「プログラマにTOEICは要らない」されど英語は超重要

http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20120901/1346462079
英語コンプレックスのある人の自己弁護.「またか」というのが率直な感想.


http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20101123/p4
http://d.hatena.ne.jp/shi3z/20101120/1290230564

TOEIC650点以上じゃないと減棒されるという噂の某社でも、カナダの企業と上手く仕事ができてるとは思えない。つまり英語力がどれだけあったとしても、実際の仕事ができなければ意味はない。

TOEI650点というのは中級程度.「650点もある」ではなく「650点しか無い」だ.そんなに英語力が低ければ,オフショア開発がうまくいかなくても当然じゃ無いか.*1 *2

だから「英語力がどれだけあったとしても」というほどレベルが高いわけではないし,それどころかTOEIC900点あっても,実践的な英語力はそれほど高くない人はいる.

この人は英語力が低いので,まだその辺りをわかってないんだろう.

組織にはダイバーシティ、つまり多様性が重要だ。

均一な能力を持った人間だけを集めても、新しい可能性は産まれない。

それは結構.

多様性がある会社には日本人もいれば英語ネイティブもいれば中国語ネイティブもいる.さてあなたは何語で会話すべきだろう?社内公用語は何を選択する?事実上英語しかない.


真に社内に多様性を求めるなら,英語力は必須となる.

人間の時間は無限ではない。なにかを学ぶということは、ほかの何かを学ばないということだ。

全員に英語力を要求すれば、全員の専門性がそれだけ低下する。

この人はプログラマじゃ無いな.

英語がわからないと,専門性を磨くことが困難なのが今の時代だ.

それは英語ができない人間のひがみでは?

一昔前はこれがパソコンやE-mailだったりしたんだよね.「パソコンが使えることより仕事が出来ることの方が重要です(キリッ)」.そして今ではどうなったか.「パソコンも使えるし仕事も出来る人」や「パソコンが使えるけど仕事の出来ない人」はいるけれど,「パソコンが使えなくて仕事の出来る人」はまずいない.*3

英語についても同じ.「英語ができないけど仕事の出来る人」などいなくなるだろう.IT業界は一足先にそうなってるよ.

http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20110124/p1

ケビンは日本に来たばかりで日本語がよくわからない。

特に早口の僕の日本語を理解するのにちょっと苦労する。
(中略)
しかもビジネス用語には中途半端な英語が含まれていて、たとえば「グリーディ(貪欲)」とか「アグリーメント(契約)」とか。

それはお前がお荷物なだけだ.*3

しかもプログラマとの会話で一般用語としてのgreedyを使うか?普通は「貪欲アルゴリズム」としてのテクニカルタームだろうが.たまに聞こえた英単語の専門用語が,それとは違う意味で使われてるんだもの.そりゃ混乱するわ.*4

専門用語が会話の50%以上を占めるようになると、英語表現や文法に詳しいよりも専門用語の細かな関係性を知っている方が会話しやすくなる。そのときにそれほど複雑な表現や文法は出てこない。ルー語でいい。

そうでもない.YES/NOで答えられる質問に答えるお客さんならそれでいいけど,何が良いか論理的に議論する現場技術者や,peformance evaluationが求められる管理職だと,それでは不十分だ.

英語が全くできない僕がシアトルの会社で副社長ができたのはこういう理屈なのだ。

……それはエライ人だからじゃない?

上司や元請けの人がどれほど間違ったことを言ってたとしても「お前の英語は下手くそすぎて全く意味がわからない.もっと英語の上手い奴を連れてこい.話はそれからだ!」みたいなことは言えないもの.おのずと「(全くわかってないけど)かしこまりました,ご主人様」的なおきまりの答えを返してお茶を濁すことが多くなる.

逆に平のプログラマーがシアトルの会社で英語が全くできなければ,一次面接さえ通してもらえないだろう.*5

ある外国語が出来る、という言葉には複数の段階がある。

なんでディベートができる」というのが無いのだろう.

そういう用途で使ったことがない人なのかな.

僕は彼のオフィスの壁をバン、と殴り、指を指した。

 「Because you」

ほぼルー語だ。

中学生で習わない単語は使ってない。これで充分、怒りは伝わった。

怒りは伝わっても,理由は伝わってないと思う.パワハラ一歩手前.

これは上司が部下に対してゴリ押しする場合には使えるが,部下が上司に対してやSEが顧客に対して「説得」したり,「ディベート」したりするのには使えない.もしプログラマが統括マネージャに対して同じことをしたら,クビになっても驚きはしない.それがit業界だ.


そして,そこにブロークンイングリッシュの限界がある.自分も言いたいことを相手に正しく伝えられないと,今まで一体どれだけ歯がゆい思いをしてきたことか.

シェークスピアを目指すのでもない限り、TOEICが想定するような英語力は技術者にはまず不要だと僕は思っている。

シェークスピア?ご冗談を.*6 *7

英語の作家や俳優を目指すのであれば,TOEIC900点でも全く足りません.TOEICというのは外国人向けの英語の基礎力を測るテストであって,ネイティブ向けの流ちょうな英語力を測るためのものでは無い.

エンジニアなら、英語の勉強に時間を使う暇があったらプログラミングの技を磨いた方がずっといい。

そのためには英語が必要なんだよ.TOEIC700〜800点レベルの中級英語もできずに一流のプログラマーを目指せるとでも?*8
http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20111231/p2

ごくわずかな専門用語の英語(外積→Cross product、内積→Dot productなど)を覚えるだけで世界中のエンジニアと会話できるのだ。

その程度の英語力で,たとえば「Cloud Computingを定義して下さい」と言われて,それができますか?

Cloud computing is a model for enabling ubiquitous, convenient, on-demand network access to a shared pool of configurable computing resources (e.g., networks, servers, storage, applications, and services) that can be rapidly provisioned and released with minimal management effort or service provider interaction. This cloud model is composed of five essential characteristics, three service models, and four deployment models.

以下略

http://csrc.nist.gov/publications/nistpubs/800-145/SP800-145.pdf

読めるだけならTOEIC600かそこらでも読めるけど,定義する方はおそらく無理.でもこれができないと,ディベートへの参加も困難だ.

それにプログラマーというのは、新しい言語を覚えるのはほかの職業の人よりも得意なのである。それが普段の仕事なのだから。

自然言語プログラミング言語は全く違うよ.むしろ自然言語の学習は苦手な人の方が多いんじゃ無いかな?それにプログラミング言語でも新しい言語を覚えるのは楽じゃ無い.全てのプログラマーが新しいプログラミング言語を簡単にマスターできるのなら,COBOLerなどという人種は生まれなかった.


トラックバックは閉鎖か.やっぱり反論されるのが分かってるんだろう.


プログラマが英語資格は必要ない.それは事実だ.

しかし同時に英語は極めて重要な基本スキルでもある.優れたプログラマーなら英語のブログや技術書を読んだりメーリングリストへ投稿したり英語の議論に参加したりする必要が出てくる.英語ができるようになれば,今まで見えなかった新しい世界が見えてくるし,その世界と交流して切磋琢磨することができる.一方で英語ができない人間はその壁を乗り越えられないし,ひょっとしたら,そこに壁があることにさえ気付かないかもしれない.英語ができない技術者は努力を放棄し,自ら作った檻の中に閉じこもっているようなものだ.

英語のできる技術者であればTOEIC 700点くらいは超えられる.むしろ700点ではまだまだ足りない.これに対し底辺プログラマーは英語が全くわからず,TOEIC 600点なんて夢のまた夢という人もいるだろう.優れたプログラマーにとってTOEIC 700点はスタート地点,新しい世界への入り口であるが,底辺プログラマーにとってはTOEIC 600点は永久に乗り越えられない壁なのだ.


またTOEICの資格やTOEIC試験対策は必要では無いが,技術者が英語の勉強と進捗度合いを測るのにTOEICを利用するのはアリ.700点くらいまでは技術者が必要とする英語とTOEICテストとは方向性がそんなに変わらないので,資格を取るかどうかはともかくTOEICの教材や模試を使って勉強していくのは良い習慣だと思う.*9 そしてTOEIC 700〜800点くらいの実力がついたなら,ついでに公式テストも受けて資格として履歴書に記載できるようにしておいた方がいざという時に便利だろう.何度も書いているけど,技術者/プログラマーが必要とする初級英語を測る上では,TOEICはなかなかに良くできた安価で受けられる資格試験なのだ.

TOEICテスト リスニングBOX

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TOEICテスト リーディングBOX

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えいご漬け 改訂版

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関連

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/shi3z/20120901/1346462079

  • id:new3 TOEICのために英語を勉強する必要は無いが、英語ができると得られる情報量が増えて、それに乗じて専門性も向上すると思うけどなぁ。英語力と専門性は比例関係だと思います(必須では無いとも思う)。
  • id:fromzero2 TOEIC対策は確かに無駄だろうけど、自分にとって新分野の技術書や論文や発表をTOEIC650点を取れない程度の英語力で本当に理解できるんだろうか?差分的な知識は得られても体系的な知識の獲得・交換は難しいと思う。
  • id:pixmap エンジニアにTOEICはいらないけど、TOEICが650もとれないレベルじゃまず仕事にならないだろ。

激しく同意.

  • id:AkihiroKohashi0518 TOEICは要らないけど英語はいると思う。残念ながら、この手の技術に関して日本は完全に植民地状態なので、宗主国様の言葉が分からないとどうしようもないと思う。日本語に翻訳された情報って実は氷山の一角。

これも同意.

  • id:nomitori 30代〜40代だとこれギリギリ通用するんだろうけど…これからの人は無視したほうが身のためやと思うな…

40代でも逃げ切るのは難しいんじゃ無いかと思います.*10 日系企業の求人を見てても,既に英語力なしで身につけるのが難しい技術がチラホラ.

  • id:habuakihiro これを書いてる当人は一山幾らで孫請け人月派遣されてる凡百のエンジニアではないのでそこ注意w あと唐突に出てきてワロタw>ルー語でいい

人買いのポジショントークってわけね.黒いなあ.

  • id:caynan 中学レベルの英語が必要っていうけど、スピーキングいれるとすげーハードル高いよ。中学レベルのspeakingがスラスラできるTOEIC650点(listening/reading)はそうザラにいない。

同意だな.こういう本も出てる.

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

どんどん話すための瞬間英作文トレーニング (CD BOOK)

内容は中学レベルだが,スラスラできる人はそう多くは無い.

  • id:m-tanaka 内容には概ね同意するけどTOEIC650点が要求するレベルはそんなに高くないと思う。技術者として会話できるレベルなら余裕
  • id:ezookojo TOEICスコアは不要だが、英語の読み書きトークは必要。べつに矛盾はしないね。
  • id:zorio 仕事のあとでご飯食べに行った時に困るんだよね。
  • id:mkusunok これはかなり同感。特にTOEICはReading / Listeningしか問わないこともありテストの点数で足切りするよりは英語で面接した方が資質を正確に判断できる

TOEICでは会話力を測れないというのは概ね同意.

しかし「英語で面接した方が〜」は同じく間違いだと思う.短い時間の面接だけで,語彙力や文法力や正確な読解力や速読を正しく判定できるわけでは無い.英会話で判定できるのは英会話だけ.それもイライザレベルのな.

エンジニアには英語は必要

http://willnet.in/27

エンジニアにTOEICは要らない - UEI/ARC shi3zの日記 を見て。エンジニアは英語を勉強しなくていいんだという思想が広まると困るので書きました。

清水さんは、外人の同僚もしくは取引先とコミュニケーションをとる状況を想定しているのではないかと思いますが、エンジニアは他にも英語を必要とする状況があります。

それは、英語のドキュメントやブログを読むことです。

例えば Rails エンジニアであれば、Ruby on Rails Guides を読むでしょうし、RailsCasts を視聴するでしょう。なにか困ったことがあり、日本語でぐぐっても必要な情報にたどり着けない場合は、google.com や Stack Overflow を使います。これらは中学生レベルの英語では理解できないことが多いはずです。

扱う言語や環境によっては、日本語の情報だけでもそこそこやっていけるのかもしれません。ただ、個人的には英語ができないエンジニアは優れたエンジニアとは言えないと思っています。

かくいう僕も英語はまだまだなので、コツコツ勉強していきたいと思います><

コレに関連して,プログラマの英語で必要な物の一つに「速読」がある.

初めて勉強する分野の千ページ超の書籍やマニュアルから必要なところ2〜3百ページだけを選りすぐって,短時間で素早く且つ正確に読み取るのは,プログラマに求められるものの一つだ.仮に語彙力だけなら中学生レベルで十分でも,速度まで中学生レベルでは足りないのだ.*11

みねこあ

http://d.hatena.ne.jp/minekoa/20121117/1353158454

大人になってプログラマになって、まず英語に捕まってしまいました。英語のドキュメントや技術書が読めなければ、お話になりません。わたしの英語力は大変残念なものなのですが、そんな残念な力でも使っていかなければやっていけないという。ひのきのぼう で日々戦っていかなければいけないマゾモード。あぁ、こんなことならちゃんと序盤で装備を強化しておけばよかったですョ。
(中略)
・・・中高生のみんな、学校で英語・数学が「重要」な位置づけにあるのは伊達じゃない。奴らは手強いくせに、冒険の中盤以降でのエンカウント率は思っている以上に高いんだ。
人生という冒険は続く。

*1:ブリッジSEの求人だと,普通は860点以上じゃ無いかなあ.もちろん860点は足切りであって,会話がスラスラこなせて且つ技術力も併せ持つ必要があるんだけど.

*2:最低650点以上なだけで,上にはすごく上手い人がゴロゴロいる可能性はある.いずれにせよ,英語力はオフショア開発の必要条件ではあっても十分条件では無い.

*3:この調子だと,外国人と話す場合でも玉虫色の解答をしてるんじゃないかなあ.やれやれ.

*4:アパッチ族の丸太小屋システム」なレベルの日本語をしゃべらないで欲しい.

*5:というか,まあそうなんだわ.外資の場合はリーマンショック以前はTOEIC 600点以上の求人もチラホラみかけたものが,リーマンショック後は同程度の求人がTOEIC 800点以上くらいになってる感じ.外資だと仕事でも普通に使うしねえ.

*6:シェークスピアはおろか,脚本家が怒るレベル.

*7:シェイクスピア >> 普通の英語ネイティブ >> (越えられない壁)>> 英語ペラペラの日本人(英語ノンネイティブ) >> TOEIC 900点 ≧ プログラマが必要とする英語 > TOEIC 700点.異論はあるだろうけど,だいたいこんな感じ.同じ900点でもギリギリ900点の人もいれば,余裕で900点の人もいるしね.

*8:「英語を勉強するな.英語で勉強しろ」とはよく言ったものだ.

*9:教材の方はTOEIC専用のものはそんなに多くは無いか.単語とか文法とかについては,普通の英語教材がそのまま使える.

*10:痛いニュース「シャープ勤務30代 「一生安泰といわれたのに人生設計狂った」」 http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1728862.html

*11:そしてTOEICは,速読ができないと点が伸びないテストだ.そういう意味でもプログラマーの英語力を測る上で,TOEICというのは相性が良い.