歴史は繰り返す
- 「退職金とミスマッチ制度」http://ameblo.jp/shibuya/entry-11045885401.html
- http://blog.livedoor.jp/himasoku123/archives/51670134.html
ああ,十年前の失敗をまた繰り返すバカ経営者の登場としか思えない.
しかもこの制度を導入するのが好景気ではなく不景気の時ですからね.その真の目的がリストラであるのは,バカにだって分かりますよ.
ミスマッチ制度とは、
- 下位5%をD評価とする。
- D評価1回でイエローカード、2回目でレッドカードとなり、2回目で部署異動または退職勧奨のいずれかを選択してもらいます。
ここまでなら反対はしない.今現在で年収1千万超の報酬を払う,生え抜きので実力主義のエリートぞろいの会社なら,そんな制度も合うだろう.
しかし普通の日本企業ではおそらく間違いなく失敗する.管理職に部下の成果を評価する能力も意志もなく,また評価する能力がないにもかかわらず彼ら自身が降格させられることだけはないからだ.現場の人間は成果主義で給料カットもクビもあるのに,管理職や経営患部には成果主義が適用されないのはおかしいとは思わないのだろうか?むしろ(少なくとも建前上は)管理職や経営者にはより高度な能力が求められるはずだから,彼らへの成果主義の適用はより厳しくなされなければならない.*1
またこれと平行して
- 上位5%をA評価とする.
- 二期連続でA評価を取った社員は昇進や昇給を選択してもらいます.
- 二期連続でD評価を取った管理職は降格又は退職勧奨のいずれかを選択してもらいます.
- 二期連続で赤字を出した経営者はクビになってもらいます.
みたいな制度も必要なのでは.
- 仕事のパフォーマンスだけでなく、価値感、文化の合わない人が対象となります。
「価値観」や「文化が合う/合わない」なんて極めて主観的で曖昧な物を指標にした時点で、この評価制度は機能しないだろう.上司の気に入らない奴,上司の間違いを指摘する奴,有休を取得したり定時退社をする奴,そういう人間はどれほど優秀であろうとも「君は我が社の文化が合わないようだ」とか,「君は強調性協調性がないので我が社に望ましくない」などを口実として,反逆者は処分される.今回の『成果主義』はそういうブラック企業にとって実に都合良くできている.
仕事のパフォーマンスを評価できるかさえ大いに疑問だ.たとえば高いスキルで短時間で仕事をこなすプログラマーより,自らが作ったスパゲッティプログラムのデバッグで徹夜するプログラマーの方が,ろくにコーディングもできない上司から見れば「徹夜してまで頑張るプログラマー」に見えるのだから.
評価に関しては、上司だけでなく、人事、役員も加わった責任の元に行います。
どいつもこいつも成果主義の元では無能を絵に描いたような人たちですね.現場のことを知らないし,現場に足を踏み入れたこともなかったりする.何が現場で起こっていて,誰が貢献し,誰が足をひっぱたか,何が問題になっているか,どうやって解決したかを何も知らない.仕事の分担も知らなければ,各社員の顔さえ見たことないかもしれない.こんな人たちが評価の責任者ならば,成果を公平に評価することなど不可能でしょう.
嫌われたくないや傷つけたくないといった理由でD評価を全くつけられない上司は、何度か続くとその人がD評価となります。
この下らない成果主義モドキを批判する上司まで脅迫してるようにしか見えないぞ.
この制度を何度か繰り返すうちに本当にD評価をつけるべき人がいなくなるかも知れません。その時には、それでも脱落者を探すのではなく、ゼロで構いません。
盛大にツッコミを入れられてるが,「下位5%がD評価」なのだから,D評価をつけるべき人は永遠になくなりません.
退職金制度にしても,日本国の年金制度みたいなものじゃないでしょうか.昔は60代から受け取れますよと口約束しておいて,後で「足りなくなったからやっぱり70代からにします」「それでも足りないから90代からに変更」とかやるだけ.この会社が今後数十年間にわたって右肩上がりの急成長を遂げ,常に莫大な利益を上げ続けないかぎりは,退職金を受け取れる保証などどこにもない.最近だと事実上倒産したJALとか東電とかが有名だよね.
「口約束で数十年後に払うかもしれません」という飴と,「経営者の都合で今すぐ退職を迫ります」という鞭.かなりバランスが悪いと言わざるを得ない.
内側から見た富士通「成果主義」の崩壊
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/07/23
- メディア: 単行本
- 購入: 9人 クリック: 261回
- この商品を含むブログ (206件) を見る
サイバーエージェントが犯すであろう失敗を知りたい人でまだ読んでない人は,古本で良いから読んでおくと良いよ.
数字が引っかかっている人に対し「残業30時間なのにAはないでしょう」などと,評価替えをするのである.つまり,目標が達成されていたかどうかなどはほとんどノーチェックであり,シートにある評価のAやBと,残業時間,年次有給休暇の消化日数,勤怠状況を付け合わせるだけだった.
「これでは目標管理なんて有名無実ではないか」
と思ったが,そんなことを口に出せるような時間的余裕も,精神的余裕も私にはなかった.
彼は課長との面談の後,評価委員会でAからBに成績を格下げされた.それも一度だけではない.目標管理を始めてからもう5度もそれがあった.しかも,上司に問いただした挙げ句に帰ってきた理由というのは,唖然とさせられる物だったと言う.
「肝心の課長は評価委員会には出られないので,あとから課長に確認したら「オレも出られないから全然わからない.オレも納得できないんだ.今回はこらえてくれ」の一点張り.実際はほとんど顔もあわさない部長たちが,評価を一方的に決めているらしいが,そもそも部長たちは,我々部員たちの担当業務をきちんと把握しているとは思えない.」
しかし部は違っても,同じビジネスに携わる者同士だ.なんとなく自分たちの待遇が低いことに気づき始め,やがては自分たちが格好の「踏み台」にされていると思うようになる.部門によっては露骨に人事異動を行い,ユーザーサポート部門に,既に第一線を退いた中高年や戦力外対象者を集中的に集めているが,実際にこれらの部署は,第一線の部署の評価を底上げするためのお手軽な「踏み台」にされ始めたのだ.
この「踏み台」が,サイバーエージェントにおけるDランク評価者ということになるんだろうね.最初からD評価を与える部署を作っておき,そこにリストラ対象者を「人事異動」で集める.あとは二期連続でD評価を与えて,「みすまっちせいど」の名の下にクビを宣告すると.
「歴史は繰り返す」とはいうが,恥ずかしげもなくようやるわ.
人事部門にはいわゆるブラックリストがある.病気や勤怠不良による多欠勤者,過去に不正アクセスや軽犯罪などで懲戒歴のある人間,そして管理職から報告のあったなにがしかの個人問題のある人間.*2この人間たちのリストができていた.そこで,このリストに載っている人間を,片っ端から評価委員会や昇給査定の場で狙いうちにし,高評価や昇給候補の座から引きずり下ろした.
ブラックリスト自体は極めていかがわしいものだった.
一例を挙げると,富士通のイントラネット上には誰でも自由に発言できる社内掲示板がある.そこでは,新規ビジネスプランから人事制度に関する議論まで,オープンに幅広く行われている.しかし,この掲示板を,人事が裏でがっちりと管理していたのだった.だから,人事制度に批判的な従業員はピックアップされ,ブラックリストに追加される.ちなみにこの掲示板は人事部門の中では「ゲシュタポ掲示板」と呼ばれていた.
人事の独裁による締め付けは,ブラックリスト記載者だけではなかった.ブラックリスト記載者だけでは大勢に影響がないとわかると,今度は育児や介護で短時間勤務を選択している人間,時間外勤務の少ない人間,有給休暇取得率の高い人間などを狙い撃ちにするようになった.
その理由は簡単で,単純に「ほかの従業員より労働時間が少ないから成果も少ない」という事務屋的理屈だった.これは「成果主義」とは正反対の理屈だ.
- そもそも二時間の会議で全員の目標なんて見てられないし,難しい用語が多くて意味が分からないんだよ.
- 技術系の事業部の場合,そもそも決定権者である事業部長クラスの人間は,最新の専門用語の飛び交う中堅社員の目標シートなど,まともに読めないケースがほとんどだった.
- しかし社内で見た現実は,自分たちの能力と成果を評価してくれるのが,それまでなんのハードルも越えてこなかった上司達であるという矛盾だった.
- 一般従業員が知ったらビックリするが,管理職は,ほとんどがAだったからだ.まさかと思われるだろうが,その割合は9割近くに達していた.
「評価は人事、役員も加わった責任の元に行います」.専門用語さえ満足に読めない彼らが,いったいどうやって公平な評価を下せるというのだろう.*3
- 「開発部門というのは,本来個々の作業が明確に別れていないんです.」
- 新制度導入後は,それまでチームで一つの成果を上げていた社員が,自分だけの目標に固執するようになった.この弊害がいちばん大きいですね.そもそもなにが必要な作業かなんて,実際にやってみないと分からない.なのに,半年も前に目標として取り込めと言われても絶対に無理ですよ.
- 実際の現場では「目標シート」に書けない隙間業務の方がむしろ多い.トラブルや仕様変更があれば,日々そういう「誰の目標にも書かれてない仕事」が発生する.でも誰も自分からはそういう仕事をやろうとしなくなった….職場の雰囲気は,たった一年でガラリと変わってしまったんですよ.
ところが全社で唯一,在籍する相対評価対象の若手が「例外なく全員A評価」というルール違反の部が存在する.もうおわかりだろうが,これが,本社の人事部である.
(中略)
「我々の部(人事部)には,富士通全体で最も優秀な人材を配属しているから,例外的処置が必要なんだ.」
もうほとんど酔っ払っているとしか思えないコメントだが,彼らは本気で信じているらしかった.これを聞いたら,理系修士ばかり何十人も配属されるキープロダクト部門は,どう思うだろうか?
サイボウズでは「半年ごとの6段階評価で2期連続最下位(E)の社員は退社する」というルールを設けていたが,わずか1年でやめてしまったという.人事評価は相対評価で,Eは全体のわずか2%.実際には2期連続でとった社員はいなかったのだが,「クビ」という言葉が社内で一人歩きして,社内に冷たい無用の緊張感が充満してしまったからだ.
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/15
- メディア: 新書
- 購入: 17人 クリック: 447回
- この商品を含むブログ (613件) を見る
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2010/01/16
- メディア: 新書
- 購入: 7人 クリック: 299回
- この商品を含むブログ (60件) を見る
http://b.hatena.ne.jp/entry?mode=more&url=http%3A%2F%2Fameblo.jp%2Fshibuya%2Fentry-11045885401.html
- id:konkon1986 「文化」という言葉を隠れ蓑に、私情によるD判定が横行する未来しか見えないなー。いい制度作ったぜというドヤ顔がいつまで続くだろうか。
- id:miho3783 この会社、産休や育休、介護休暇はどうなんだろ。よく働くけど子供を保育園に送ってから来るからDとか、アイデアマンだけど飲み会より家庭を優先するからDとかする上司が出てきそう
- id:tocchi5 仕事のパフォーマンスだけでなく、価値観、文化の合わない人が対象となります…客観的な理由なくクビ切りしほうだいだね。
- id:izoc 評価の精度が上司の力量に依存するのならば碌な結果にならなそうだな・・・上ばっか向いて足元がおろそかになってる印象。
- id:komamix 「使えないやつら切りたい。あとあいつも反抗的だから切りたいなぁ。でもリストラとかクビきりとか解雇とかイメージ悪いよなー」→ミスマッチ制度を作りました!→イイネ!
- id:unno_hideyuki 人ごとだし、アリかなと思うけど、そんな厳しい制度の判断基準に「価値観、文化」なんてあいまいなものをいれるのはどうかと思った。
- id:pplaceCEO 下位5%ってなんの下位なのだろうか。 評価ってどうやってやっているんだろうか。 サイバーエージェントにとって優秀という定義が知りたい。
- id:gui1 下位5%って、長期休職者や産休の人だけで埋まってしまうんじゃね?
- id:sisya 「ゼロで構いません」と言いつつ、ゼロが続くと管理職が切られるので、結局脱落者探しというか生贄探しにならない?
- id:tocchi5 仕事のパフォーマンスだけでなく、価値観、文化の合わない人が対象となります…客観的な理由なくクビ切りしほうだいだね。
- id:Clock0311 エントリだけみてとりあえず「いいんじゃね?」って思ったけど、ブコメ読んで、確かに、下位5%を決める評価基準がちゃんとしてないと結構危ないかもしれないと思った。
- id:big_song_bird 日本企業は人事査定が減点方式なので、まともに機能するか疑問。それにここは元々離職率が高くて、IT技術者養成学校みたいなところがあるから、「優秀な人材」とやらが根付くのかどうか。
- id:neithardt 日本はほんと減点方式好きだねー
- id:prozorec 下位5%をD評価にするのなら、いつまでたってもD評価はなくならない
- id:natsutan 役員も当然ミスマッチ制度あるんだよね。
当然この前社長はE評価で更迭となる.が,この最悪の3月期決算発表の場で,秋草前社長は悠然と自身の会長職への就任を発表してのけた.これには,社員も開いた口がふさがらなかった.仮にも「成果主義」の家元を標榜する企業のトップが,2万人を超える従業員をリストラしつつ,予算達成すらできなかったその期のうちに,引き続き経営の
実験実権を握るポジションに昇格する,と発表したのだ.リストラで絞り込まれ,新人事制度の下で窒息寸前にまで追い込まれていた社員の経営陣に対する不信感は,このときピークに達していた.
特にリストラ対象とされ,営業やSEに配置転換されたエンジニアや製造ラインの怒りは凄まじいものがあった.
富士通・秋草会長誕生の怪
2003年5月7日
4月25日午後1時。東京・丸の内の富士通本社で、緊急会見が開かれた。
「経営執行体制の発表がある」そう聞いて会見場に集まった記者たちは、ある想定をしていた。その日の午後2時半から、富士通は2003年3月期決算を発表する予定になっている。そして、1000億円を超える連結最終赤字が発表される見通しだった。これで2期連続の巨額最終赤字となる。
社長の秋草直之が、業績悪化の責任を取って退任する――。
誰もがそう思っていた。
そして午後1時。一斉に配られた資料の表紙には、予想通り株主総会後の秋草退任という内容が記されていた。
●「忙しすぎて」会長就任
ところが、である。3ページ目に思いがけない役員人事が記載されていた。社長を退いた秋草が、そのまま代表取締役会長に就任するというのだ。押し出されるように、代表権のない会長だった関澤義が退任する。「会長兼CEO(最高経営責任者)」として、秋草は富士通の最高権力者に上り詰める。引責辞任の会見と決め込んでいたマスコミ関係者は、予想外の内容に驚きを隠せなかった。なぜ、任期半ばのこの時期に、会長になるのか――。
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/244/244781.html
- id:PAPUPO 39歳で切って積立分をふんだくるんですね。。。ええ、冗談です
39歳になると,なぜか偏屈になって『文化』に合わない人が激増するんですね,わかります.*4
http://b.hatena.ne.jp/entry?mode=more&url=http%3A%2F%2Fblog.livedoor.jp%2Fhimasoku123%2Farchives%2F51670134.html
- id:llill 一見斬新なようですが、成果主義の焦点を下に当てただけであり、肝心の問題点は手つかずの悪手であるように見えます。個人の生産性・貢献度を定量化できる業務ならいいのですが...
- id:your 一時期流行った成果主義の亜流。成果主義がどうなったかは、富士通とかみれば結果は自明。
- id:toronei 中身を見れば見るほど、橋下徹の提唱する教師評価制度にそっくりに見えて仕方ないんですが(笑)。
- id:at_yasu 何が恐ろしいって、立ち回りだけが異様に上手い奴が生き残るという可能性があるんだよな…
あと,無能な管理職と経営者もね.辞任するかと思われた赤字出した経営者が,会長に昇進した事例もあるんだぞ
- id:McCammon この手の人事のキモはとにかく評価制度自体の客観性・公平性。巧くいったらどういう評価制度でやってたのかを公開してほしいな
「価値感、文化の合わない人が対象」と言ってるくらいなので,既に極めて主観的で不公平な基準だと明言されております.
*1:でも実際には富士通では管理職や人事部に対する評価は,常にぬるま湯だった.経営者に至っては赤字を出したのに引責辞任どころか会長になった.自分には甘く他人に厳しい管理職や経営者.フリーライダーが問題というのなら,彼ら以上のフリーライダーはいないだろう.
*2:この時点で相当に問題のあるリストだと思う.管理職が恣意的に判断した結果など,本来は疑ってかかるべきだろうに.
*3:ひょっとしたらサイバーエージェントの社長はとてもとても勉強熱心なので専門用語くらいは分かるというのならば,それはとても結構な話だ.でも万が一そうだとしても,ならばこそ人事を加えて評価させるなどとは絶対に言うまい.現場の技術者は,「人事」の人間の「技術力」など全く信用していないのだから.また「専門用語が分かる」と「やってることが理解できる」とでは大きな開きがある.書いてある内容がかろうじて理解できる程度の人間に,公平な評価など期待できるわけがない.
*4:F2では残業時間が増えると,翌年から裁量なんて何もない「裁量労働」になって残業手当がなくなったそうである.ええ単なる偶然なのです.
「毎年,年の初めに裁量労働勤務の見直しがあります.一応,人事については、マニュアルにごちゃごちゃと適用基準が書かれてますが,実際には簡単ですよ.
残業時間の多い者は適用,少ない者は不適用.これだけです.要はいかに人件費をカットするかだけでしょう.」