"Only the Paranoid Survive"

興味深かったのでメモ.

本書『パラノイアだけが生き残る』は『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』に続くアンディー・グローブの名著復刻第二弾。Kindle版も配信している。 『インテル戦略転換』の復刊だが昨日書かれたかと思うほど内容はタイムリーだ。

インテル戦略転換 Only the Paranoid Survive Only the Paranoid Survive: How to Exploit the Crisis Points That Challenge Every Company (English Edition)
えらくタイトルが違うな.日本ではポジティブシンキングが成功することになってたからなあ.

シリコンバレーの発展と歩調を合わせて業績は順風満帆だったが、80年代に入ると日本メーカーがDRAM製造分野の主導権を握り、その攻勢にIntelは倒産の瀬戸際まで追い詰められた。

この本で印象的な一節は1985年半ばに会長、CEOだったゴードン・ムーアと社長だったグローブとの会話だ。

グローブ:もしわれわれが追い出され、取締役会が新しいCEOを任命したとしたら、その男は、いったいどんな策を取ると思うかい?ムーア:メモリー事業からの撤退だろうな。グローブ:(略)それをわれわれの手でやろうじゃないか。

グローブは打ち寄せる大波を押し返すような力技を発揮してDRAM生産を終了させ、IntelをCPUメーカーへと方向転換した。

日本製DRAMの販売攻勢によってIntelが直面したのも「メモリー製造では食っていけない」という戦略転換点だった。


前書きより

本書のタイトルを改めて見て欲しい.「パラノイアが成功する」ではなく「パラノイアだけが生き残る」である.パラノイアでなくても成功することもある.ただ,その後にやってくる悪い兆候を察知し,適切に対処し生き残ることが出来るのはパラノイアだけなのだ.

日本「半導体」敗戦 日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)
次の波を乗り越え損ねた者たちの末路.

パラノイア気質を備えているかどうかを判断するのは,実はそれほど難しくはない.たとえば私は,起業家や部下にある簡単な仕事を頼んでいる.それは,宴会の幹事やグループ旅行の幹事だ.
(中略)
パラノイア気質が少しでもあれば,遅刻するかも,雨が降るかも,寒いかも,トイレに行きたくなるかもと言ったあらゆるトラブルを想定して計画を組んでいるはずである.

そもそも新規事業や起業は,9割以上がうまくいかないものだ.旅行以上にトラブルが続出する.だから,うまくいかない前提で,トラブルを想像して準備をしておかなくては,成功できないし,成功を継続できない.

この辺の「パラノイア気質」については,プログラマーにも必用な素質だろう.

あらゆるトラブルを予想し,その全てに対策を施したコードを書かなければ,安定して動作することはない.*1

「米トイザラス破産申請=ネット通販台頭で打撃」

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017091900575&g=int
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170919-00000043-jij-n_ame
とか書いてたら,今度は米トイザらスが経営破綻だってばよ.

【ニューヨーク時事】米玩具販売大手トイザラスは18日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用をバージニア州の裁判所に申請した。

 アマゾン・ドット・コムをはじめとするインターネット通販の台頭や、ウォルマート・ストアーズなど大型量販店の安値攻勢に押され、業績不振に陥っていた。2000近くある世界中の店舗と、ネットを通じた営業はこれまで通り続けるという。

生き残るのは大変だ

*1:「運用で回避」という選択も,しばしば行われるけど.その場合でもマニュアルに一言必用だわな.