GANGSTA.(ギャングスタ)における黄昏種の三原則

へー.

黄昏種の三原則*1

  1. 第一条 - 黄昏種はその意思で、人間に危害を加えてはならない。またその危惧を看過することによって、人間に危害を及ぼし、全ての均衡を崩してはならない。
  2. 第二条 - 黄昏種は人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし与えられた命令が第一条に反するときはこの限りではない。
  3. 第三条 - 黄昏種は、前褐第一条及び、第二条を反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/GANGSTA

http://www.comicbunch.com/comicinfo/gangsta/ *2

一見するとGANGSTA.における黄昏種の三原則はアシモフロボット三原則にそっくりに見えるが,実はその解釈は大きく異なるようだ.*3


まず第一に,これは法律であって法則や本能では無い.黄昏種は寿命が短かったりするものの人間ベースであり,個性や人格というものも残っている.当然ながら趣味や自己保存本能なども有しているようだが,たとえばここにおける第三条は「死ねという命令には逆らうな」という意味合いが強いだろう.

第二に,第二条でいう「人間」はホモサピエンス全体というよりは相棒/主人になる.*4他の人間の命令を完全に無視できなければ,犯罪者が「やめてくれ」「そいつを捕らえろ」みたいな命令にも服従してしまい,賞金稼ぎのような荒事はできなくなる.

第三に,第一条で人間への危害を必ずしも禁止してはいない点.禁止しているのは「黄昏種自身の意志で」人間様に危害を加えることであって,「主人や依頼人の意志で」なら殺害も可能.これは実際に1話でもそのような行動をしている.*5

第四に,文脈から判断してこの三原則における「人間」には「黄昏種」を含まないという点.これは「黄昏種は人間の命令に服従」などの記述で明らか.言い換えると「黄昏種は人間ではない」.一方で,アシモフのロボット工学三原則では「黄昏種」も人間に含む可能性が高い.*6

第五に,ここには明記されてないが,善悪を判断したり命令を下したりする「相棒」あるいは「雇い主」は自分で決められる模様.転職の自由はあって,警察に所属するか便利屋になるか娼館の用心棒になるかマフィアに入るかは本人の自由.*7 *8


それと第三条は蛇足だな.ロボットやAIだったら自己保存本能はわざざわざプログラムしない限り入ったりしないが,人間だったら言われなくても自分の身は守る.黄昏種の第三条はあってもなくても関係ない.*9

全般として,オリジナルのロボット三原則よりは,以前示した「ロボット兵士用ロボット三原則モドキ」の方に近いと思う.

  • 第一条:ロボットは上官(≒ ロボットに命令を出せる操縦士)に危害を加えてはならない.また上官に危害が及ぶのを看過してはならない.*3 *4
  • 第二条:ロボットは上官の命令に従わなければならない.ただし第一条に反する場合はこの限りでは無い.
  • 第三条:ロボットは自分の身を守らなければならない.ただし第一条,及び第二条に反する場合はこの限りでは無い.
http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20120104/p1

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20070705/p2

*1:便宜上このように書いて区別することにする.

*2:1話が試し読み可能.

*3:作者がどこまで意図してたのかは謎だけど.

*4:言い替えれば「∀人間」ではなく「∃人間」ということ.

*5:つまりは「その力を私利私欲のために使うな」「無敵の力は僕らのために」という程度の意味だろう.

*6:セツラーだって,スペーサーだって,ファロムだって,みんなみんな生きているんだ人間なんだ.

*7:これを含めると,この三原則ってかなり自由度高いような.その職場が気に入らなければ,他の職場に移るだけ.実際に主人公たちも,かなり好き勝手やってる.

*8:ただし選べる職業の幅は広くない.用心棒や殺し屋,鉄砲玉のような仕事が中心だろう.

*9:優先度の問題はあるけど,人間だと我が身の可愛さが最優先なのは当然だろ?