SI業界は建設業界に似ているというのは本当か?

http://blogs.itmedia.co.jp/pina/2005/11/post_8b60.html
メモ.
またこのネタか.

結論からいうと,本来の性質は全く異なる.日本のIT業界が持つ構造的問題が,建設業界の持つ構造的問題と見た目上は類似しているだけにすぎない.

  • 請負型で労働集約型産業構造はそっくり
  • 多重化された下請けによって事業が成り立っていることは同じ

悲しいことに現状ではこの通りになっている.これが非生産的になる大きな理由だ.

  • プロジェクトマネジメントが必要である

輪をかけて非生産的にしているのがコレ.建設業界の悪いところを真似して,無駄なことに力を注いで結果的に自滅している.*1

  • 市場がほぼ国内で、グローバルな競争をしていない

基本的にサービス業であるため,地域密着型で輸出はありえない.ソフトウエア製品に関しては輸出も可能性としてはありうるのだが,多くの企業が多重下請け型丸投げ産業になっているため,輸出すべき製品がほとんどない.*2

  • 労働単価が曖昧
  • 積算基準がない

生産性も品質も人によって文字通りに「桁違い」であるため,本来なら単価も桁違いにすべきなのである.子供の落書きとゴッホピカソの代表作ならば値段も大きく異なる.生産性も品質も異なるにも関わらず横並びで同じ金額というほうが異常なのだ.*3

  • 工期遵守意識が希薄

人間や作業機械を追加するだけで容易に納期短縮できる建設業界と,納期間際に人を追加すればかえって納期遅れを生じるIT業界との差が原因.IT業界では納期短縮が遙かに難しく,意識だけでは実現できない.

人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない (Professional computing series (別巻3))

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ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ

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ただし,製造フェーズに関しては極めて高品質,かつばらつきなく製造されている.ばらつきが生じるのは開発段階,即ち設計フェーズにおいてである.
http://www.biwa.ne.jp/~mmura/SoftwareDevelopment/WhatIsSoftwareDesignJ.html

またITでは納期を短縮するために品質を落とせば,あとでシステムトラブルを招いて大きな問題に発展しやすく,納期を短縮するために品質を落とすという選択肢は取りにくい*4.これに対し建設では欠陥マンションを造ってもトンネルにコールドジョイントが残っていても,実際に大惨事でも起こらない限りは滅多なことでは発覚しない.また発覚した後でも住民が建設業者を相手取って裁判を戦うのは楽ではなく,泣き寝入りすることも多いだろう.*5

*1:運動不足と過食が原因のII型糖尿病患者に対し,インシュリンを大量投与して寿命を縮めるようなもの.そういう患者に対して行うべき治療はインシュリン注射ではなく,カロリー制限と運動療法,即ち「生活習慣の改善」だ.かつて成人病と呼ばれていた物が生活習慣病という呼び名に改められたのも,このあたりの事情による.

*2:ゲームソフトに限れば完全に輸出超過かな?

*3:そうそう.例の構造計算書偽造事件において,総研(総合経営研究所)とやらに支払ったコンサル料だとかについては,合理的な説明があるのだろうか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051214-00000057-mai-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051214-00000041-mai-pol

*4:実際にそうした結果が最近話題になっている.

*5:欠陥を取り除くために工事をやり直せば納期遅れが発生する.しかし欠陥マンションを建てて住民が入居した後に,あらためて補強したり建て直した場合は「納期遅れ」に含まれない.数字のトリックにすぎないのだわな.

名証の売買システムにも東証と同じ不具合、いずれも富士通製

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20051213/226170/

どうやら単純なミスと言うよりは設計段階から含まれていたものなんだろう。でもねえ.最終的にはこれは証券業界のルール次第なんですよ.

ストップ高・安は入力前から計算で判るものである。◆試しにマイナスの値や小数点以下の株価を入力したら、どう処理されるのかという部分には興味があるのだが、

うむ.これについてはごもっとも.
http://mnfuji2.hp.infoseek.co.jp/