこれが裏目に出た形だ。

VCファンドを通じてZMPの発行済み株式数の1割を保有していたジャフコは期待できた数十億円の利益を失ったことになる。ジャフコの松田氏は「今後も経営関与を続けるつもりだが、ファンドの運用期限の制約もある」といい、長く保有することが難しい可能性があるとの認識を示した。

ベンチャーキャピタルだから,その程度は自己責任といえば自己責任だが,だからといって上場をドタキャンした会社の信用失墜は避けられないと思うな.

*1:「AlphaGo vs イセドル」戦なんて,そういう噂を払拭するためのものでもあるでしょ.「世界最強クラスの囲碁プログラムを作りました」とプレスリリースを出すくらいなら,「天才」相手に真剣勝負を挑んだ方が早い.

*2:それが服だけなのか,中身が入ってるかの判定プログラムを作るのが難しい.服だけと思って駐車場で寝ている高校生や泥酔したおっさんを試しに轢き殺すわけにはいくまい.それ専用の画像認識アプリなら理論上は実現可能かもしれないが,コストや開発期間から見て非現実的だろう.

*3:仮に可能でもコストがねえ...

*4:「転職口コミサイトの転職会議では、元従業員の会社に対する評価と口コミを見ることができるんだけど、ZMPを辞めた人たちはZMPに対して辛らつな意見を述べている人が多い。
これを読む限りでは、自動運転技術はさほど進んでいないのではないか? とも思える。」