「消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―」Kindle版
- 作者: 豊田正義
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/08/16
- メディア: Kindle版
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平成六年の頃,妙なことを言い出しました.『競馬で儲かる話がある.ものすごく優秀なコンピューターの技師がいて,競馬もコンピュータで当ててしまうんだ』というようなことを興奮して話すんです.私は競馬をよく知ってますから,清志の話を聞いて『そんなバカな.おまえみたいに勝負事をしたこともない人間がそんなことわかるか.騙されとるんだ』と言ったんですけど,すっかり信じ込んでいて,その技師をスゴイ人だと褒めちぎっていました.
そこは『自分はコンピュータのことをよく知っているから,有り得ないことがわかる』じゃないんだ.
きちっとスーツを着て眼鏡をかけて,真面目そうな人でした.三十一歳と言っていました.清志のことを『所長』と読んでいて,清志も『お姉ちゃん,この人は凄いんだよ』と放していました.東大卒の優秀なコンピューター技師,小説も書いている,兄は東大卒の医者で東京で病院を開いている,京都に高級マンションを所有している,アメリカの永住権を持っている,ときどきNASAの研究所に呼ばれる……次々にスゴイ話が出てくるんです.最初は本当かなと思いましたけど,誠実そうな人だと感じたし,話も具体的でウソだとは思えませんでしたので,スゴイ偉い人なんだと信じ込んでしまいました.
怪しさ大爆発だろ…….orz
まずはどこ卒であろうと「コンピューター技師」なんて紹介するかと言う問題がある.SEであったりプログラマーであったりしても,コンピューター技師だなんていうだろうか.上流工程屋さんならともかく,プログラマーは(スーツを着ることもあるけど,)スーツで評価するもんじゃない.いくら優秀でも競馬を当てるプログラムなんて不可能だし,永久機関の発明と同じでそのネタを出した時点でそいつが詐欺師だと分かるだろ.株価予測でも厳しいなあ.
なによりどこ卒だろうともプログラマやIT技術者では,日本企業のヒエラルキーでは最下層だということも知らんのか.高学歴や「コンピューター技師」に対して幻想を持ちすぎだ.
その後のネタもいかにも怪しげな詐欺っぽいネタばかりで,「どう見ても釣り」な感じ.
「NASAの研究所」というのもねえ.シリコンバレーのベンチャーとかの方がまだしも有りそうだが,そうすると素人は名前も知らないのでNASAの名前を出したという気がする.
とはいいつつ,日本企業の面接官もこのレベルだから困る.技術的に実現可能な物と不可能なものさえ区別が付かない人が,どうやって技術者の評価をするのだろう.日本企業の七不思議.