人事部的視点での「採用できない会社の11の特徴 」
http://d.hatena.ne.jp/fake24/20070722
関連:http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20070720/p3
最適な人材採用の方法は,現場によって変化するでしょう.ここでは技術者(特にIT技術者)を前提に話を進めます.
現場は好き勝手に言う、人事もそれに振り回される、、こんな状況が生まれる会社は結構マズイです。(いや、大半がこんな感じでしょうか)
逆でしょう.人事が現場の意見を無視して傍若無人に振る舞う.現場はそれに振り回される.*1
人事は面接しなくてもいいから現場に回せ
(人事は現場のことなんて分からないから、面接する必要ないという主張です)
少なくとも技術者に関して言えば,人事部には見る目がないので面接できません.「するな」ではなく,「できない」のです.
現場は採用できない人材を現場が欲しがる、人事は「労働マーケットなど諸々の事情で無理だよ」と言えない
「採れる人間を採る」のも結構ですが,その結果「使えない人を採る」のであれば本末転倒です.妥協したがために使えない人を採るくらいなら,採らない方がまだマシです.そしてこの「使える/使えない」の判断も人事にはできません.
人事が新人の教育環境を作ろうとしても、忙しくて無理!即戦力だ!と言われて制度改革に挫折
技術者を教育できるのは技術者だけです.それも一流の技術者だけです.*2
「教育環境」と呼ばれる物も,それを構成しているのは現場の技術者なのです.人が既に不足しているから人を採ろうとしている段階で,今更「これからのんびり人を育てる予定だから,現場から最も優秀な人材を教育に回せ」と言われても既に手遅れです.*3 *4
(個人的には人事の面接は会社の人事方針・給与関係等を考えても必要だと思います。)
人事にできるのは,せいぜいこの程度です.
- A:「でもさ、たとえば28歳の既卒者を採用した場合、お給料はどうすんの?うちの28歳基準だと600万くらいだから、350万の新卒の倍近くになっちゃうよ」
- 城:「特例で新卒基準で採用するというのは?」
- A:「それはありえない。昇給額も一時金も、組合と交渉して年齢ごとにベースを作るから25歳以上の新人がいると後々困る。それに、うちの内規では課長登用は42歳までだから、3年以上、入社と実年齢に差がある人は幹部候補としては採れないよ」
- 城:「じゃあ、最初は新卒基準で、二年目からは出来る仕事の内容に応じてお給料を設定するといいうのは?」
- A:「それって職務給じゃない(笑) まあ実はそれが理想だよね。でもそれも難しい。組合員は全員同じ人事・賃金制度の適用が大前提だから、結局は全社員に職務給適用って話に膨らんじゃう。労組はもちろん、うちの上司も猛反対だよ。彼なんて、新卒初任給でも高すぎるくらいだし」
2、経験やスキルについての質問が面接の中心
育てようという感覚がない、ポテンシャルを見ようとしないことがはっきりと表れます。
ここでいう「ポテンシャル」とは,「やる気があります」「一生懸命働きます」という奴ですか?ならそんな人は無意味でしょう.*5
「ポテンシャル」を,その人の持つ技術力から推測される近い将来発揮されるであろう実力や成果とするならば,これもまた判断できるのは技術者だけです.
- 技術分野のリクルーターは、5年のRuby on Railsの経験を求めたり、「Windows API」の仕事から履歴書に「Win32」としか書いていない人を落としたりするときにぼろを出す。
リクルーターがそんな風にしているのは、それが簡単で、コンピュータで処理でき、彼らが開発者を判断できる唯一の方法だからだ。
しかしそれは、ほとんどあらゆるソフトウェア開発の職について、およそ最悪な採用方法なのだ。- 誰かRubyでの開発ができる人を採用する必要があるというとき、SmalltalkとPythonの深い経験を持つがRubyのことは聞いたこともないという人は、Rubyの本を1冊読んだという人よりも成功する見込みがずっと高い。基本的に優れたソフトウェア開発者には、別なプログラミング言語を学ぶというのは全然たいしたことではないのだ。
- 面白半分に、地上で最悪の面接質問を挙げておこう。「Oracle 8iのvarcharとvarchar2の違いは何か?」これはひどい質問だ。この特定の雑学について知っている人と、あなたが採用したいと思う人との間には、想像しうるどのような相関もない。そんな違いを誰が気にするの? 15秒もあればオンラインで調べられるというのに! 頭がいいというのは「雑学問題の答えを知っている」ことではないというのを覚えておこう。
- しかし面接の時間のほとんどは、候補者にコードを書けることを示させるのに使うべきだ。
- すごーく簡単なプログラミング問題を含めるようになった。そうするようになったのはドットコムブームのときで、HTMLが「プログラミング」だと思っている人たちがたくさん面接に顔を出すようになったためだ。それで彼らの相手であまり多くの時間を無駄にしないようにする方法が必要になった。
- 15年に渡ってプログラマを面接してきた経験から私は確信しているのだが、最高のプログラマはみな、複数の抽象レベルを同時に易々と扱える才能を持っている。プログラミングの場合で言うと、これは特に再帰(頭の中に同時に複数のレベルのコールスタックを保持することになる)や、複雑なポインタベースのアルゴリズム(オブジェクトのアドレスがオブジェクト自体の抽象的表現のようになっている)を全然問題なく扱えるということだ。
4、面接回数がムダに多い(中途採用で4回以上ある)
これはもう論外ですね.スケジュールを調整して面接に出向くのに,4日も休みを取れと言われれば,そりゃあ二の足を踏みます.3回でも多いくらい.しかも4日ということは,レジュメの送付から内定が出るまでに優に1ヶ月以上,下手すると2〜3ヶ月はかかるということですから,この点でも大きなデメリットがあります.その会社がとてつもなく素晴らしいというのでない限り,面接4回の会社に応募することはまずないでしょう.
5、会社の展望・ビジョン、現在の状況、職場環境を説明しない
これに関連して,「"job description"を公開していない」.
「Java開発者の募集かと思ったらJavaScript+JSPを求めていました」とか「技術者の募集かと思って行ってみたら営業や管理職の募集でした」なんてことになると,お互いに時間を無駄にするだけです.
8、圧迫面接をする
私は圧迫面接には否定的です.
圧迫面接で分かるのは「圧迫面接になれているか否か」や「面接官の顔色をうかがうテクニック」であって,「プレッシャーに強い」や「仕事をやり遂げる能力」ではないし,技術スキルを計ることもできません.「特技は圧迫面接を乗り切ることです」という人間を何人集めても,現場では全く役にも立たないでしょう.
9、 経験やスキルについての質問が面接の中心
10、「面接を受けている応募者は何がしたいのか?どんな風に成長したいのか?どんな仕事がしたいのか?」を聞かない
9、10、はスキル・経験第一主義ですね。人間性の否定に近い。論外です。こんな会社に入社するのは辞めましょう。
そうだろうか?
どんなスキルを追い求めるか,どんな技術者になりたいか.そこにこそ技術者の求める夢やロマンがあるのでは?どんなことを学んできたか,どんな技術に興味を持ったかということから,その技術者の哲学や思想が垣間見える.「コンピューターは1と0しかない無味乾燥な世界だ」なんていうのは,「ソフトウエアの本質的な複雑さ」を知らない素人の偏見に過ぎません.
実際にはそんなことを聞くくらいなら,最初から"job description"くらい出してくれとは思うけどね.
*1:こういう意見が出ると言うことは,この人は人事部より,或いは人事部の人間なんだろうなあ.この人の文章からは「人事部こそが人材採用の主体である」という,日本企業にありがちな思想がプンプン臭う.
*2:ただし,一流の技術者が教育者としても一流とは限らない.むしろ両方の素質を兼ね備える人の方が珍しいのでは.
*3:そういう意味では計画的な人材採用/育成は非常に重要と言えます.しかし「好景気だから人を増やす」「バブルが崩壊して不景気になったから新規採用を抑制する」のように,無計画に採用数を増減させたがために年齢構成に歪みが出るという失敗をした企業も多いですよね.
*4:中にはほとんど手をかけずとも,新しいテクニックをぐいぐい吸収していく人もいる.そういう人なら育てるのもアリだけど,一方的にテクニックを盗まれる側としては複雑だよね.(これは盗む側の時もだ.)どうせ人事部的には「何も教えてないじゃないか.彼は自力で成長した.」というふうに思うんだろうな.