リアルな島耕作像

SFならまだしも,そこの設定にリアリティーを求めてもしょうがないのでは.

昔から少年漫画誌とかにある、さえない男の子に何故かたくさんの美女がちょっかい出してくるお話って嫌いだったのですが、島耕作はそんな少年漫画が文字通り児戯に思える。調子がいいなんてもんじゃない。(中略)
さして頭がよいとも思えないのに(はっきり言うと周りがレベル低すぎ。大企業らしいのに)とんとん拍子で出世。
http://d.hatena.ne.jp/watapoco/20070727/p1

まあ設定からして面白いマンガだとは思えないけれど,だからと言って,リアルなサラリーマン人生を描かれるというのも酷なのでは.ゲームやマンガや小説には,なんらかの点でリアルでない部分を楽しむもんだと思います.*1

「40歳の一般従業員が、今後課長職以上に昇格する可能性はあるか」という問いに対し、「無い」と回答した企業が、なんと約6割に上るのだ。ちなみに、回答各社の40歳時点課長率は26%ほど。もちろん、今後上がる人もいるだろうが、恐らく6割程度の人間は、生涯を平社員として過ごすことになるだろう。

要するに、「若い頃に働いた報酬を将来の出世で受け取る年功序列制度」というものはもはや完全に崩壊しているということを、当の人事部が認めたわけだ。
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17090/2615585#2615585

これを踏まえると,日本企業で単なるお調子者がとんとん拍子に出世するなどあり得ない.とくに年功序列の元で,若い人が出世することは絶対にありえない.

リアルな「島耕作」を想像すると,こんな感じになるのでは.

島耕作,50歳.某中堅企業の平社員.妻と2人の子供がいるが,妻のパート収入を入れても生活は楽とは言えない.マイホームの夢などもう十年以上前に捨てた.
運良く大学に入れた上の子供への仕送りも大変だが,今年は下の子供も大学受験を控えている.国立なら行かせてやるとは言ってはみたものの,あの子の学力だとおそらく現役合格は無理だろう.予備校への授業料だけでも今から頭が痛い.
40歳時点で課長になっていれば,もう少し給料も上がって生活も楽になったかもしれないと思ってはみたものの,40歳社員のうち課長以上に昇進できるのは僅か3人に1人という現実を前にしてはこれが限界だろう…….

こういうリアリティーを追求した「平社員 島耕作」を読んで,いったい何が面白いと思います?夢も希望もありゃしない.*2


もっとも,技術者の夢はそんなところには最初からないけどね.

もちろん、本来はマネージャーなんて誰もが目指す必要なんてないわけで、特にやり手の営業マンやエンジニアの中には「生涯プレイヤー志望」の人も少なくはない。でも、年功序列制度の致命的な欠点として、「マネージャー以外のキャリアパスが無い」という点がある。つまり、昇格していかないことには、お給料が上がらないのだ。

これはとても不幸なことだ。

そういうこともあって,今も昔も「島耕作」に共感できる技術者は皆無だろう.

*1:しかし,課長=>部長=>取締役...と出世するのが夢という辺りは,いかにも団塊世代の人事部が好みそうな思想だ.

*2:実はそういう意味では「サザエさん」もリアリティーに欠ける作品だな.おそらくは首都圏に三世代 計8人(でいいのかな)が住む庭付き一戸建てを所有しておいて「庶民」はないだろう.そういう意味では「ドラえもん」もかな.親子三人で庭付き一戸建てを持っていて,しかもオヤジは冴えないサラリーマンだそうだから.