オオカミ少女は嘘だった
懐かしいネタだが,なぜかホットエントリに.
「世界中で研究“オオカミに育てられた子”の実記は嘘だった…(その1)」
ところがある日、父は、苦々しい顔で私に言ったのだ。
- 作者: J.A.L.シング,中野善達,清水知子
- 出版社/メーカー: 福村出版
- 発売日: 1977/01/01
- メディア: 単行本
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「この本、ウソやったんや……」
http://www.gentosha.jp/articles/-/10074
http://www.gentosha.jp/articles/-/10075
たぶんこの本だったけど,
動物たちの社会を読む―比較生態学からみたヒトと動物 (ブルーバックス)
- 作者: 小原秀雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1987/11
- メディア: 新書
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その中では,とうの昔から生物学者の中ではあの話はウソだというのが定説になってるみたいな書き方がされていた.ちゃんと科学的根拠も列挙されていたし,納得できる話だった.
既に1987年の時点で,生物学者の世界ではとっくにそういう扱いだったのだろう.
この少女たちの話の真実性は、生物学的にも疑問があります。シング牧師の記している狼少女の特徴は、漫画的というか「もしも狼に育てられたらこんな感じになるだろう」というイメージを当てはめているので、非常におかしいことが分かります。
http://www.chironoworks.com/ragnarok/psychology/log/eid26.html1:狼少女が木登りをしたり真夜中に遠吠えをするという話が出てくるが、狼は木に登らないし、真夜中に遠吠えしません。
2:狼の子どもは自分から乳房に近づきますが、人間は母親から乳房を寄せる必要があります。
3:狼は時速45km前後で走るが、人間は大人の限界で35kmしか走れない。子どもが狼についていけるはずがありません(しかも四足歩行で)。
4:シング牧師が記している「夜中に目がギラギラ光る」「犬歯が異常に伸びている」「汗をかかない」「夜の方がよく目が見える」という性質を人間が持つことは生物学的にありえません。
5:狼のミルクと人間の母乳は成分が違いすぎるため、人間の赤子は飲めません。
生育期間の違いも上がってたかな.人間の赤ん坊は一年たってもヨチヨチ歩きだけど,オオカミだとそのくらいでとっくに走れるようになってるとか.
それらの困難を乗り越えて,オオカミが人間の子供を「保護する」くらいならひょっとしたらあるかもしれない.*1 でも,オオカミが人間の子供を「育てる」のは不可能だし*2,オオカミに育てられた人間の眼球が突然変異したりもしないのだ.
所要で東京に出る新幹線の中で、『動物たちの社会を読む―比較生態学からみたヒトと動物』(小原秀雄著、講談社ブルーバックス)を読みました。
この中に「二つオオカミフィクション」というセクションがあり、先に紹介したエントリー『狼少女は捏造だった』に頂いたコメントの元になった記述がありました。
それによると、「狼少女」の虚妄さを明らかにしたのはアメリカのオグバーンという人だそうで、「心理学の専門誌に論文として協同調査間のインド人ボースと共に1995年に載せられていた。しかもそれは、日本でも翻訳されたベッテルハイム編著『野生児と自閉症児』(福村書店刊)に採録されている」ということです。
- 作者: B.ベッテルハイム,中野善達
- 出版社/メーカー: 福村出版
- 発売日: 1978/07/01
- メディア: 単行本
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https://nosumi.exblog.jp/2493421/
- 出版社/メーカー: 福村出版
- 発売日: 1978/07
- メディア: ?
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これとは違うけど歴史的に有名な捏造事件としては,ピルトダウン人事件などもある.
- 作者: フランクスペンサー,Frank Spencer,山口敏
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1996/04/10
- メディア: 単行本
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捏造されたミッシングリンク: ピルトダウン人を捏造したのはだれだ? レトロハッカーズ
- 作者: 牧野武文
- 出版社/メーカー: 牧野武文
- 発売日: 2013/05/08
- メディア: Kindle版
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http://b.hatena.ne.jp/entry/www.gentosha.jp/articles/-/10074
- id:notomata この話の悪質な点はほぼ否定された後もずっと衆目に晒され続けたこと。自分が最初に見たのは家庭科の教科書か便覧だったと思うが、その頃には日本語で読める批判文献もあったはず。業者と文部省(当時)が仕事してない
- id:hathatchan 子供のしつけの本などではカマラの話はいまだにドヤ引用されていて、…ってなる。
IT業界にいると,そういうデマは今も日常茶飯事な気がする.学術的な勉強を全くしてない自称専門家とマスゴミ連中には恐れ入る.
- id:dadabreton Wikipedia"アマラとカマラ" https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%81%A8%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%83%A9
- id:dgwingtong 嘘だったと告げられたのはだいぶ昔のようなのに何時の話だ。この話が無かったらオオカミ少年ケンも無かったのかな。
- id:y-mat2006 何を今更と言う話であるが、知見を得るチャンネルの少ない人にとっては世界はさぞや衝撃的で新鮮なのだろうなあと。
- id:bottomzlife (゚Д゚)ハァ? 「狼少女はいなかった」という有名な先行文献があるのにひとことも触れられてないの? https://amzn.to/2GSnC3R 常識だと思ってた
- 作者: 鈴木光太郎
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2008/10/03
- メディア: 単行本
- 購入: 13人 クリック: 89回
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- id:masayuki-as 宣伝記事にあれだが、嘘を作り出す構造をそのまま継承しているように読める。 今読むなら新曜社版(2008)より、増補版がおすすめ(ちくま文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/4480432698/
増補 オオカミ少女はいなかった: スキャンダラスな心理学 (ちくま文庫)
- 作者: 鈴木 光太郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/05/08
- メディア: 文庫
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