「好況なのに給料が上がらないのは誰のせいか」
日経の森永氏のコラムに対して,「内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)」の城氏が意見を述べている.
「節約した人件費の向かった先」
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/98
http://www.nikkeibp.co.jp/news/flash/544694.html
先に森永氏のコラムから.
景気が回復しているのに、働く人の分け前が減っている――このような矛盾した現象を見て、わたしのような人間は「これはひどい話ではないか」と指摘する。
さて,ここで「私のような人間」と言っているが,それは一体「どのような人間」のことだろうか.
庶民の味方? 経済評論家? コンサルタント? 老害? それとも,マスコミ関係者?
このセリフは実に『怪しい』セリフなのだ.*1
面白いのは定性的に「それぞれ何倍になったか」という倍率は示しているのに,それが具体的に何億円であり,出た利益の何%を占めるのか定量的には全く示していない点だ.「経営者は法外な報酬を不正に得ている」という色眼鏡越しに見れば,「増えた利益は全て経営者の懐に入った」ようにも見えよう.だが,果たしてそうだろうか?
経営者は平社員に比べて高い報酬は得ているかもしれないが,そうは言っても人数も圧倒的に少ない.よって経営報酬が企業全体のコストに占める割合は,それほど高くないと推察される.また米国の経営陣に対する役員報酬は日本のそれより遙かに高いという.森永氏の指摘はそれとは矛盾するのではないか?その辺りの数値を具体的に示していないのは,森永氏が故意に事実を隠蔽しているとしか思えない.
もし、政府が本気で格差を是正しようと思うなら、法人税率を引き上げて労働者を減税するか、非正社員の最低賃金を上げるしかない。
これはおそらく全く無意味.税金が減ってもその分どこか別の場所にしわ寄せがいくだけだから.
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17090/2615600#2615600
次に城氏の指摘.
森永氏の論の致命的な欠点は、世代間の格差を(意図的かどうかは知らないが)まったく考慮していないという点にある。(雇用に関する)規制緩和や構造改革に反対するということは、既得権の見直しに反対するということだ。それでいて、労働分配率の議論をする時だけはまるで全世代同じ給与を貰っているかのごとく全世代合計の数字を駆使して「ほら、こんなに低いんですよ、労働者は資本家と小泉さんにこれだけ搾取されてるんですよ」と主張するのは、ものすごく汚い手だと思う。
それは結果的に、問題の本質を「世代間格差」から「資本家とかアメリカの陰謀」という風にすり替えてしまうことになる。
まったくその通りですね.
http://blog.route54.info/?eid=357891
追記
- 過去、バブルのときに大幅に上がった給料が、下げられないまま据え置かれ、その負担を入社したばかりの若手も一緒になって負担しているのが大半の日本企業でしょう。
- この手の「老人による格差論」を読むと、「若者同士の格差を強調して、自分たちが特権を得ていることから目をそらさせる」ために書いているとしか思えなくなってきました。