"You are all a lost generation"

今まで知らなかったけど,このことを知った上で「ロスト・ジェネレーション」と名付けたのだとしたら,これ以上に的確な用語はなかったかもしれない.
google:"You are all a lost generation"

日はまた昇る (新潮文庫)

日はまた昇る (新潮文庫)

日はまた昇る

日はまた昇る

The Sun Also Rises

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マーク・ピーターセンの英語のツボ―名言・珍言で学ぶ「ネイティヴ感覚」 (光文社知恵の森文庫)

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マーク・ピーターセンの英語のツボ

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「ロストジェネレーション」は「失われた世代」にはあらず.

"You are all a lost generation." Gertrude Stein.

"あなたたちはみな、途方に暮れてどうしようもない世代なのよ。" ガートルード・スタイン


上記の言葉はもともと作家ガートルード・スタインアーネスト・ヘミングウェイに直接言ったと伝えられているが,その真偽を中々確かめられない伝説である.ハッキリしているのはヘミングウェイがそれを「ガートルードスタインの言葉」として1926年の小説「日はまた昇る」(The Sun Also Rises)の題辞に使ったことだ.

この小説の出版以降,"lost generation"と言うと,第一次世界大戦後ヨーロッパに残った,あるアメリカ作家の一群を表すことになった.戦争のむごさに直面して,これまでの宗教的,道徳的価値観がまったく無意味になった,虚無に陥った世代である.

lostは,たとえば"the lost civilization of Incas"(インカの失われた文明)のような意味もあれば,"a lost child"(迷子)のように,道に迷って正しい行き方が分からなくなったという意味もある.なぜか日本ではスタインのlost generationは伝統的に「失われた世代」と訳されてきたのだが,本当は「人生の迷子になった世代」を示している言い方である.逆に,第一次大戦によって「失われた世代」と言えば,膨大な数の若者が無意味に戦死した世代を示すことになる.高見宏の「日はまた昇る」の優れた新訳(2000年/角川春樹事務所,新潮文庫)では,上記の言葉は「あなたたちはみんな,自堕落な世代なのよね」となり,「自堕落」には「ロストジェネレーション」という振り仮名が付けられている.こうした訳し方によって,この世代のもう一つの特徴がうまく表現されている.

lost generationの作家たちが,アメリカよりもヨーロッパの方がまだ住み易いと思って帰国しなかったのは,一般アメリカ人がまるで戦争がなかったように普通に暮らしていたことに対して強い疎外感を覚えたことと,母国の精神文化の未熟さに絶望を感じたからである.

追記