「楽天「Kobo Touch(コボタッチ)」が売れない9つの理由と電子書籍の未来」?

http://blog.livedoor.jp/tkfire85/archives/55531754.html

Kobo Touchが売れない理由」と言いつつ,実際はKoboTouch特有の事情はあんまり扱ってない.

全般的に出版業界からお金を貰って書いたかのような強引な論理展開が目に付く.この記事から判断すると,この人は

  • Kindlekoboも触ったこともない.
  • それどころか電子書籍端末のレビュー記事さえ満足に読んでない.
  • 米国出版業界の話をしているのに,ペーパーバックの存在さえ知らない(或いは知らないフリをしている)
  • 同様に日本でも,文庫本や新書以外に大判書籍があることをなぜか知らない.(或いは知らないフリをしている)
  • Amazon.comのサイトを見たことが無い.

ということになる.これで電子書籍の未来を語るのには無理があると思う.

8.付箋、マーカーが惹けない。

はいアウト.

それらの機能はKindleにも(たぶん楽天Koboにも)既にある.「書き込みに制約がある」というならまだしも,「付箋,マーカーがひけない」と書いてるのはそういう機能があることさえ知らないということだろう.*1 電車内においてはむしろ電子書籍の方がマーカーはひきやすい.今までは揺れる車内で吊革につかまった手で本を持ちながら,もう片手でマーカーのキャップをあけてまっすぐに線をひくのは至難の業だった.Kindleにおいては,もはやそうではない.

これはKindleKoboも触りもしないで自分の思い込みだけで書いてるだろ.それどころか解説記事もろくに読んでないな.

1.本を読む電子書籍端末としては最適だが、初期投資は大きい。

うーん,Koboストアはまず書籍が全然ないから結論は出せないが,米Kindleストアに関して言えば,技術書の数冊も買えば元が取れるレベル.またKindleに関して言えば,各種ソフトがあるのでそれを使えば(PCやスマフォ,iPhone,iPad等の所有者ならば)初期投資は不要.*2 Koboについても同様なソフトウエアはあるはず.

それと紙の書籍を保管するのって,意外とコストがかかるんだよね.誰もが広大な敷地のある田舎の家に住んでいるわけではない.書籍好きな人ほど置き場所に困って古い本から泣く泣く捨てた経験はあるはず.

2.張り巡らされた書店網

電子書籍の一番のライバルは実は楽天ブックスであったり、Amazon.co.jpだったりする。つまり自社で抱える書籍販売部門だ。それに加えて日本中にあるリアル書店もライバルであったりする。今やどこの駅を降りても相当な田舎でない限り、書店の1軒や2軒はあるだろう。東京であれば、なおさら「ジュンク堂」とか「ブックファースト」とか色々な大型書店がある。大抵の本は書店で買う事ができるだろう。

えらくタイムリーなニュースがあった.

「増える 書店ゼロの街」

街のどこにも本屋さんがない。そんな市町村が増えている。首都圏でも、筑波研究学園都市に隣接する茨城県つくばみらい市が、全国に四つある「書店ゼロの市」の一つに。一方、北海道留萌(るもい)市では官民一体となって書店を誘致し、ゼロから抜け出すなど、新しい動きも出始めている。 (中村陽子、写真も)

 「本をどこで買いますか?」。つくばみらい市内のつくばエクスプレス(TX)「みらい平」駅前。立ち話をしていた三十代の主婦二人に質問すると「ないんですよ、本屋さんが」と、顔を見合わせてうなずいた。「引っ越してきてびっくりしました。大の読書家の夫は、車で隣の守谷市まで買いに行ってます」

 二〇〇六年に伊奈町谷和原村が合併したつくばみらい市みらい平駅から都心の秋葉原駅まで、〇五年に開通したTXで最速四十分というアクセスの良さもあり、六年間で人口が一割以上増えて四万六千人余になった。ところが近隣の市に大型書店ができた影響などから、関東鉄道小絹(こきぬ)駅近くのチェーン書店が閉店。五年ほど前から市内に書店がない状態だ。

 書店の動向に詳しい出版社「アルメディア」(東京)の加賀美幹雄代表は、TX発着駅の秋葉原に大型書店ができたことを挙げ「地元客が大都市の商圏に吸収されてしまった可能性もある」とみる。同社の調査では、今年五月現在、全国の自治体の17%にあたる三百十七市町村が「書店ゼロ」。五年前より八市町村増えた。市では、鹿児島県垂水(たるみず)市でも書店が姿を消した。

 つくばみらい市には昨年、駅前への書店誘致を求める投書が相次いだ。市産業経済課がチェーンの書店に出店を働き掛けたが、色よい返事はなかったという。「民間の商売なので、こちらの希望だけで進めるのは難しい」と担当者は話す。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012081290070300.html

「書店数減少歯止めかからず… 挑戦する街の本屋さん、生き残りの道は」
ビール片手に、野菜直売所、女性に特化…

 出版市場の縮小やネット書店の台頭で淘汰(とうた)の波にさらされる街の書店が、生き残りの道を模索している。ネット全盛時代に、いかにして足を運びたくなる魅力的な空間をつくるか−。個性的な試みを始めた書店を訪ねてみると、「複合」と「特化」というキーワードが浮かんできた。(海老沢類)
(中略)
1年で365店減少
 書店の調査を手がけるアルメディア(東京)によると、全国の書店数は1万4696店(5月1日現在)。昨年同月の1万5061店から365店減り、平成9年の2万2279店をピークに、減少に歯止めがかからない。一方で売り場面積は増加傾向にあり、豊富な品ぞろえを誇る大型書店が増えていることがうかがえる。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/120909/bsd1209091531002-n1.htm

消える書店:ネットに負け相次ぎ閉店 地域中核店も

 出版不況がいわれる中、書店の廃業・閉店の波が街の小規模書店だけでなく、地域の中核書店にも押し寄せている。先月末には、海事書などで有名だったミナト神戸の老舗が店を閉じた。文化の担い手でもあった老舗書店が相次いで店をたたむ背景には、消費者の本離れだけでなく、欲しい本が最速で当日中に手に入るアマゾンジャパンや楽天などネット書店への顧客流出もあるようだ。【田畑知之】

 9月30日、神戸市の元町商店街にあった老舗、海文堂書店が店を閉じた。同店は今年で創業99年。この日、常連客と店員が「これまでありがとう」「力不足でした」などと言葉を交わす姿が見られた。

 海文堂は延べ面積730平方メートルの中規模書店。文芸書や児童書に加え、海事書の在庫が豊富なのが特徴で、最盛期の1996年ごろには売り上げが一日100万円もあった。ところが2000年ごろから低迷し、昨年は最盛期の約6割まで落ち込んだ。福岡宏泰店長(55)は「雑誌が売れなくなったことや全国チェーンの大型書店の影響もあるが、大きいのはネット書店の影響だ」と振り返った。

 書店は全国で減り続けている。書店のデータベース「ブックストア全ガイド」を出している出版社、アルメディア(東京都)によると、00年に全国で2万1654店あった書店は、13年5月時点で1万4241店と、34%も減少している。

 札幌市では4月、開店42年のリーブルなにわが、6月には開店65年のアテネ書房が、それぞれ閉店した。ともに市街地の中心部にあり、地域の中核書店だった。高知市では6月、高知城堀端の老舗、冨士書房が店を閉め、外商専門に切り替えた。出版業界に詳しい近畿大非常勤講師のフリーライター永江朗さんは「全国的に有名だった海文堂の閉店はこうした流れの象徴。書店関係者に衝撃を与えている」と言う。

 なぜ中核書店が持ちこたえられなくなったのか。海文堂の福岡店長は「お客さんが待ってくれなくなった」と話す。書店が卸業者に注文しても、本が店に届くには1週間前後かかる。それに対し、独自の物流基地を整備したアマゾンや楽天は翌日配達も可能で、地域によっては当日に本が届く。「『1週間もかかるのだったらいらんわ』となる。かなわない」(福岡店長)。さらにネットオークションには、出版して日の浅い中古本が安く出回る。

加えて、書店の本棚で思わぬ拾い物を見つけるという読書家の楽しみも、ネット通販の「お薦め」機能が提供するようになっている。通販で本を買うと、購入履歴や同じ本を買った人たちの傾向を分析し、「こんな本はいかがですか」と表示されるのだ。福岡店長も「『お薦め』の精度が上がったせいで我々の優位性が脅かされた」と話す。

 大型書店も生き残りに必死だ。ジュンク堂書店は09年、大日本印刷の子会社になり、同じく傘下の丸善書店と「MARUZEN&ジュンク堂書店」の屋号で新店を大阪などに四つ出した。両書店の岡充孝副社長は「ネットに対抗するには、専門書の豊富な在庫を持つという大型書店の特徴を強調するしかない」と話す。

http://mainichi.jp/select/news/20131024k0000m040003000c.html

3.アメリカでキンドルが普及した理由。

それに加えて最大の要因が海外独特の本のスタイルだ。要はデカイのだ。普通に縦だけで21センチ近くあるし、ページ数も数百ページとアメリカンなサイズが大きい。日本でいうちょっとした辞書くらいある。電車の中で読むには重すぎるし、片手で読むのは不可能に近いだろう。

読書家ならペーパーバックの存在を知らないわけがないと思うのだが?

同じペーパーバックと言ってもピンキリだが、たとえば

I, Robot (The Robot Series)

I, Robot (The Robot Series)

の例だと一番長いのが17.5cm.手元にある奴でも縦が約17cmで,新書とほぼ同サイズ.奥行きはむしろ8mmほど短い.巨大というなら,日本の新聞やジャンプなんかの漫画週刊誌も巨大だよね.マンガの愛蔵版でも縦が21cm近くあったりする.
ドラゴンボール 完全版 (1)   ジャンプコミックス

ドラゴンボール 完全版 (1) ジャンプコミックス

この例だと縦が20.8cmのようだ.

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)

同じく20.8cm.


TOEICテスト新公式問題集 (Vol.1)

TOEICテスト新公式問題集 (Vol.1)

28.5cm.
The Ultimate Phrasal Verb Book

The Ultimate Phrasal Verb Book

27.6cm.


また,たとえば技術書だと凶器に使えば人を殴り殺せそうな1000ページ超えの本がゴロゴロしてるけど,そういう本はKindleで読むのもまた厳しい.*3

技術書が大きいのは日本でも同じだな.

コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ 第4版 (IT Architects’ Archive)

コンピュータアーキテクチャ 定量的アプローチ 第4版 (IT Architects’ Archive)

詳解TCP/IP〈Vol.2〉実装

詳解TCP/IP〈Vol.2〉実装

UNIXネットワークプログラミング〈Vol.1〉ネットワークAPI:ソケットとXTI

UNIXネットワークプログラミング〈Vol.1〉ネットワークAPI:ソケットとXTI

最大の要因が「海外独特の本のスタイルだ。要はデカイのだ。普通に縦だけで21センチ近くある」ねえ?


また日本だと長時間の電車通勤/通学という日本の事情があり,電車内で書籍を読むという習慣が定着している.昔は満員電車で大きな新聞を器用に折りたたんで読んでいたり,今では重いiPadを抱え込むようにして本(自炊本?)を読んでいる人もいる.このような米国とは異なる日本固有の事情で電子書籍端末が普及する余地は十分にあるだろう.

5.古本という日本独特の文化

Amazon.comにも普通に中古本は売ってるんだけど.Amazon.comを見たこと無い人なのかな.

それに加えて、読んだら古書店に売るという文化が日本には根付いている。

紙だと置き場所がないからね.電子書籍ではその問題が無くなる.もし(残念なことに「もし」なのだが)日本で電子書籍が普及したら影響がさけられないのがBookOffではないかと思ってる.具体的には文庫本のコーナーが一時的に増えたあと激減し,次第に中古漫画(とCD/BD/DVD)専門店的な雰囲気になっていくかもしれない.

6.キャッチコピー不在の宣伝効果。

リアル書店に行く大きな楽しみの一つが書店の店員さんが書くポップと帯だろう

そういうのがない本屋も多いよ.べつに自分はそんなの楽しみにしてないし.

逆にAmazonにおいてはアフィリエイトがまさにそういう役割を果たしている.*4

9.電子書籍ってすごくメジャーなようで、すごくニッチでマイナーな商品。

電子書籍以前に世の半数の人は年間に本を1冊も読まないらしい。書籍市場も年々減少傾向にある。日本国内で本を大量に読む人。さらに、本棚や自宅に本を置きたくないという人。紙の本に愛着がない人。とういうと、いくら低価格で販売したところで市場の限界というものがあるのではないか?

仮にそれが事実でもそれは電子書籍の問題ではなく書籍に興味のない人の話だ.今や読書家が絶滅危惧種なのは事実かも知れないが,書籍に興味のない人が電子書籍にも興味を示さないのは電子書籍の問題ではないよ.

紙の本に愛着があろうとなかろうと,読書家ほど置き場所に困るのは周知の事実だ.紙の本に愛着がない人はもちろん,愛着がある人でも自炊に手を出さざるを得ない.最初から電子書籍で出してくれれば手間が省ける.


そもそも「日本人は紙の書籍に愛着があるから,電子書籍は普及しないだろう(キリッ)」なんて戯言を本気で信じている人などどれほどいるのだろう?再販制度の中で返本されて裁断処理する度に日本人が皆涙を流しているとでも?

電子書籍に1000冊の本が入ります。何て言う宣伝も文句もあるが、年間に100冊読んでも満タンになるまで10年は掛かる計算になる。

ペリー・ローダン シリーズだけでも数百冊だけどな.本国だともっと.*5

時間超越者の帰還 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-430 宇宙英雄ローダン・シリーズ 430)

時間超越者の帰還 (ハヤカワ文庫 SF ロ 1-430 宇宙英雄ローダン・シリーズ 430)

この人はペリーローダンのことを知らんのかな.読んだことはなくても聞いたこともないとは読書家らしくない.

グインサーガが130冊+外伝22冊? *6

ヒプノスの回廊―グイン・サーガ外伝〈22〉 (ハヤカワ文庫JA)

ヒプノスの回廊―グイン・サーガ外伝〈22〉 (ハヤカワ文庫JA)


それに技術書の様に,全部は読まなくても調査のために一部だけ読む本も多い.料理本なんかも同様だろう.また1000冊は目安で,文字中心の本より画像の多い本の方が容量を食う傾向にある.*7またAudiobookなども音声データを必要とする分だけ容量を食うと思う.

7.紙の臭いフェチ。

あほか.*8

1. Posted by   2012年08月11日 08:56
本を置く場所に困っている読書家にとって電子書籍はとても便利な道具なんですけどね。

いきなり突っ込まれてる.

ヘビーな読書家ほど置き場所に困るし,電子書籍を必要としている人も多いだろう.

*1:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20120723/p1

*2:http://www.amazon.com/gp/feature.html?docId=1000493771

*3:読み難いけど,置き場所の問題はさらに深刻なので,可能ならKindle書籍で揃えるようにしている.

*4:つかこの人は書評ブロガーじゃないの??

*5:wikipediaだと「2400話」なんて文字も見られるのだが,これって既刊なのか?予定じゃなくて?いずれにせよ1000冊超は余裕なレベルなようだ. http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%8B%B1%E9%9B%84%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3

*6:ぶっちゃけラノベ電子書籍の相性は非常にいいと思ってる.基本が文字ベースで,軽いのですぐに読み終わる.その分積み上がる本も多くなる.カラーの挿絵については見たければKindle for PCで見ればいい.

*7:たぶんマンガも食うよなあ.マンガで500冊ならたいていの人は楽勝じゃね?

*8:「おれはガジェットマニアだぜ」な人の方が多いかもしれない.