ヤバい日本相撲協会

http://www.asahi.com/sports/update/0204/TKY201102040252.html

角界を揺るがす八百長疑惑。日本相撲協会の放駒理事長は2日の会見で「過去には一切なかった」と述べたが、11年間の星取表を調べ上げ、八百長の存在を統計的に示した2002年の学術論文が改めて注目を集めている。

「ヤバい経済学」は「masayangの日記」で紹介されていたこともあって読んだ

ヤバい経済学 [増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

読んだ人には「やっぱりね」としか思えない.

八百長したのを見つかった選手は普通批判されるが,ファンなら少なくとも選手の動機に関しては認めるだろう.その選手はルールを曲げてでも勝ちたかったのだ(野球選手のマークグレイスも,あるとき「八百長してないってことは努力してないってことだ」と言っている).一方,八百長で『負ける』選手はスポーツ界の地獄の底に突き落とされる.1919年,シカゴホワイトソックスは賭博士と謀ってワールドシリーズでわざと負けた(それでその後永久にブラックソックスと呼ばれることになった).ちょっと野球を知っているというだけのファンの間でさえ,彼らは腐った不正のにおいのする連中として扱われる.全米チャンピオンにもなったニューヨーク市立大学のバスケットボールチ−ムは洗練された攻撃的なプレイで人気が高かったが,1951年に数人の選手がマフィアからお金を受け取って点を削っていたーわざとシュートを外して賭博士が点差の賭に勝てるように細工をしていたーのがばれると,即座に非難の集中砲火を浴びた.マーロン・ブランドが『波止場』で演じた悩める元ボクサー,テリーマロイをお簿手増すか?たった一度,八百長で負けたのがケチの付き始めだった.あんなことしなければタイトルをとれたんだ.挑戦者になれたんだ.マロイはそんな風に思っていた.

八百長で負けるのが第一級の罪であり,相撲が神国第一級のスポーツであるならば,八百長で負けるなんて事は相撲ではあり得ない,そうでしょう?

相撲を支配するインセンティブの仕組みは複雑で大変強力だ.(中略)だから本場所ではいつも八つ目の勝ち星がとても重要で,番付の上がり下がりがそれにかかっている.八つ目の勝ち星は普通の勝ち星のだいたい4倍の価値がある.
だから,千秋楽になって8勝6敗の力士が7勝7敗の力士にわざと負けることはあるだろうか.

過去の対戦結果から見て,7勝7敗の力士が勝つ割合は半分をほんの少し下回る.これは納得がいく.その場所の成績も8勝6敗の力士がやや優勢だと示している.ところが実際には,7勝7敗の力士が8勝6敗の対戦相手に『10番中ほとんど8番も』勝っている.7勝7敗の力士は,9勝5敗の対戦相手に対しても驚くほど善戦している.

データから実際に計算してみると,前回7勝7敗だった力士は,再戦ではたったの40%しか勝っていないことがわかる.あるときは80%でその次は40%?いったいなんで?

一番理屈に合う説明は,力士達の間で取引が成立している,というものだ:今日はどうしても勝ちたいんで,俺に勝たせてくれたら次回はおまえに勝たせてやるよ.

このあと個別の力士だけではなく,相撲部屋レベルで組織的に八百長をしてること,マスコミが騒いでいる時だけは*1数値が理論値に近づいていくことなどが示されていく.その後に出てくるベイグル(ベーグル?)売り*2の話とかも興味深い.


八百長が犯罪にはならない」という意見もあるけど,それはどうだろう.「八百長を直接取り締まる法律がない」と「八百長が犯罪ではない」とは全然違う.相撲に限らずプロスポーツは真剣勝負を見世物にして金を受け取っているのであって,それが真剣勝負でなく八百長だとなれば商品偽装があったということではないのだろうか.「真剣勝負と偽って八百長試合を販売した」のは犯罪ではないの?

超ヤバい経済学

超ヤバい経済学

http://www.asahi.com/national/update/0203/TKY201102030259.html
http://www.asahi.com/national/update/0204/TKY201102030539.html
http://www.asahi.com/sports/update/0204/TKY201102040253.html
http://mainichi.jp/select/today/news/20110202k0000m040184000c.html?inb=tw
http://mainichi.jp/enta/sports/news/20110202k0000m040184000c.html

http://togetter.com/li/97113

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/sports/update/0204/TKY201102040252.html

  • id:shimomurayoshiko 今更過ぎますね。勝ち越しや負け越しで地位変動するスポーツに裏ないわけないだろ。別に八百長をよしとするって意味じゃないですよ。
  • id:vid 給金とそれを決めるシステムがゆがんでるからこういうことが起きるという部分の証明だよなぁ。ここからの話は、人生を賭けるに値する物と変革するか、寂れたとしても伝統を残すか、かねぇ。
  • id:Outfielder 公共工事の落札率が異様に高いというのと同じ。死ぬほど怪しいのはミエミエだが証拠がなければ何もできない。ここで「7勝7敗時の勝率が50%になるように」と数値目標を入れられたらさらに歪み始める。

アカウンタビリティーって単語はどこに消えたんだろう.

警察としては動けないかもしれないが,消費者としては相撲協会をボイコットするという手が残されている.アカウンタビリティーを果たしてない相撲協会に存在意義は果たしてあるか.

  • id:katamachi 「驚いた、とは言えない」とコメントした」。 いや、この手の八百長があることを知らないふりをしていた朝日も含めたマスコミが「驚いたふり」をしていることの方が驚いたよ。やくみつる相撲協会の方が潔い
  • id:mats3003 いまさらすぎるわ。本当になんで翻訳出版されたときに、マスコミは黙殺したのか。
  • id:tarbo 論文で出てたとは驚いた/統計期間が1989-2000年と、10年以上前。てことはそのころから既に八百長をやっている、と言いたいのだろうか
  • id:sirocco これが日本の和のこころなんじゃないかな。助け合う、村社会、談合体質。みなかったことにようっと。

*1:相撲の八百長疑惑は,過去にもあったことなのだ!

*2:日本で言えば「オフィスグリコ」なんかに近いビジネス.どのくらいお金をチョロまかしてるかというのを,詳細な統計に基づいて議論している.