IT業界の労働契約は優遇か不遇か
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060317/232792/
相当に的はずれな記事だ.
その反面,正社員が多いということから,職を失うリスクが少ない業界であると記者は思う。
正社員だから幸せだなんて,いったい誰が決めた?もしそうなら自分から辞める人なんていないはずだけどね.技術者が交換可能な使い捨ての道具として扱われる限り,正社員であることにはほとんど意味はない.*1
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
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極論すれば,成果主義とか裁量労働の名の下に残業手当を廃止し,辞めさせたい人をデスマーチに割り当てればOK.一度そうなれば月数百時間の残業に嫌気がさして辞めていくか,さもなくば過労死するかのいずれかだろう.たとえ万が一ゴキブリのようにしぶとく生き残ったとしても,その調子で技術力(と生命)をすり減らし続けて何年かすれば時代遅れの役立たずに成り下がり,今度は「技術力がない」を理由に給料をカットする手も使える.*2
多重派遣型の偽装請負が違法である理由は,仲介するだけの企業が労働者の労働そのものに何の付加価値も与えない,ということではないだろうか。
それを言ったら,IT業界の多重下請け構造の大半がそれに当たるのでは?
*1:「正社員とは残業手当を払わなくてすむ派遣社員だ」と思ってる管理職もいるようだ.雇用の安定もなければ定期昇給も無し.残業手当がない分だけ,本物の派遣社員より待遇が悪いかもね.
*2:念のために言っておくが,成果主義や裁量労働自体を否定しているわけではない.しかし実際には成果を正当に評価するのは本当にむずかしく,成果主義を運用できる管理職を要する企業はごくわずかだろう.本来なら成果主義を導入した時点で,成果主義を運用する能力のない年功序列の申し子は降格の対象になるはずなのだが,実際には成果主義は給料カットの道具なので管理職の成果が測られることはない.
また裁量労働にしも裁量労働とは名ばかりで,個人には何の裁量も認められていないことの方が多いのではないか.自分の上司も,一緒に仕事を引き受ける技術者も,仕事の見積もりも,仕事のやり方さえも,何一つ選択の自由はない.これで何が裁量労働か.