Press Enter 「冷たい方程式(1) 技術力は勘定に入れません」
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- 作者: トム・ゴドウィン・他,伊藤 典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/10
- メディア: 文庫
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コメントでたれこみがあったが,新作が始まったらしい.
最初に決まったことの1つがカットオーバー時期で、人事部の要望で来年の2月となった。
初っぱなから不吉な臭いがプンプンする.orz
このため、次のような方針で進めることになった。
- 基本設計書は社内で作成する
- 勤怠の主要機能(業務系)は、社内で設計・作成する
- 人事部しか使わないマスタメンテナンス画面などの機能(管理系)は外注する
まあ,ありかな.やりたくはないけど必要悪というか.
平行して、磯貝課長とあたしが6月から行っていたのは、外注先の選定だった。探すといっても、ネットで会社情報を参照したり、過去に開発を依頼した実績のある会社に打診したりするぐらいだ。どこに頼んでもそれほど差はないような気もするし、選定を間違えると大問題になりそうな気もする。コンビニでよくある三角くじの箱に手を突っ込み、指先の感覚だけで当たりを引き当てようとするようなものだ。
でも、最大の理由は、現在稼働している評判の悪い勤怠管理システムを5年前に開発したのが、エースシステムエンジニアリング*2という、全国的に有名な大手SIerだったからだ。あたしがこの会社に転職してくる前の話だ。
その開発はかなり難航し、納期を5カ月もオーバーした。経理課長がヒステリー性の発作を起こしかけたほどの開発費用をかけたわりに、納品されたのは、使いづらく、遅く、拡張性に乏しいという三重苦のシステムだったそうだ。社員からの評判も芳しくなく、エースシステムを選定した当時の開発グループのGL(グループリーダー)は、今は別の部署に異動となっているそうだ。それ以後、開発グループにはGL職が不在で、磯貝課長が兼務している。
その後、何度か機能追加をせざるを得なかったのだが、そのたびに法外な費用を要求されたので、とうとう当時の経営戦略本部長より「これ以上の金をかけるな!」と厳命が下った。
単にスパゲッティプログラムなので,工数をバカ食いしているだけという可能性もある.というか上記の話からすると,そうなって当然.作る側からすると妥当な値段でも,出された金額だけで見ると法外な金額というのはよくあること.そういうシステムは,通常はなるべく早く廃棄処分にすると思われる.*3
「ちょっと心配なのが、横浜と名古屋の距離なんですが……」あたしは懸念していたことを口にした。「何度か打ち合わせなども必要になってくると思いますが、毎回、こちらまで足を運んでいただくのは……」
「ああ、そのことでしたら大丈夫です」八木社長は笑った。「実は、来月、東京営業所を開設するんですよ。首都圏の仕事も取っていきたいのでね。で、片寄は、しばらくそっちで開発をやってもらう予定です」
この台詞は不吉だ.
- 片寄さんだけが東京営業所にいる.
- しかも彼は窓口担当.
- それもしばらくの間だけ.その後は東京で雇った新人が後を引き継ぐ予定.*4
- 彼以外の主要開発メンバーは名古屋にいる.
みたいな展開が想像される.
ひょっとしたら,さらに加えて
- とどめに主力開発メンバーはオフショアで.並外れた低価格の理由はコレ.*5
という可能性もある.
担当者一人が東京にいたところで,伝言ゲームの参加者が一人増えるだけで,かえってコミュニケーションコストが高く付くことになるんじゃないかなあとか.
あたしは金の力の前に膝を屈した。あたしたちは、勤怠管理システムのリプレイスを、ホライゾンシステムに発注することに決めた。
この決定を、その後、あたしは何度も後悔することになる。
「ただより高い物はない」というか「安かろう悪かろう」というか.