ヤマト運輸主催,やりがい搾取コンテスト(番外編3)

その他,いろいろメモ


特に「頭の中も著作権の対象?~」なんかは,ヤマト運輸コンテスト参加者が被るリスクそのものだと思う.なんで労使関係もないのになんで自分の作ったコードの著作権侵害で訴えられなければならんのか.

お遊びのコンテストにおいて,自分が書いたコードは自分の物だ.違うか?*1

「フォトコンテストガイドライン

https://jpca.gr.jp/contestguide/

とくに1~3は必須とし、4以下は主催者の裁量の範囲ですが、可能な限り掲載して下さい。
(中略)

01.応募作品の著作権は、撮影者に帰属します。
02.入賞作品は、主催者が催す展覧会のほか、制作する作品集、パンフレットなどに、優先的に使用する権利を1~2年間を限度に保有します。
入賞作品は本コンテストの広報活動として、新聞、雑誌、テレビ、ホームページなどで使用することがあります。使用にあたっては撮影者の氏名表示を行います。
03.入賞作品の撮影原板(フィルム)またはデジタルデータは1~2年間を限度に、主催者がお預かりして、広報活動などに使用し、使用期間満了後、撮影者(入賞者)に返却します。
04.主催者がインターネットWeb上で利用する場合には、撮影者の氏名を表示します。作品はモニター上での閲覧以外には、ダウンロードできないような処置を講じます。
(以下略)

これらとくらべてみると,ヤマト運輸はとんでもなく邪悪だと再認識しました.


「プログラムの「盗用」は阻止できるか?」

https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1508/21/news012_2.html

 参考までに「一般社団法人 情報サービス産業協会(JISA)」が刊行している、「ソフトウエア開発委託基本モデル契約書」から、著作権に関する部分を抜粋して紹介する。

<ソフトウエア開発委託基本モデル契約書>より
※文中の甲は委託者、乙は受託者

(納入物の所有権)

第43条 乙が本契約および個別契約に従い甲に納入する納入物の所有権は、当該個別契約に係る委託料が完済された時期をもって、乙から甲へ移転する。

(中略)

(納入物の著作権

第45条 納入物に関する著作権著作権法第27条および第28条の権利を含む)は、甲または第三者が従前から保有していた著作物の著作権を除き、乙に帰属するものとする。

2.甲は、納入物のうちプログラムの複製物を(中略)自己利用に必要な範囲で、複製、翻案することができるものとする。また、本件ソフトウエアに特定ソフトウエアが含まれている場合は、本契約および個別契約に従い第三者に対し利用を許諾することができる。乙は、係る利用について著作者人格権を行使しないものとする。

(乙による納入物の再利用)

第46条 乙は、(中略)乙が著作権を有する本件ソフトウエアその他の納入物を利用することができる。

2.前項による利用には、有償無償を問わず乙が本件ソフトウエアの利用を第三者に許諾し、またはパッケージ化して複製物を販売する場合を含むものとする。

 こうしたモデル契約書は、これ以外にも経済産業省のWebサイトや、社団法人 電子情報技術産業協会JEITA)でも入手できる。こうした条文を参考にして、ソフトウエアの権利帰属に関する条文を契約書に盛り込むのも良いだろう。
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/index.html#05
https://home.jeita.or.jp/is/committee/solution/guideline/090217cd-rom/index.html

契約でもこの程度.

お遊びのプログラミングコンテストで,受賞できずに一円ももらってないのに,なんでこれより厳しくなるんだ.仮に受賞して仮に賞金をもらっても,雇用関係にもないのに,そこまで根こそぎ開発者の権利を奪う必用がどこにある.

「頭の中も著作権の対象?――もう一つの「ソフトウエア パクリ」裁判解説 」

https://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1511/04/news021_3.html

 しかし、転職した技術者や転職先が「流用は一部分である」と言うためには、証明が必要だ。この裁判では、裁判所は以下の点に着目して、著作権侵害はないと判断した。

裁判所が「著作権侵害はない」と判断したポイント
東京地裁 平成27年6月25日判決より抜粋して要約
 原告プログラムはC++というプログラム言語だけで組まれているが、被告プログラムはC++C#という二つのプログラム言語で組まれている。被告プログラムは原告プログラムと比較して平均3.96倍の速度でインポートとエクスポートを処理することができると認められることという相違点があり、これらの違いは、字幕制作プログラムの全体の設計が異なる可能性があることを意味する(故に、著作権の侵害とは言えない)。

 原文は非常に回りくどい言い方をしているので、要約してしまったが、裁判所はC++C#ではプログラミングの技法や設計が異なる」ことや、「原告のソフトウエアよりも被告のソフトウエアの方が優れた点がある」ことから、両者の設計は違うと判断した。

たとえ流用せずに一から書き直したとしても,同じ人間が作った同じ言語で同じ機能のソースだった場合,著作権侵害があったとされる可能性は少なくないのでは.

コンテストで著作権譲渡さえしてなければ,こんな裁判に巻き込まれること自体がありえない場合でもだ.

著作権譲渡は厄介事を増やすだけで,開発者にとってデメリットがデカすぎるんだよね.これじゃあ「ヤマト運輸プログラミングコンテストには参加しない」がプログラマの常識になる日も近いぞ.

*1:新技術開発のコンペだとすると,内容や技術においてもバラバラだけど,たとえ一部でも巡回セールスマン問題で30万はねえわ.1社当たり30万で売れる程度の「ショボい」技術でも,他社に売りまくれば1千万くらいはいくんじゃね.しかも優勝しなかった場合は一文の特にもならないから,期待値はそれ以下.さらに応募だけで権利譲渡はもはや犯罪的.