それはマッチポンプという奴ですよ

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/82654faa9356a65a4b66371eddb59142
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/baab4ffbc75c641370747a59f442ccba

ウェブ進化論』にしても本書にしても、グーグルが日本でこうも崇拝されるのはなぜだろうか。

それは違う.
ウェブ進化論」(と「グーグル」)だけgoogleを崇拝した書き方をしているだけ.*1一度そういう本が出ると「ウェブ進化論は間違いだらけだ!」とそれを批判する本を書くよりは,内容を焼き直して「ウェブ進化論はすごい.グーグル万歳.」という本を書く方がずっと楽です.知識もポリシーもない人ならば安易に前例にならう道を選ぶでしょう.


たしかにGoogle検索エンジンとしては後発でありながら,検索結果の質の高さから並み居る競合をうち倒してNo1に躍り出たアメリカンドリームを具現した存在とはいえ,ただそれだけです.「あちら側対こちら側」なんて屁理屈はIT業界の人はほとんど無視していると思いますよ.

先日も、田原総一朗氏に「グーグルのどこがすごいの?」と聞かれて、答に困った。検索エンジンとしての性能は、今ではヤフーやMSNなどもそう変わらない。

「検索結果の質の高さ」と「デファクトスタンダードであること」でしょうね.

広告ビジネスで考えた場合,広告主は最も利用者数の多いメディアを使いたいものです.視聴率0.1%の番組と視聴率40%の番組があれば,視聴率40%の番組でCMを流したいのは当然だ.

問題は、この先ネット広告がどれぐらい増える余地があるかということだ。(中略)経済学でよくやるように、成長とともに各メディアの広告の限界効率が均等化すると想定すると、新聞・雑誌・テレビ・ネットに各20〜25%というのが妥当なところではないか。

新聞,雑誌,テレビは「垂れ流し式」の広告であるのに対し,googleなどではユーザーの入力に合わせた広告が提供できる点が異なる.よくある例えだが「グァム 旅行 格安」などで検索をかけて「格安グァム旅行」や「格安アメリカ西海岸旅行」の広告が出るというのがコレ.格安旅行に興味ある人だけをフィルタリングするので広告の効率が良い.*2

とはいえ広告の何割が取れるかというのは不明だし,パイ自体のサイズもさほど変わるまい.ネット向きの広告がある一方で不向きな広告もあるだろう.広告ビジネスが倍々ゲームで増えるなんてGoogle内部の人も思ってないと思うなあ.だからこそヘッドハンティングと技術開発に熱心なわけで.

それにしても、グーグルの時価総額がホンダとニッサンの合計より大きいというのは理解できない。

それは株主に言ってください.株価なんてのは株を買う人が上がると思えば上がるし,下がると思えば下がるものです.実体とはなんら関係はありません.

*1:googleについての定番書籍「ザ・サーチ グーグルが世界を変えた」は別に特別扱いしていなかったと思うけど.

*2:「B29による絨毯爆撃」対「巡航ミサイルによるピンポイント攻撃」くらいの差がある.最初から全国民の大多数をターゲットにした宣伝をするなら「絨毯爆撃」で良い.しかしおそらく広告ビジネスの大半はそうではなく,ピンポイント攻撃の方が遙かに効率がよい.

フランスの新雇用政策の真の狙い?

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/29/
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q2/503022/

「真の狙いは若者を雇用調整弁にすること」
 だが、もはや移民系労働者だけでは雇用調整ができなくなってきた。そこで、新たな調整弁として若者全体に網をかけるCPEを作り出した。それが今回の事件の真相である。

うーむ,こうまで意見が正反対とは.

なぜ若年層の失業率が高留まるかといえば、一度雇用されるとまず解雇されないという雇用制度によるところが大きい。年長の正社員が減らない以上、割を食うのは学生であり、しかもその少ない求人枠に応募しても「定年まで雇用できるかどうか」という厳しいハードルを課されるためだ。

組合が強いと結果的に若者が締め出されるという構図はどこも同じらしい。


つまりフランス政府としては「26歳までなら即時解雇できるようにするから、とりあえず採用してね」と企業にメッセージを送ったわけだ。一方の若者側は「なんで俺達だけ解雇されるんだ」と怒っているわけだが、全体として経営側の解雇権の濫用に歯止めをかけつつ、採用時の門戸のみを広げることで、若年失業率という意味では一定の効果はあると思う。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17090/2420178#2420178

全く同じ問題を抱える日本の現状を見ると,後者の意見の方が説得力がある.

本気で雇用調整を目的とするのであれば,若者の採用をちょっとくらい減らしても問題は解決しない.むしろ給料だけは高いけどパフォーマンスが低い*1中高年管理職を適度に減らした方が,高コスト体質の解消には効果的だ.

実はCPEにはお手本がある。アメリカ企業で広く採用されている「先任権制度(シニョリティ・システム)」である。特に工場労働者がそうだが、景気が悪くなって雇用調整が必要になったとき、勤続年数の少ない従業員からレイオフ(一時解雇)する制度である。

"seniority system"かな?要するに日本企業の十八番「年功序列」だよね.工場労働者を上げずとも日本企業を例に上げればいい.

ちなみに能力が同じである限り,勤続年数が少ない社員から順にレイオフ対象にするのは合理的な判断だ.あくまで「能力が同じである限り」だが,勤続年数が長ければ長いほどその業務に精通しており,より企業にとって価値のある存在といえるから.また勤続年数が長い人を(若干)優遇することで,長期間勤務を奨励する意味もあるのだろう.特に米国の様に人材の流動性が高い社会ではこういう対策も必要になる.

アメリカの雇用システムは公正な自由競争で、実力主義と見られているが、実は若者を踏み台に、古株の既得権を守る制度である。

うーん,年功序列(seniority system)ベースで一度管理職になればどれほどの損失を出し会社に損害を与えても責任を問われることのない日本に比べると,年寄りの管理職でも成果が出なければ降格や解雇の対象になる米国は十分能力主義(merit sysytem?)だと思うがなあ.年功序列を使って若者を踏み台にするのは日本企業の十八番です.

そして、第4にいざ戦争となれば、最前線に送り込む兵隊要員として利用する。

かなりこじつけっぽい.

ぶっちゃけ,そういう意識で放り込まれた兵士が最前線で役に立つとは思えないな.士気が最低で国に対する忠誠心も使命感もない兵士だと,いざ戦争となって敵の弾が飛んできて命の危険にさらされたら尻尾を巻いて逃げだしかねない*2.そうでないなら無理矢理放り込む必要もあるまい.

こうしたフランスの動きは対岸の火事ではない。日本でも実は同じ構造になりつつある。

ある意味ではそのとおりだ.

若者中心に急速に非正社員比率が高まり、失業と低賃金化が進んでいる。そして保守系の人たちは「フリーター、ニートはけしからん。奴らが働かないからダメなんだ」という。

強力な年功序列があるために若者の雇用が進まない一方で,低パフォーマンスの中高年管理職の存在が人件費を高騰させ,企業の重荷になっている.今や年功序列と横並び評価の廃止と成果主義実力主義への変化は必然なのだが,これらを取り入れようとすると(特に実力の伴わない)保守的な中高年より猛反発をうけて,なかなか進まない.それでもやっとのことで形だけ採用した企業では,建前としては成果主義でありながら実際には若手の給与削減策として恣意的に運用することになる.

*1:時として足を引っ張るだけでマイナスの.

*2:上司が作ったデスマーチに入社早々放り込まれた,何も知らない新入社員のようなものだね.そのデスマーチに対して一切責任がないのに,上司の尻拭いだけ押し付けられれば士気は下がる一方.死亡率にしても下手な近代戦よりデスマーチの方が高かったりして.orz