ロボット兵器のロボット三原則
現実はSFよりもSFだ「ロボット兵士の戦争」
革新のスピードが速すぎて、考えるのをやめ、「なりゆきを見守っている」のが、現状になる。SF好きには堪らないだろう。なんせ、ロボット兵を作り出すアイディアを、SFから拝借しているどころか、SFでもやらないベタな地雷を正確に踏んでいるのだから。
軍用ロボット技術の現状を洞察し、イラクやアフガニスタンで活躍する無人システムを、(良いとこ悪いとこ含めて)解説する。紹介される無人偵察機やロボット兵はSFまんまだけれど、だいたい想像つく。むしろ、使い勝手の良さや、ユーザ巻込み発想はスゴい。
たとえば、ルンバで有名なiRobot社のPackBot(パックボット)は、箱から出してすぐ使える。8つのペイロード・ベイがあり、地雷探知機や生物化学兵器センサー、ズームカメラなど何でも搭載できる。イラクではカメラ+かぎ爪を組み合わせ、遠隔地から爆弾を分解するのに使われた。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2012/01/sfsf-6992.html
そういう意味での,ある程度の自動制御で自律的に敵を攻撃する意味での「ロボット兵器」なら,誘導ミサイル*1やファランクスでとっくに実用化されとるわい.いまとなっては特に目新しい物でも無い.
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,山高昭
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/11
- メディア: 文庫
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ロボットといえば汎用人型決戦兵器を発想する国とは違うのだ。
警視庁警備部特科車両二課とちゃうの?というか作業機械だよな.一番多いのは.*2
たしかにテロリストが核弾頭装備のICBMを持っていれば,世界中のどこにいてもアメリカ本土を攻撃する機会を増やすだろうね.或いは通常弾頭の巡航ミサイルでもいい.ICBMも巡航ミサイルも一種の無人(ロボット)兵器だ.だが普通のテロリストはそこまで金持ちでは無い.普通の軍隊でもだ.
ラジコン飛行機に爆弾を搭載して無差別テロを起こすことも可能かもしれない.しかしそれだったら時限爆弾をこっそりセットすればいいだけでしょ.ラジコン飛行機を使うメリットはほとんどない.テロリストに求められる自動機械は,高価なミサイルや戦闘機では無く,時限爆弾やロケット砲だ.*3
SF読みなら行き当たる疑問、「アシモフのロボット三原則は?」はスルーどころかナンセンスとして放置される。ロボット工学が原子力物理学の二の舞になろうとしているのか?
んーと,ロボット三原則は非常に高度なAIを持つ(非戦闘用)ロボットが持つべき基本原理であって,AIどころかろくな画像認識さえ持ってない「リモコン兵器」には無縁の物.現段階では搭載するのは論外.いまの「リモコン兵器」は,そこまで進歩してない.
ただし、こうしたロボットの多くは自律的に動くわけではない。当面のあいだ、地上ロボットの任務は、人間によって操縦されるものに限定されるだろう。一方、空中ロボットのなかには、人間の誘導をほとんど受けずに多くの任務をこなせるものもある(空中は障害物が少ないが、地上は障害物が多く、それを検知し判断することが難しいからだ)。
http://wiredvision.jp/news/201102/2011021520.html
でまあ,たとえば仮にもし非常に高度なAIを搭載したターミネーターや鉄腕アトムに登場するような自律可動型のロボット兵器,というよりはロボット兵士が作られたとしよう.陽電子頭脳搭載のロボット戦艦やロボット戦車でもいい.その頭脳に以下のような改訂版ロボット三原則,或いはそれと等価な基本原理を導入するのは,ごく自然なものだと思う.
- 第一条:ロボットは上官(≒ ロボットに命令を出せる操縦士)に危害を加えてはならない.また上官に危害が及ぶのを看過してはならない.*4 *5
- 第二条:ロボットは上官の命令に従わなければならない.ただし第一条に反する場合はこの限りでは無い.
- 第三条:ロボットは自分の身を守らなければならない.ただし第一条,及び第二条に反する場合はこの限りでは無い.
- 出版社/メーカー: グッドスマイルカンパニー(GOOD SMILE COMPANY)
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- メディア: おもちゃ&ホビー
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「それなら良くおわかりでしょう」と心理学者は冷ややかに言った.「もしバイアリイ氏が,三つの原則の一つでも破ったとしたら,彼はロボットではありません.しかし,残念ながらこの方法は,一方にしか通用しないんですよ.もし,彼がこれらの原則に従って生活していれば,いずれにしろ,それは何も立証しません.」クインは上品な眉を上げた.「何故です,博士?」われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
- 作者: アイザック・アシモフ,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
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「なぜならば,ちょっとお考えになればおわかりのはずですが,ロボット工学三原則は,世界の倫理体型の大多数の基本的指導原則だからです.むろん,人間だれしも自己保存の本能は有していると考えられています.それは,ロボットにとっては原則の第三条にあてはまります.また,社会的良心や責任感を持つ”善良なる”人間はだれしも,正当なる権威には従うものです.医者,上司,政府,精神分析医,同僚などの言葉に耳を傾けます,法律に従い,規則に則り,習慣に準じます − たとえそれらが,安楽や安全を脅かす時でさえも.それは,ロボットにとっては代二条に当てはまるものです.要するに − もしバイアリイがロボット工学の原則の全てに従う場合,彼はロボットであるかも知れないし,また単に極めて善良な人間であるかも知れません.」
人は標的を間違えるし、狙いを外す。休憩が必要で、訓練に時間がかかる。何よりも厄介なのは感情というやつ。怒り、悲しみ、憎しみ、妬み、不安にさいなまれ、名誉欲、権力欲、色欲、野心に振り回される。機械は、人の不安定さから完全に自由だ。
くだらん.
今の「リモコン兵器」は全部人間が制御している.ジャンボジェットにもあるような自動操縦くらいはついてるだろうけど,標的の選定も狙いも人間だし,発射スイッチを押すのも人間だ.基本的に人間の制御下でないと運用しないしさせない.人間はそこまで自動制御のロボット兵器を信用してはいないし,画像認識の精度も高くない.
ちなみに輸送用トラックで,なんとか実験段階という程度.現実はキビシー.
- http://slashdot.jp/story/03/05/12/0323222/
- http://slashdot.jp/story/05/10/07/1551251/
- http://slashdot.jp/story/06/05/06/021210/
http://b.hatena.ne.jp/entry?mode=more&url=http%3A%2F%2Fdain.cocolog-nifty.com%2Fmyblog%2F2012%2F01%2Fsfsf-6992.html
- id:shoot_c_na 自分の妄想と他人のネタに被る部分があって、たまたまネタと現実がリンクはじめたからって、自分の妄想すら現実化した!と勘違いする手合いは何とかしてくんないかなぁ。一言で言や、「ンなこたぁないww」だ。
- id:hamanako 読んでみないと評価できないな。UAV、PackBotの眷属と、寡占市場だから実際に多用されていても未来の形なのかといわれても実感がない。現時点では米軍(人命コストが高いが戦闘は欠かせない)の特異な兵器という印象
- id:kuborie 人的な損耗を防ぐ意味合いが強くて、いまのUAVで首の骨が折れそうな高起動するものってあるの?
- id:proto_typo そろそろ、「相手に与える心理的影響を考慮」した戦闘ロボットが必要だな ↑現在の無人機ではむしろ滞空時間に重点が置かれてて出力も余裕がなく、機動性はまだまだ劣るとか。プレデターVSイラクMIG25は後者に軍配
しょせんはリモコン偵察機に毛が生えたようなものだから.撃墜されてもそんなに痛くないので,マッハ3.3で逃げまくる必要も御座いません.
機動性重視の兵器というなら,対空ミサイルや巡航ミサイルの方が上じゃ無いかと
- id:MASSI "最近の銃はUSBで接続できる" ってなんとなく怖い気がするけどどうなんだろか?RS-485 とかのほうが良いような。なんとなくだけど。
- id:petronius7 無人兵器に蹂躙される側の反抗手段は、なぜ自爆テロ程度なんだろう。ITインフラが充実したアメリカ本土なら、軍人や議員の「家族」をお手軽にリモートで狙い撃てるんじゃないかと、ブラックな妄想が浮かんだんだが…
理由は経済的なものでしょう.
「人員不足で長時間勤務、殺害標的見続け…「無人機」パイロットは過酷任務」
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111228/amr11122811090001-n1.htm
ついで.
空軍は先ごろ、無人機の操縦者のストレスの度合いに関する調査結果を発表した。それによると、操縦者の29%が、努力したのに報われないとの思いから、不満や徒労感を覚える「燃え尽き症候群」の症状を示していた。危険というほどの状態ではないが、17%は医師にかかる必要があるという。ちなみに、イラク帰還兵では「燃え尽き症候群」で医師にかかる必要があるのは28%だという。
無人機の操縦者は勤務中、戦場でのストレスを感じながら、終わると今度は、交通渋滞など日常的なストレスに直面する。“戦場”と日常との行き来を強いられるのが心労の一因だ。だが、最大の要因は人員不足であるという。勤務が長時間できついのだ。
....一体どこのIT業界ですか.orz
しかし、空軍には無人機の操縦者を下に見る雰囲気があるという。
空軍は従来の戦闘機などの操縦士と、無人機の操縦者との間に溝ができないよう、ともに「パイロット」と呼び、同じ戦闘服を用意した。だが、これが逆効果で、実際に空を飛ぶパイロットからは「無人機の操縦者に戦闘服は必要ない」との声が出ているという。
空軍パイロットよりもむしろ海軍,特に潜水艦乗りあたりの方が共感が得られるんじゃ無いかなあ.窓もない密室から電子機器から得られる情報だけを頼りに,長時間,顔も見えない敵と命のやりとりをする連中だから.
「ステルス無人攻撃機X-47Bが史上初の空母への着艦に成功」
http://obiekt.seesaa.net/article/368857967.html
追記.
自律制御で空母への着艦を成功させたという話.
指定された目標への攻撃はできるけど,(有人)戦闘機とのドッグファイトは無理だそうな.目標物とそれ以外という識別も難しそうだし,人間とマネキンの区別なんてできるわけがない.
スラド「殺人ロボット開発に歯止めを」
http://slashdot.jp/story/13/10/23/068216/
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131021/k10015435301000.html
*2:この手のネタでは,キカイダーと良心回路も忘れちゃいかんな.
*3:その後こういう事件もあった.軍事基地相手となると,ちょっとした戦争とも言える. https://gigazine.net/news/20180115-drones-attack-russia-airbase/ , https://jp.wsj.com/articles/SB12404974170281193886104583640880000198720
*4:ここはもう少し緩く「上官に友軍が危害を及ぼすのを看過してはならない」くらいになるかも.戦場で危害が及ぶのを一々チェックしていては戦闘に支障が出る.そしてもし直属の上官が死亡した場合は,次に誰に従うべきかなども前もって決めてあるのも,普通の軍隊と同じ.
*5:戦闘用だと一条と二条を逆にした方がいいかもしれないな.その結果として操縦者が死ぬ確率は増えるけど,軍人としては戦死するのも許容範囲.